【8233】髙島屋/コスト削減が想定超で進捗、東神開発中心の非百貨店成長を志向。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8233】髙島屋(東証1部)  NT


現在値 1,316円  P/E 21.9  P/B 0.56 2月配当優待 8月配当優待

東京、大阪など全国展開する老舗百貨店。シンガポールSC店と東神開発寄与大。
配当金は2月末・8月末の年2回で合計24円で、配当利回りは1.83%となります。

髙島屋は株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末・8月末の株主に対して、10%割引優待カードを進呈しております。このカードの持参により、有料催事が3人まで無料となるため、仮に入場料1,000円の催事に、2人で年1回行った場合を想定した場合における配当優待利回りは、およそ約3.34%となります。

業績を確認していきます。

■2018年2月期 売上高 9,495億円、営業利益 353億円 EPS 135円

■2019年2月期 売上高 9,128億円、営業利益 266億円 EPS 94円

■2020年2月期 売上高 9,190億円、営業利益 255億円 EPS 93円

■2021年2月期 売上高 6,809億円、営業利益▲134億円 EPS▲203円 

■2022年2月期 売上高 8,120億円、営業利益 130億円 EPS 60円 ce

□2021年8月2Q 売上高 3,785億円、営業利益 20億円 EPS 21円 

2021年2月期の売上高は前期比25.9%減の6,808億円、営業利益は同赤転の▲134億円となり、中間時点公表した通期見通し比で上振れしました。新型肺炎の本格化により期初から時短営業や全館休業を強いられ、期央に一度持ち直したものの、年末年始商戦での新型肺炎の“第3波、第4波”到来により大きく売上が減少しました。店舗別では旗艦の大阪店や新宿店、京都店がインバウンド減少等で落ち込みが大きかった一方、立川店や玉川店といった郊外店は健闘しました。海外についても、旗艦のシンガポール(SG)をはじめ上海でも時短や休業を強いられたため全エリアで減収減益となったほか、SC運営の東神開発についても、入居テナントからの減賃要請に応じたため後退しました。


進行期である2022年2月期の予算については、売上高が前期比19.3%増の8,120億円、営業利益は同黒転の130億円とV字回復を見込んでいます。主力の国内百貨店事業については、上期については減少基調の継続、下期は横ばい水準にまで戻る保守的な前提となっているほか、足許では緊急事態宣言等に起因した「生活必需品以外の販売自粛要請」に抗うような格好で、ほぼ全館営業を実施しているため、現時点では概ね計画線での推移が期待されます。海外については、ワクチン普及に伴う旗艦のSG店の営業規制解除もあり、全エリアで回復する公算です。また利益面については、実績期で実施したコスト削減策が通期で寄与する見通しであり、▲80億円程の原価減で全社利益を大きく引き上げる見通しです。


これまで当社は5年間に及ぶ中長期計画を公表しており、最終年度となる2024年2月期に売上高9,900億(CAGR1.6%)、営業利益430億円(CAGR10%)を見込んでいましたが、新型肺炎禍で一旦取り下げしています。昨年の取り下げ時点では、2023年2月期迄を緊急期間として位置付けし直し、先ずは合計▲120億円のコスト削減(人件費▲60億円、庶務費▲20億円、減価償却費▲40億円)を目標としていましたが、この1年で実際に▲100億円程の削減に成功し、かなり筋肉質な収益体質となりました。

 

かような状況から、今般短期間の新3年中計としてロールしており、最終年度の2024年2月期に売上高8,500億円、営業利益300億円の目標をセットし直し、新型肺炎前の2019年2月期の利益を上回る水準を目指すこととしています。コスト削減による余資を元手に1,400億円もの投資を実行し、一部を百貨店の改装等に回すものの、殆どを東神開発を中心とした国内外の商業開発に900億を注ぎ込む方針です。国内百貨店はインバウンドが最大で3割程しか戻らない前提ですが、コスト削減による浮上を見込むほか、東神開発は今年開業予定の日本橋三丁目スクエア(オフィス)や流山FLAPSといった非百貨店事業での積み上げが寄与する見込みです。

 

他方、海外事業については、ベトナムの「ホーチミン髙島屋」が目下大変好調に推移していることから百貨店自体の成長も見込まれるほか、ハノイ北西6㎞に位置する複合型都市開発PJ「スターレイク」ではA地区・B地区の土地所有権を取得により不動産賃貸業を営むとともに、学校運営事業にも出資(25%)し、2021~2022年にかけてこれら事業を順次事業を開始していく予定となっています。特に当社海外事業は日系百貨店の成功例として名高いSG以外はお世辞にも成功とは言えませんでしたが、ベトナムに関しては“第2のSG”となることが期待されます。百貨店業は新型肺炎禍の影響を大変受けやすい業種のため、ロールした本中計のビジビリティは低いものの、組み立てとしては理解可能な範囲にあると考えています。

 

財務状況については、2018年12月に600億円のユーロCBを刷っているものの、行使価格が@2,180円であるため、これが基本的には全部負債で認識されるものの、足許の自己資本比率はIFRS16号採用による悪化分を反映してなお34.4%水準を確保しています。配当予想については期初から据え置きとなる年24円が公表されており、この中計3年間についてはフロアとして据え置かれる見通しです。


*参考記事①  2020-12-30 846円 NT

【8233】髙島屋/3Qまで想定超も上方見送り、冬ボーナス満額近く財務も余裕残しか。

 

*参考記事② 2020-06-16 971円 NT

【8233】髙島屋/当面はリストラで凌ぎ、再浮上はインバウンド次第か。

 

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