【9861】吉野家ホールディングス/受取助成金想定超で、中間だけでなく期末復配も射程圏。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9861】吉野家ホールディングス(東証1部)  NT


現在値  2,256円/100株  P/E 20.3  P/B 3.20  2月優待 8月優待

牛丼屋の老舗、国内2位。収益源の『吉野家』を直営軸に全国展開。
配当基準日は2月、8月の年2回ですが配当予想は未定(※中間5円配実施)となっています。

吉野家ホールディングスは株主優待として、2月末・8月末に100株以上を保有する株主に対して2,000円分の食事券を進呈しておりますので、無配前提で優待利回りを算出した場合、約1.77%となります。

業績を確認していきます。  

■2019年2月期 売上高 2,023億円、経常利益 3.4億円、EPS▲92.9円   

■2020年2月期 売上高 2,162億円、経常利益 33.6億円、EPS 12.4円 

■2021年2月期 売上高 1,703億円、経常利益▲19.6億円、EPS▲116.0円

■2022年2月期 売上高 1,527億円、経常利益 150.0億円、EPS 111.3円ce修正(1/12)  
□2021年8月2Q 売上高 742億円、経常利益 7.2億円、EPS 48.3円  

□2021年11月3Q 売上高 1,134億円、経常利益 110.9億円、EPS 95.1円(1/12) 

2021年8月中間期の売上高は前年同期比9.4%減の742億円、経常利益は同100億円の損益改善となる49.1億円で進捗し、黒字化の一方で対予算は未達となりました。主力の吉野家は、「ポケ盛」や「牛丼3杯千円」等の企画を投入し、時短営業の復元で前年ハードルは低かったものの、緊急事態宣言の再発令等の影響を色濃く受け、予算前提SSS102.3%(94.6%/括弧内は前々年比;以下同様)に対し、96.8%(88.9%)に留まりました。また、都心店・ビルイン店の多いはなまるのSSSは115.9%(66.1%)となり、実質7割程の戻りとなりました。利益面については、米価や牛肉価格、人件費増により原価率が悪化しているものの、助成金が膨らむ経常利益段階で大きく回復しています。

 

2022年2月期の通期見通しについては、足許3Q時点で再修正しており、売上高は10.4%減の1,527億円(期初予:1,551億円)、経常利益は同黒転の150.0億円(期予:52.0億円)を予想しています。トップラインの大幅減収は主として京樽の売却のよるものですが、上期の凹み分を反映させています。既に10ヵ月累計分まで開示されている吉野家SSSは99.9%と、3Qにかけて徐々に尻上がりに回復しており、対修正予算の前提である100%に肉薄しています。また、3Qで時短協力金等50億円の計上があったため、経常利益は更にもう一段膨らむ見通しです。

 

当社は2025年2月期を終期とする10年長計を走らせており、およそ3年スパンで「準備期」「拡大期」「収穫期」の3フェーズに期分けしています。第1フェーズである「準備期」の3年間は、2019年2月期に売上高2,100億(CAGR4%)、営業利益60億円(CAGR55%)の達成を目標としていましたが、売上高は達成したものの、人件費増が重く利益は均衡圏まで沈みました。進行期は本来であれば第2フェーズの「拡大期」に移行する予定であったものの、新型肺炎禍からの基盤整備を理由に中計公表を再度見送っており、今期も“足場固め”の一年として位置付けられています。

 

当社はこの新型肺炎禍で年間▲80億円分の全社的なコスト削減を済ませており、利益を創出しやすい“筋肉質”な状態にはなった点は評価出来るかと思われます。今後は吉野家では従来型のU字カウンター店舗を、はなまる同様のセルフ式に変更してファミリー層の獲得を狙うほか、タブレットによる省人化や持ち帰り専用コーナーの新設にくわえ、ウエルシア薬局での牛丼外販や冷凍牛丼や非常用牛丼缶の通信販売など、販売チャネルの拡大を進めています。

 

得意のMAについては、せたが屋(ラーメン)の買収に続き、持分法のウィズリンクHD(ラーメン、国内外86店)の持分を創業家より買い増して完全子会社にする一方、2022年にはフォルクスを展開するアークミールを安楽亭に売却し、昨年は京樽をスシローに売却するなど選択と集中を進めており、牛丼と麺類(うどん、ラーメン)といった商材の事業にフォーカスしています。また出店については、国内よりも好調なアメリカ・中国・フィリピンといった海外を中心に増店していく青写真です。

 

他方、財務の状況については、新型肺炎禍の運転資金用で長・短200億円程を追加で借入しているものの、当社は元より好財務体質であるほか、上述の受取助成金が大きく膨らんだため、自己資本比率は40%台まで飛躍的に改善しています。そのため、通期ゼロ円を予定していた配当についても中間で5円の復配に踏み切っており、依然未定としている期末配当も復配公算が高そうです。

 

*参考記事① 2021-06-25  2,101円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/スシローへの京樽売却で減収も、コスト削減効果は想定超か。

 

*参考記事② 2020-06-15 2,331円 NT

【9861】吉野家ホールディングス/当面は本業テコ入れの動きが中心、期末配当未定ながら有配か。

 

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