【4979】OATアグリオ/好採算のグリーン防除剤伸長で中計は1年前倒し、海外本格化の兆しも。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4979】OATアグリオ(東証一部)  OP

現在値 1,166円/100株 P/E 9.2  P/B 1.48  12月配当 株主優待あり

農薬と肥料の開発・製造企業。大塚化学からMBOで独立。植物成長調整剤にも注力。
配当は年間30円のため、配当利回りは約2.57%となります。

OATアグリオは株主優待制度を導入しており、12月末に単元株を保有する株主に対して、1,500円分の自社製品(肥料、生花等)を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.85%となります。また、1年以上の長期保有株主に対しては1,000円分のクオカードを別途進呈しておりますので、この場合における配当優待利回りは約4.71%となります。

業績を確認していきます。

■2018年12月期 売上高 152億円、営業利益 17.5億円、EPS 232.2円 

■2019年12月期 売上高 219億円、営業利益 10.7億円、EPS 0.9円  

■2020年12月期 売上高 202億円、営業利益 15.1億円、EPS 154.8円   

■2021年12月期 売上高 226億円、営業利益 19.8億円、EPS 268.3円  

■2022年12月期 売上高 232億円、営業利益 21.5億円、EPS 122.9円 ce  

□2022年6月2Q 売上高 132億円、営業利益 19.3億円、EPS 115.7円 四e   

2021年12月期の売上高はYoY+11.7%の226億円、営業利益はYoY+31.0%の19.8億円と2桁の増収増益となり、対予算でも上振れました。国内農薬は、競合の激しい殺虫剤や水稲除草剤の一部で苦戦したものの、施設園芸飼料や殺菌剤、競合が少なく好採算のグリーン防除剤が好調に推移しました。一方で海外農薬は、殺菌剤が在庫調整で減少したものの、殺ダニ剤・殺虫剤の拡販が進みました。肥料・バイオスティミュラント(植物ストレス軽減による成長促進剤または技術、BS)事業も、ハウス肥料等が堅調に推移したほか、傘下の蘭クリザール社の花卉資材やBS剤が好調に推移し、同セグは2割を超える大幅増収となりました。


進行期である2022年12月期の見通しについては、売上高がYoY+2.7%の232億円、営業利益はYoY+8.7%の21.5億円を予想しています。国内農薬は従来型殺虫剤・殺菌剤の競合環境が依然厳しいため、グリーン防除剤の拡販で対応するものの、海外農薬については好調続く米国や新規登録国において殺ダニ剤・殺虫剤の伸長が見込まれます。肥料・BSについては、AIを用いたスマート農業である養液土耕栽培システム「アグリオいちごマスター」の着実増のほか、成長調整剤では主力のインド向けの復調が見込まれます。

 

当社は今次決算で3年中計をローリングして開示しており、最終年度である2024年12月期に売上高254億円(CAGR8.5%)、営業利益28.9億円(CAGR18.7%)を目指すこととしましたが、従来中計では1ヵ年前に売上高234億円、営業利益24.5億円を目標としていたことから、今次ロールで中長期の成長見通しを上方修正(事実上の1年前倒し)したこととなります。年限のない長期目標として売上高300億円、営業利益30億円をターゲットとしていますが、数値感的には中計翌年度の2025年12月期での達成が視野に入ります。

 

これまでの当社はMAによる外部成長で、2018年に花・植物の鮮度保持剤で世界トップシェアを握るクリザール社(売上高64億円・営業利益5億円)を78億円で買収したほか、スペインで防除資材・肥料・BS剤の開発をするLIDA社(売上高9億円)、CAPA社(売上高2億円)をそれぞれ買収してきているため、海外の開発・販売拠点については既に駒が揃っている状況です。

 

そのため、今次ロール後の中計3年間についてはグリーン防除剤やBS剤の新製品投入とグローバル向け製品展開といったプロダクト面の強化が中心となります。上述のいちご栽培のスマート農業だけでなく、ドローン対応の畑作・果樹向け肥料や、亜リン酸配合BB肥料、BSにおけるLIDA新製品の投入などを予定しています。このほか、きゅうり・ピーマン・トマトといった施設園芸分野(TAM72.5億円)の深耕によりシェア4割確保を目指すこととしており、各種防除・施肥商材をワンパッケージ化して取込を図る目論見です。

 

財務状況については、相次ぐ海外買収で一時的に悪化していましたが、足許の自己資本比率は29.3%水準まで回復していきています。株主還元については、配当性向20~30%基準とした安定配当を還元ポリシーとしており、7円50銭増配の年30円配当を予想していますが、計算される配当性向は20.3%とレンジ下限に過ぎず還元に不足感があります。ただそれでも昨年末には3億円(4.6%)規模の自社株買いを実施しているため、進行期の総還元性向に限れば42.8%に膨らむ見通しとなります。

 

*参考記事① 2021-04-21  736円*分割遡及修正済 OP

【4979】OATアグリオ/相次ぐ買収で体制再構築の必要、新中計3年間は雌伏期に。 

 

*参考記事② 2020-04-22  570円*分割遡及修正済 OP

【4979】OATアグリオ/農薬・肥料は中長期的にテーマ性高いが、財務体質はやや気掛かり。

 

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