【4979】OATアグリオ(東証一部) OP
現在値 1,472円/100株 P/E 8.7 P/B 1.16 12月配当 株主優待あり
農薬と肥料の開発・製造企業。大塚化学からMBOで独立。植物成長調整剤にも注力。
配当は年間40円のため、配当利回りは約2.72%となります。
OATアグリオは株主優待制度を導入しており、12月末に単元株を保有する株主に対して、1,500円分の自社製品(肥料、生花等)を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.73%となります。また、1年以上の長期保有株主に対しては1,000円分のクオカードを別途進呈しておりますので、この場合における配当優待利回りは約4.45%となります。
業績を確認していきます。
■2017年12月期 売上高 141億円、営業利益 18.8億円、EPS 260.1円
■2018年12月期 売上高 152億円、営業利益 17.5億円、EPS 232.2円
■2019年12月期 売上高 219億円、営業利益 10.7億円、EPS 0.9円
■2020年12月期 売上高 202億円、営業利益 15.1億円、EPS 154.8円
■2021年12月期 売上高 212億円、営業利益 15.9億円、EPS 167.9円 ce
□2021年6月2Q 売上高 122億円、営業利益 14.8億円、EPS 157.1円 四e
2020年12月期の売上高は前期比7.4%減となる208億円、営業利益は同40.5%増の15.1億円となり、減収となったものの、利益は前期比・期初予想比ともに増益を確保しました。国内農薬については、競合激しい殺虫剤や水稲除草剤等の一部で苦戦したものの、オンコル関連材や殺菌剤、競合が少なく好採算のグリーン農薬の拡販に成功しました。一方、海外農薬については、殺菌剤・殺虫剤の出荷が低調に推移したほか、肥料・バイオスティミュラント(植物ストレス軽減による成長促進剤または技術、BSと略す)事業も蘭クリザール社が新型肺炎禍の影響を受けて後退しました。なお、前期のクリザール社の棚卸資産洗替に伴う一過性の原価算入▲5億円が剥落することにより、見えがかり上の全社利益が大きく改善しています。
進行期である2021年12月期通期の予算については、売上高が4.9%増の212億円、営業利益は5.4%増の15.9億円を予想しています。国内農薬については、引き続き厳しい競合環境が続くものの、天然由来・JAS適合の回数制限のないグリーン農薬の伸長が見込まれるほか、海外農薬についても殺菌剤・殺ダニ剤の登録国拡大により拡販が期待されます。飼料・BS事業については、ここ数年で買収してきた海外子会社との連携強化や、新製品上市を目指しますが、全社ベースでの研究開発費は実績ベースで単年▲17.3億円にまで上っており、トップラインの1割弱が削られているため、高水準の研究開発費が利益の伸びを押し下げる格好となります。
当社は今次決算で3年中計をローリングして開示しており、最終年度である2023年12月期に売上高234億円(CAGR5%)、営業利益24.5億円(CAGR17%)を目指すこととしましたが、従来中計では1年前の2022年12月期に売上高300億円、営業利益30億円を目標としていたことから、中長期の成長見通しをかなり幅で下方修正したこととなります。実際に会社側も本中計を今後の持続的成長のための“蓄積の3年間”と位置付けており、当面は体制整備のための雌伏期となるとみられます。
これまでの当社はMAによる外部成長を得意としており、2018年に約78億円を投じて、花・植物の鮮度保持剤で世界トップシェアを握るクリザール社(売上高64億円・営業利益5億円)を買収したほか、スペインで防除資材・肥料・BS剤の開発をするLIDA社(売上高9億円)、CAPA社(売上高2億円)をそれぞれ買収しています。これら買収により面的拡大はある程度済んでいるので、今後は競争力が高く好採算のグリーン農薬の研究・新製品開発を鳴門及びインドの2拠点進めるほか、BS製品についても同様に国内子会社の旭化学社と西LIDA社の2社で進め、本格的な海外深耕を図る方針です。
その他、ビニールハウス栽培向けの施設園芸パッケージ商品(飼料、農薬、BS、養液土耕栽培システム)や、AIによる自動潅水・施肥といったスマート農業、自動生育監視など先進的なアグリテクノロジー領域の試験導入を進めます。かような施策から、やはり準備期間としての位置付けの強い3年間となるものの、新中計に掲げる業績目標自体は従来のように野心的な数字ではないため、ある程度達成可能なものと判断しています。
なお財務状況については、相次ぐ海外買収により23.9%水準にまで落ち込んでしまっており、以前の様な好財務とは程遠く、当面は小規模案件を除き新規買収が難しくなりました。2014年のIPO時の公開価格である@2,100円(分割調整後)を回復出来ておらず、現状の株価水準ではPOはしにくいため、力のあるプレイヤーによる第三者割当でも出来ない限りは、当面は独力によるオーガニックな成長を志向せざるを得ないとみられます。
*参考記事① 2020-04-22 1,140円 OP
【4979】OATアグリオ/農薬・肥料は中長期的にテーマ性高いが、財務体質はやや気掛かり。
*参考記事② 2019-04-26 1,701円 OP
欧州大型買収に続き、ベルグアースにも資本参加・OATアグリオ(4979)。
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