【4979】OATアグリオ/農薬・肥料は中長期的にテーマ性高いが、財務体質はやや気掛かり。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4979】OATアグリオ(東証一部)  OP

現在値 1,140円/100株 PER10.0 PBR1.01 12月配当 株主優待あり

農薬と肥料の開発・製造企業。大塚化学からMBOで独立。植物成長調整剤にも注力。
配当は年間40円のため、配当利回りは約3.51%となります。

OATアグリオは株主優待制度を導入しており、12月末に単元株を保有する株主に対して、
1,500円分の自社製品(肥料)を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.82%となります。また、1年以上の長期保有株主に対しては1,000円分のクオカードを別途進呈しておりますので、この場合における配当優待利回りは約5.70%となります。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 129億円、営業利益 16.0億円、EPS 183.2円 
■2017年12月期 売上高 141億円、営業利益 18.8億円、EPS 260.1円

■2018年12月期 売上高 152億円、営業利益 17.5億円、EPS 232.2円 

■2019年12月期 売上高 219億円、営業利益 10.5億円、EPS 6.1円(2/14)  

■2020年12月期 売上高 217億円、営業利益 14.0億円、EPS 113.3円 ce  

□2020年6月2Q 売上高 127億円、営業利益 24.0億円、EPS 258.7円 四e   

2019年12月期の売上高は前期比43.5%増となる219億円、営業利益は同39.4%減の10.5億円
となり、売上高は4割を超える増収となったものの、利益は前期比・期初予想比ともに4割強の大幅減益となりました。国内農薬・肥料については、殺虫剤登録制度の変更による販売機会減少や、新製品への切替遅れが響きました。海外農薬についてもインドでの登録遅れが響いたほか、干ばつ影響でバイオスティミュラント(植物ストレス軽減による成長促進剤または技術、BSと略す)が計画を下回りました。また、2018年末に買収したクリザール社の取得原価確定と、それに伴う同社棚卸資産洗替による評価額増約5億円の一括原価算入(のれん及び償却は微減)により、全社の利益水準は大きく切り下がりました。


進行期である2020年12月期通期の予算については、売上高が0.6%減の217億円、営業利益は32.9%増の14.0億円を予想しています。国内外の農薬・肥料においては、昨年末に肥料の生産販売子会社を解散したことによる売上剥落があるものの、概ね横ばいを見込んでいます。全社減収の一方で利益が大幅増となるのは、実績期で一括計上したクリザール社の棚卸資産原価算入が解消することが大きく、主にこの一過性要因で5億円程度の営業利益がカサ上げされることとなります。ただその一方、農薬開発費用と登録費用といった研究開発関連費用を7億円弱も積み増していることから、会社側想定は保守的にバッファを積んでいる可能性もありそうです。

 

当社はかねてより中期展望を公表しており、2022年12月期を目処に売上高300億円(CAGR18%)、営業利益30億円(CAGR15%)を目指していましたが、足許で業績がモタついていることもあり、直近公表資料では“近い将来”の目標とややトーンダウンさせていることから、この3年足らずの時間軸での表記目標達成は難しくなったものと考えられます。

 

当社はMAによる外部成長を得意としており、2018年には約78億円もの巨費を投じて、花・植物の鮮度保持剤で世界トップシェアを握るクリザール社(売上高64億円・営業利益5億円)を買収したほか、スペインで防除資材・肥料・BS剤の開発をするLIDA社(売上高9億円)、CAPA社(売上高2億円)をそれぞれ買収しています。こうした矢継ぎ早のMAにより、欧州エリアで一気に“面的な”業容拡大を志向しており、保全剤・施肥系剤の欧州既存販路を足掛かりに上流資材の農薬の拡販を目指していくものと考えられます。

 

国内分野についても、種苗分野に強みを持つ宇和島のベルグアース(1383)に対し、2018年末に3.9%分の資本参加をして業務提携しています。当社はもともと徳島の大塚製薬が源流であり、同社子会社の大塚化学アグリテクノ事業のカーブアウトMBOにより発足していることから、業容的にも地理的にもシナジー効果発現が期待されます。また、本年2月には持分4.1%を保有する当社大株主でもある在阪の化学薬品専門商社・丸善薬品産業と販売分野で業務提携を実施しており、同社の全国販路活用や出向者受け入れを実施していく方針となっています。

 

ネックは財務状況であり、これら買収の連発により従来は50%弱あった自己資本比率は足許20%フラット水準まで急落しており、ファイナンスリスクが急速に高まっています。2014年のIPO時の後悔価格が@2,100円(分割調整後)だったため、現在の株価水準ではPOはしにくいと思われるものの、第三者割当等を活用した資本増強についてはいつでもあり得るものと考えています。

 

*参考記事① 2019-04-26  1,701円 OP

欧州大型買収に続き、ベルグアースにも資本参加・OATアグリオ(4979)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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