【2501】サッポロホールディングス/外食向け比率高く今期は大苦戦、無制限のリストラも。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2501】サッポロホールディングス(東証1部)  OP

現在値 1,957円/100株 PER30.4 PBR0.88 12月配当 株主優待あり

ビール類国内シェア4位。海外は北米が柱、不動産事業が強い。外食・飲料も展開。
配当金は12月一括の年42円の配当のため、配当利回りは2.15%となります。

サッポロホールディングスは株主優待制度を導入しており、12月末現在の単元保有の株主に対して、1,000円相当のビールまたは食品・飲料詰め合わせを進呈しておりますので、配当金と合計した配当優待利回りは約2.65%となります。なお、3年以上長期保有した場合は優待品が倍額となりますので、その場合の同利回りは約3.16%となります。

業績を確認していきます。2018→2019年度は非継続事業を減じて遡及修正しています(*)。

■2017年12月期 売上高 5,365億円、営業利益 128億円 EPS 92.3円 IFRS切替 

■2018年12月期 売上高 4,939億円、営業利益 115億円 EPS 109.4円*

■2019年12月期 売上高 4,981億円、営業利益 122億円 EPS 55.9円*(2/13) 

■2020年12月期 売上高 5,044億円、営業利益 85億円 EPS 64.1円

★2020年12月期 売上高 4,832億円、営業利益 82億円 EPS 53.9円 CONS.(3/23) 
□2020年6月中間 売上高 2,450億円、営業利益 10億円 EPS 0.0円 四e


2020年12月期の売上高は非継続事業を遡及修正した値との比較で、前期比0.4%減の4,918億円、営業利益は同5.3%増の122億円に留まり、期初予想およびコンセンサス水準を下回って着地しました。国内酒類事業については、麦とホップを中心とする発泡酒類が40代顧客の客離れで前期比91%の水準に沈んだものの、ビールについては同100%水準を確保しました。高単価であるエビス割合増によるミックス良化は一服しつつあるものの、リブランドした黒ラベルとサッポロクラシックが寄与しました。このほか、RTDの99.99も順調に伸びたため、国内酒類は概ね堅調に推移したものの、海外事業についてはクラフトビール鈍化で北米が落ち込んだほか、食品・飲料事業において冷夏の影響と缶コーヒー需要逓減により同セグメント利益は19億円の黒字から12億円の赤字へと大きく後退し、全社業績の足を大きく引っ張りました。


進行期である2020年12月期の予算については、売上高が2.5%増の5,044億円、営業利益は30.4%減の85.0億円を見込んでいます。国内酒類については、シェア喪失の続く麦とホップに代わるべく、2月から新製品のGOLD STARを投入し、2枚看板で新ジャンル酒類の梃入れを図ります。ビールに関してはエビスビールに代表される高単価品好調でミックスが良化していることもあり、ここに注力していく計画ですが、足許の新型肺炎影響で消費者の節約志向が顕在化し、エビスはもとより黒ラベルの後退と、(皮肉にも)新商品のGOLD STARへの下方シフトが予想されます。飲料・食品事業についても、自販機・缶コーヒーの不調から、スープやレモン製品等の食品へのシフトで反転増を見込んでいますが、依然総花的なラインナップとなっており、不透明な状況が続きます。また、ビール同業他社に比べ、サッポロは自社の外食部門(サッポロライオン)や、外食向けの比率が高いこともあり、こちらは新型肺炎の影響を色濃く受けることから、未だ1Q決算の開示もなされていないものの、会社側計画は早くも達成不可能圏にあるものとみております。

 

今期は当初、4年中計の最終年度という位置付けであり、業績の目標値として売上高6,400億円(CAGR4%)、営業利益340億円(CAGR14%)を掲げて、「酒類」「食品」「飲料」の3つ軸でのブランド育成と海外進出で成長していく目論見でした。しかしながら、中計序盤で麦とホップやポッカ缶コーヒーといった当社の屋台骨を支える主力商品において、想定を大きく超える水準でシェアを落としてしまったこともあり、途中断念となりました。なお、今期の予想営業利益が85億円(これも既に過大感あり)であることを鑑みると、未達どころか惨憺たる結果となりました。

 

そして今年の2月にロールし直した新5年中計では、最終年度である2024年12月期に事業利益ベースで実績期の約2倍となる300億円を計画しています。計画骨子としては、①ビール事業への集中、②海外事業の事業会社移管による一貫したブランド戦略、③食品事業における植物性素材活用などとなります。ただ実際としては、安定利益源の不動産事業を原資に、ビール事業の集中化と、食品事業の効率化及び多角化がメインになるものとみられ、特に自販機の落ち込みが著しい食品事業は抜本的な事業見直しがなされる公算です。また同時に主要事業会社であるサッポロビール籍の45歳以上の社員に対し、人数上限なしでリストラを実施することを開示していることから、この新中計については“リストラ計画”の色合いが濃いものと考えられます。

 

一方、当社における主要な投資論点のひとつである不動産事業については健在であり、不動産含み益1,700億円を税金考慮で7掛で評価した現状の修正P/NAV(実質PBR)は、0.5倍程と計算されるため、依然として当社株価バリュエーションの下支えとして機能しています。また、株主還元に関しては、これまで配当性向30%水準をメドとしていたものの、新中計より安定配当方針に切り替えており、今期も42円配当の継続を予定しています。会社側は財務指標としてD/Eレシオを重視しており、現状1.2倍と本来の目標感よりやや高めであるものの、現時点では不動産売却益等を駆使して42円配当を維持していく考えと思われます。

 

*参考記事① 2019-10-26 2,760円 OP

黒ラベル好調も、豊富な不動産含み益の顕在化に期待・サッポロHD(2501)。

 

*参考記事② 2019-04-22 2,254円 OP

本業軒並み苦戦も、不動産含み益莫大で安泰・サッポロホールディングス(2501)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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