黒ラベル好調も、豊富な不動産含み益の顕在化に期待・サッポロHD(2501)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2501】サッポロホールディングス(東証1部)  OP

現在値 2,760円/100株 PER24.7 PBR1.32 12月配当 株主優待あり

ビール類国内シェア4位。海外は北米が柱、不動産事業が強い。外食・飲料も展開。
配当金は12月一括の年42円の配当のため、配当利回りは1.52%となります。

サッポロホールディングスは株主優待制度を導入しており、12月末現在の単元保有の

株主に対して、1,000円相当のビールまたは食品・飲料詰め合わせを進呈しております

ので、配当金と合計した配当優待利回りは約1.88%となります。なお、3年以上長期保有

した場合は優待品が倍額となりますので、その場合の同利回りは約2.24%となります。

業績を確認していきます。なお2017年からIFRSに切り替わっています。
■2016年12月期 売上高 5,418億円、営業利益 202億円 EPS 121.6円  
■2017年12月期 売上高 5,365億円、営業利益 128億円 EPS 92.3円  

■2018年12月期 売上高 5,218億円、営業利益 108億円 EPS 109.4円

■2019年12月期 売上高 5,488億円、営業利益 126億円 EPS 111.7円 ce 

★2019年12月期 売上高 5,330億円、営業利益 127億円 EPS 111.9円 CONS. 
□2019年6月中間 売上高 2,429億円、営業利益▲1億円 EPS▲10.4円(8/6) 

2019年6月中間期の売上高は前年同期比0.5%増の2,429億円、営業利益は同29億円増

(赤字幅縮小)の▲1億円となり、期初予想との比較はないものの、コンセンサスの水準を

大きく上回り、営業赤字幅が大幅に縮小しました。国内酒類事業については、麦とホップ

を中心とする発泡酒類が40代顧客の客離れで前年同期比83%の水準に沈んだものの、

黒ラベル、エビスビールを軸とするビールについては同103%の水準を確保し、業界水準

同6%減を大きく上回りました。エビスビールによる高単価化が効いたほか、訪日旅行客

増加によりサッポロクラシックが大幅増となり、業務用メインのラガーも2桁の伸びを記録

しました。このほか、RTD事業も99.99の好調で倍増となり、不動産事業における恵比寿

スクエアの売却益19億円も効いて、一気に損益均衡圏まで業績が持ち直しました。


進行期である2019年12月期の予算については、期初予想を据え置いており、売上高が

5.2%増の5,488億円、営業利益は16.4%増の126億円を見込んでいます。シェア喪失の続く

麦とホップについては8月末にリニューアルを実施しており、上期で削った広告費を下期に

ぶつけて梃入れする方針となっています。好調の続くビールについては、夏場の天候不順

の影響を受けるものの、消費増税前の駆け込み需要やラグビーW杯による押し上げ効果

による数量増が見込まれるため、エビスビールに代表される高単価品好調でミックスが良

化している当社には特に追い風となることが期待されます。その一方、飲料・食品事業に

ついては自販機の不調等から一層の低採算化が進むとみられるものの、全社トータルと

してはビールが伸びが大きく寄与するため、期初予算は達成可能圏と考えています。

 

今期は2020年12月期を最終年度とする4年間の中期経営計画の3年度目となっており、

最終年度の目標値は売上高6,400億円(CAGR4%)、営業利益340億円(CAGR14%)を

掲げて、「酒類」「食品」「飲料」の3つ軸でブランド育成を図るとともに、海外進出により

成長していく目論見でした。しかしながら、中計序盤で麦とホップやポッカ缶コーヒーと

いった当社の屋台骨を支える主力商品で想定を超えるシェアを落としてしまったため、

途中で内容の見直しを迫られ、それまで5つあった事業セグメントを「酒類」「食品飲料」

「不動産」の3つに絞るとともに、途中で構造改革費用を積んでリストラを進めています。

 

既述のとおり、足許ではビールに明るい兆しが出てきたものの、発泡酒類はまだジリ貧

状態であるため、残り1年強での急回復は望めないことから、表記の中計業績目標値は

達成不可と考えています(営業利益は目標の半分の170億円にも届かないとみられます)

 

ただ、あくまで当社の投資論点はこの中計の成否ではなく、不動産事業にあると考えて

います。今期も上期に恵比寿の不動産を売却して全社の利益を大きく下支えしましたが、

当社は依然として恵比寿・札幌・銀座などに保有する2,150億円の不動産は、その倍を

超える含み益(2,000億円以上)が乗っているものと推察され、これらを一部売却して顕在

化させるだけで、全社の利益水準を飛躍的に押し上げることが可能です。不動産含み益

を税金考慮で7掛で評価した現状のP/NAV(実質PBR)は、依然0.6倍程と計算されるため、

昨今のユニゾHDに端を発した“含み資産関連株”のバリュエーションの切り上がりを考慮

すれば、当社不動産事業のポテンシャルの再評価だけで上値の余地が期待出来ます。


なお株主還元に関しては、本中計期間において配当性向30%水準をメドとしているものの、

実際は40%水準に迫る配当性向で緩やかな増配傾向【37→40→42→42円(予】、を継続し

ています。当社は約10年前にスティール・パートナーズというアクティビストから買収工作

を受けて辛くも守りきった経緯がありますが、昨今のご時世では単純な買収防衛は既存

大株主から同意を取り付けることが容易ではないため、ビールの好不調にかかわらず、

継続的に不動産売却して、追加で株主還元に回していくものと推察されます。

 

*参考記事① 2019-04-22 2,254円 OP

本業軒並み苦戦も、不動産含み益莫大で安泰・サッポロホールディングス(2501)。

 

*参考記事② 2013-03-10 1,850円(1対5、株式併合考慮) OP

サッポロHDから株主優待(の案内)がキターので短評。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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