欧州大型買収に続き、ベルグアースにも資本参加・OATアグリオ(4979)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【4979】OATアグリオ(東証一部) ---

現在値 1,701円/100株 PER9.1 PBR1.36 12月配当 株主優待あり

農薬と肥料の開発・製造企業。大塚化学からMBOで独立。植物成長調整剤にも注力。
配当は年間40円のため、配当利回りは約2.35%となります。

OATアグリオは株主優待制度を導入しており、12月末に単元株を保有する株主に対して、

1,500円分の自社製品(肥料)を進呈しておりますので、配当優待利回りは3.23%となります。

また、1年以上の長期保有株主に対しては1,000円分のクオカードを別途進呈しております

ので、この場合における配当優待利回りは3.82%となります。

業績を確認していきます。
■2015年12月期 売上高 121億円、営業利益 11.1億円、EPS 126.1円
■2016年12月期 売上高 129億円、営業利益 16.0億円、EPS 183.2円 
■2017年12月期 売上高 141億円、営業利益 18.8億円、EPS 260.1円

■2018年12月期 売上高 152億円、営業利益 17.5億円、EPS 232.2円 

■2019年12月期 売上高 229億円、営業利益 18.6億円、EPS 186.0円 ce  

□2019年6月2Q 売上高 142億円、営業利益 22.7億円、EPS 312.3円 四e   

2018年12月期の売上高は前期比8.2%増となる152億円、営業利益は同6.7%減の17.5億円

となり、売上高は予算通りに着地したものの、利益は1.5億円ほど未達となりました。主力

の国内農薬分野については、営業奏功により水稲用除草剤が好調だった一方、殺虫剤・

殺ダニ剤が低調となりました。なお、海外農薬分野については概ね順調に推移しました。

肥料・バイオスティミュラント(植物ストレス軽減による成長促進剤または技術、BSと略す)

分野については、国内・海外ともに肥料・BS剤が順調に伸長し、当該セグの売上高は前

期比で27%もの伸びを確保しました。全社の売上伸長のわりに減益着地なのは、相次ぐ

MA(※後述)による人件費などのコスト増の影響が専らの要因となっています。


進行期である2019年12月期通期の予算については、売上高が50.5%増の229億円、営業

利益は6.4%増の18.6億円を予想しています。昨年末に約78億円を投じて、花・植物の鮮度

保持剤で世界首位のシェアを握る、蘭・クリザール社(売上高64億円・営業利益5億円)を

買収したことによる上乗せが大きく寄与する格好となります。既に当社は施肥潅水系の

鮮度保持剤「美咲」を有しているため、同社販路を使って同商品の販路拡大を図るほか、

ゆくゆくは上流過程商品である農薬系商品も投入していく方針です。利益の伸びが鈍い

のは、同社等の買収にともない100億円を超えるのれん代が新たにオンされているため、

この償却が理論上の営業利益の上乗せ分である5億円をほぼ食い潰すとみられます。

なお当社業績は上半期にかなり偏重する傾向があるので、留意する必要があります。

 

当社は中期展望を公表しており、2022年12月期に売上高300億円(CAGR18%)、営業利益

30億円(CAGR15%)を目指しています。当社のこれまでの業績トラックは2011~2018年

までの7年間で売上高CAGR8%・営業利益CAGR28%という、かなり高い成長のモメンタム

を維持してきたため、中期展望という漠とした立て付けではあるものの、相応の蓋然性を

有するものと捉えています。当社の場合、基本的にはMAによる外部成長をドライバーと

しており、2018年は前述のクリザール社にくわえ、スペインで防除資材・肥料・BS剤の開

発をするLIDA社(売上高9億円)、CAPA社(売上高2億円)をそれぞれ買収しているため、

矢継ぎ早のMAにより、欧州エリアで一気に“面的な”業容拡大を狙う方針です。

 

また、国内分野についても、種苗分野に強みを持つ宇和島のベルグアース(1383)に対し、

昨年末に3.9%分の資本参加をして、業務提携しています。当社はもともと大塚製薬から

スピンオフした大塚化学に由来する会社であり、更にその大塚化学のアグリテクノ事業

部がノンコア認定されたことによるカーブアウトMBOにより発足しています。そのため、

大塚グループが拠点とする徳島(四国)とは地縁が深いため、このような資本業務提携

に至ったとみられます。ベルグアースは足許でタイ財閥のCPグループをはじめ、丸紅や

ツムラといった強力なネームの提携先を続々と獲得しているため、当社が4%近い同社

株を握ることは、ツバを付けておくという意味で、相当の有意性があると考えています。

 

一点、気掛かりなのは財務であり、これら買収の連発により自己資本比率は1年で48%

→22%まで急落しており、エクイティファイナンスリスクが急速に高まっています。2014年

の公開価格が@2,100円(分割調整後)だったため、現時点ではPOしにくい部分はありま

すが、資金調達なしにこれ以上買収前提の外部成長は難しいため、今後のMA案件の

出物次第でPO強行してくる可能性は少なくないように感じています。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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