【3082】きちりホールディングス/新型肺炎影響は未織込、減額予算なお過大で無配か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3082】きちりホールディングス(東証1部) UP

現在値 553円/100株 PER39.5 PBR3.1 6月配当 12月株主優待

女性向け居酒屋『きちり』等を直営展開。関西から関東に軸足移行。
配当金は6月末一括の7.5円配当であり、配当利回りは1.36%となります。

きちりは株主優待制度を実施しており、12末現在の100株以上の株主に対して3,000円分の食事券を進呈しておりますので、配当優待利回りを算出すると約6.78%となります。

業績を確認していきます。
■2016年6月期 売上高 80.3億円、経常利益 4.3億円 EPS 25.7円  
■2017年6月期 売上高 88.4億円、経常利益 3.1億円 EPS 16.9円  

■2018年6月期 売上高 92.4億円、経常利益 3.5億円 EPS 14.5円 

■2019年6月期 売上高 99.1億円、経常利益 3.7億円 EPS 15.8円 連移行

■2020年6月期 売上高 105.0億円、経常利益 3.4億円 EPS 13.7円 ce修正(2/7)
□2019年12月中 売上高 52.0億円、経常利益 1.3億円 EPS 4.2円(2/7)

2019年12月中間期の売上高は前年同期比3.6%増の52.0億円、経常利益は同36.9%減の1.3億円となり、増収こそ確保したものの期初予算水準に届かず減益となりました。東日本を中心に台風19号の影響による影響を受けたほか、入居する商業施設が消費増税により来館者が減少したため、既存店が軒並み苦戦する結果となりました。新店については京都・嵐山にミルクティー専門店である「CHAVATY」を表参道に続いて出店したほか、町田に旗艦ブランドである「KICHIRI」を、昨年10月開業のららぽーと沼津には「いしがまやハンバーグ」、「3 Little Eggs」、「かつゑもん」、「ひな鶏 伊勢ゐ」を4店舗固め打ちで出店しています。

なお2020年6月期の通期予算については、中間時点で減額しており、売上高は前期比6.0%増の105億円(従予:105億円)、経常利益は同9.9%減の3.3億円(従予:4.5億円)に修正しています。今期の出退店計画は退店ゼロに対して、出店を20店(うちFC10店)を見込んでいるため、出店による成長をメインシナリオとしており、既に上期時点で9店の出店を果たしています。然しながら、目下の新型肺炎影響により、本年2月頃までは95%を挟む水準で推移していた既存店売上高も、直近の3月単月では58.2%水準にまで下落しているほか、4月もSC内のハンバーグ店など一部店舗を除いて殆ど売上が立たないものと目されます。そのため、増税影響しか織り込んでいない修正予算はかなり過大であり、落着では赤字圏にまで沈む公算が高そうです。


当社は主力の「KI・CHI・RI」ブランドの成熟化と、洒落た内装の経年による劣化が進んでいることから、他社よりも積極的に業態開発を推進しています。2018年にはルクア大阪内にグロサリーとレストランを融合したグローサラントである「キッチン&マーケット(578坪)」内にハンバーグ&ステーキの新業態や、「Merca」と称するイタリア食市場を開業しています。これは言うまでもなく、「石がまやハンバーグ」や、かつて三井物産とイタリア食材事業の「EATALY」があったの合弁展開していたことのノウハウを活かしたものと考えられます。

 

純粋な飲食以外では、外食プラットフォーム事業の展開を進めており、相手先ブランドでの飲食アウトソーシング受注を進めているほか、小規模ながらCVC事業も展開しており、iPadを利用したPOSレジ会社や、労務管理システム会社などの飲食に関連する出資先のサービスを、自社で活用したり提携先に活用させたりするなどして収益の多角化を図っています。

 

また、収益安定化のために所謂FC展開を推進しており、2018年5月には小売大手イズミの飲食子会社と提携し、中国エリアにおける同社商業施設(ゆめタウン、ゆめマート、LECT)内で、当社のハンバーグ店やオムライス店をフランチャイザーとして展開していく方針です。イズミの飲食子会社は既に61店舗144ショップを展開していることから、今後現行業態のリプレイスで出店出来れば、加速度的に店舗展開が出来る可能性があり、ロイヤリティ収入が期待出来ます。

 

然しながら、こうした新規業態開発やFC拡大によるロイヤリティ収入増については、あくまで新型肺炎影響を無事に乗り切った場合における単なる“伸びシロ”です。足許の財務状況については、自己資本比率44%と同業他社比では高い数字となっているものの、絶対的な企業規模が小さいため、現預金は僅か7億円弱しかなく、全く余裕のない状態とみられます。実際、再度の業績修正をしていないにも拘らず、4月20日の開示で創業者の平川氏をはじめとする役員報酬を最大3割カット(役員報酬は5人合計で約1.05億円/年)しているため、今期の無配転落はほぼ確実と考えています。

 

*参考記事① 2019-04-03 761円 NT

業績底堅く、新業態続々きちりホールディングス(3082)。

 

*参考記事② 2018-03-17 718円 NT

久々に中間で予算水準を確保だが、手品業態にはリスクも・きちり(3082)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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