【9612】ラックランド/中計・長計ともに達成可視性が大きく後退、回復には要時間。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9612】ラックランド(東証1部) UP

現在値 3,000円/100株  P/E 41.1 P/B 2.98  12月・6月配当優待 3月・9月優待

食品、飲食業向け主力の店舗企画、設計、施工会社。メンテナンスに強み。
配当は6月末・12月末の合計25円配当のため、配当利回りは約0.83%となります。

ラックランドは株主優待制度を導入しており、6月末・12月末時点で単元株以上を保有する株主に対して、3,000円分の東北地方特産品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.83%となります。なお、3月末・12月末現在の単元株主に対して、ギフトクーポン(割引)券も発行しておりますので、そちらもフルに利用した場合の利回りは約4.50%となります。

業績を確認をしていきます。
■2017年12月期 売上高 311億円 経常利益 9.6億円 EPS 89.1円 

■2018年12月期 売上高 428億円 経常利益 4.0億円 EPS 11.4円 

■2019年12月期 売上高 403億円 経常利益 10.4億円 EPS 111.7円 

■2020年12月期 売上高 371億円 経常利益▲3.8億円 EPS▲53.6円 

■2021年12月期 売上高 420億円 経常利益 12.5億円 EPS 73.0円 ce

□2021年6月2Q  売上高 187億円 経常利益 4.1億円 EPS 25.1円 

□2021年9月3Q  売上高 264億円 経常利益▲1.6億円 EPS 3.0円(10/29) 

2021年6月期の売上高は前年同期比4.7%減の187億円、経常利益は同31.0%減の4.1億円となり、減収減益かつ対予算でも未達となりました。主力の店舗内装事業は、主要顧客であるスーパー・外食等部門が設備投資を抑制しており、新設より改装、ないしは小型案件の増加により減収となりました。また商業施設事業についても、前期の完工済の大型案件(伊勢丹府中店跡地のミッテン府中とみられる)といった期ズレ案件寄与したものの、横ばい圏に留まりました。他方、食品工場事業や、ストック性の高い保守メンテナンス事業の契約店舗数も期末比約4,200件増の21,500件となり、主力2事業よりは底堅く推移しました。


2021年12月期の通期見通しは期初予想を据え置いており、売上高が前期比13.0%増の420億円、経常利益は黒転の12.5億円を予想しています。足許では新型肺炎禍で低調だった外食が、デリバリーやシェアキッチン等の受注増で持ち直しつつあることから店舗内装事業が復調しているものの、逆に期ズレ案件剥落の商業施設事業は、デベロッパーの投資意欲後退で軟調に推移しています。他方、食品工場事業は物流施設の冷設工事や改修が伸長しているほか、保守メンテナンス事業については、中国拠点である島根営業所の開設もあり、足許ベースでは契約店舗数が22,000件弱まで増加しています。そのため部分的に堅調な要素はあるものの、全社では弱含みであり、未達公算が高い状況です。


当社は目下10年長計(中計として第Ⅰ・第Ⅱ・第Ⅲに期分け)を走らせており、2025年12月期に売上高500億円、経常利益30億円を目標としています。そして目下の進行期である2021年12月期は既に中計第Ⅱ期間の最終年度となっており、当初の目標額は売上高450億円、経常利益15億円となっていましたが、目下の業績モメンタムを鑑みれば大きくビハインドしているような状況です。特に得意顧客の外食がこの新型肺炎禍でダメージを受けていることから、投資意欲の復元には相当な時間を要するとみられ、既に市況前提も大きく崩れていることから、中計第Ⅱ期間・長計ともに達成可視性が消失しつつあるものと考えています。

 

本長計期間では、強みを持つテナント側の冷凍・冷蔵設備、内装工事の「C工事」だけでなく、電気工事や給排水・空調設備、防災設備工事といった「B工事」、家主側の「A工事」や施設共用部分や果ては施設全体のプロデュースといった形で川下から川上に遡っていくような業容拡大を進めています。実際はMAを駆使する形を採っており、2018年に金物制作会社の墨東工業(年商不詳)と照明商社の日本ピー・アイ(年商7億円)を買収したほか、2019年に空調・給排気工事の環境整備NSE(年商11億円)を買収しています。2020年にはマイクロバブル発生装置・工作機器製造のヤマザキ(6147)の株式を5%まで追加取得するなどしています。

 

これらのMAは、内装工事類のフルライン受注戦略である一方、労働力不足に備えて職人の内製化と職能増進の意図があり、特徴を持つ買収子会社に職人を出向させて技能を持ち帰らせ、職人自体をマルチ技能化させています。そしてそのマルチ技能職人から、比較的人件費の安い外国人労働者やシニア人材・プラチナ人材(~85歳)に再度技能を伝承していくことで、専門性を有する職人の再生産サイクルを生み出しています。然しながら、目下においてはそもそもの全社受注が低調なことから、こうした取組は業績にはあまり結びついていないような状況です。

 

財務については、2019年に初のPOで約34億円の調達を済ませています。当初資金使途は社債償還と借入返済という後ろ向きなものではあったものの、結果として自己資本比率は35.9%と比較的高い水準を維持出来ているため、新型肺炎禍前の“滑り込み増資”は大変有意な結果となりました。そのため、今期業績は未達公算がかなり高いものの、配当金は年25円の維持される見通しです。

 

*参考記事① 2021-05-20 2,495円 NT

【9612】ラックランド/期ズレ案件寄与で滑り出し好調だが、会社計画には過大感も。

 

*参考記事② 2020-11-17  2,304円 NT

【9612】ラックランド/新型肺炎影響をほぼ見込まない会社計画は、やや楽観的な印象も。

 

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