【9612】ラックランド/期ズレ案件寄与で滑り出し好調だが、会社計画には過大感も。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9612】ラックランド(東証1部) NT

現在値 2,495円/100株  P/E 34.1 P/B 2.42  12月・6月配当優待 3月・9月優待

食品、飲食業向け主力の店舗企画、設計、施工会社。メンテナンスに強み。
配当は6月末・12月末の合計25円配当のため、配当利回りは約1.00%となります。

ラックランドは株主優待制度を導入しており、6月末・12月末時点で単元株以上を保有する株主に対して、3,000円分の東北地方特産品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.40%となります。なお、3月末・12月末現在の単元株主に対して、ギフトクーポン(割引)券も発行しておりますので、そちらもフルに利用した場合の利回りは約5.41%となります。

業績を確認をしていきます。
■2017年12月期 売上高 311億円 経常利益 9.6億円 EPS 89.1円 

■2018年12月期 売上高 428億円 経常利益 4.0億円 EPS 11.4円 

■2019年12月期 売上高 403億円 経常利益 10.4億円 EPS 111.7円 

■2020年12月期 売上高 371億円 経常利益▲3.8億円 EPS▲53.6円 

■2021年12月期 売上高 420億円 経常利益 12.5億円 EPS 73.0円 ce

□2021年3月1Q  売上高 89.6億円 経常利益 3.9億円 EPS 28.6円(4/30) 

□2021年6月2Q  売上高 201億円 経常利益 5.0億円 EPS 30.2円 ce

2020年12月期の売上高は前期比7.9%減の371億円、経常利益は同14億円損益悪化となる▲5億円の赤字となり、大幅な減収減益となったほか予算比でも未達となりました。単体の店舗内装事業においては、新型肺炎禍において主要顧客であるスーパー・外食等部門が設備投資を見送った影響を色濃く受けたほか、下期にかけて引渡しを予定していた大型物件が完工していたものの、許認可に時間を要して翌期ズレしたこと等が影響しました。なおストック型の保守メンテナンス事業は、北東北拠点として青森営業所を新設するなどした結果、契約店舗数は前期末より約1,200件増の17,400件超となり、比較的底堅く推移しました。


2021年12月期の通期見通しについては、売上高が13.0%増の420億円、経常利益は黒転の12.5億円と大幅な良化を予想しています。内装事業と建築事業において、実績期で期ズレとなった完工済み大型案件の計上が見込まれるほか、特に主力とするスーパー・小売店向けの改装等受注が昨年後半から復元しつつあったため、それらが顕在化する見込みです。また昨年低調に終わった外食向けについても、デリバリーやシェアキッチン対応型の受注の増加が見込まれます。また、保守メンテナンス事業についても中国拠点として島根営業所を開設し、足許ベースでは契約店舗数が20,000件を伺う水準まで増加しています。然しながら、全般的に工期に時間がかかる中で最高益更新を狙う予算は過大感が強く、1Q滑り出し好調ながら未達含みとみられます。


当社は目下10年長計(中計として第Ⅰ・第Ⅱ・第Ⅲに期分け)を走らせており、2025年12月期に売上高500億円、経常利益30億円を目標としています。そして目下の進行期である2021年12月期は既に中計第Ⅱ期間の最終年度となっており、当初の目標額は売上高450億円、経常利益15億円となっていましたが、目下の業績モメンタムを鑑みればややビハインドしているような状況です。然しながら、新型肺炎禍なかりせば概ねインラインの進捗だったとみられるため、中計・長計としてはある程度妥当性のある内容と解しています。

 

長計での注力事項としては、当社が本来的な強みを持つテナント側の冷凍・冷蔵設備工事や内装工事といった「C工事」部分だけでなく、電気工事や給排水・空調設備工事、防災設備工事といった「B工事」にくわえ、家主側の「A工事」や施設共用部分や果ては施設全体のプロデュースといった形で川下から川上に遡っていくような格好で業容を拡充させており、どちらかというと自前ではなくMAを駆使しています。実際に2018年には金物制作会社の墨東工業を4億円程で買収(年商不詳)したほか、同年1月には照明商社の日本ピー・アイ(年商7億円)を、2019年には空調・給排気工事の環境整備NSE(年商11億円)を相次いで買収しています。また昨年は、浜松のマイクロバブル発生装置・工作機器製造のヤマザキ(6147)の株式を5%まで追加取得するなどしています。

 

また、MA以外の所謂“ウィズコロナ”時代に即した取り組みとして、「まるごと店舗サービス」という名称で、サブスクで店舗居抜き型のサブリース事業の展開を始めたほか、同様に飲食向けにデリバリーやテイクアウトを想定したクラウドキッチン向けのシェアキッチンサービスを開始する予定であり、本年中に関東を中心に20か所を展開する方針です。このほか、関連会社との協業で殺菌型ダクトを開発するなど、商品ラインナップの拡充を進めています。

 

財務の状況については、2019年末に上場来初のPOで約34億円の調達を済ませています。当初の資金使途は償還期近の社債と短期借入返済という後ろ向きなものではあったものの、実績期の赤字があってなお目下の自己資本比率は34.6%水準をキープ出来ていることから、振り返ってみれば大変有意な増資であったと考えています(なお同業のスペースや船場等は実質無借金で更に好財務)。そのため、配当金についても年25円配の安定的な維持が見込まれます。

 

*参考記事① 2020-11-17  2,304円 NT

【9612】ラックランド/新型肺炎影響をほぼ見込まない会社計画は、やや楽観的な印象も。

 

*参考記事② 2020-05-27  2,079円 NT

【9612】ラックランド/環境激変で、昨年末の公募増資は“ファインプレー“という評価。

 

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