【5301】東海カーボン/中国粗鋼生産急回復で、翌期から黒鉛電極も大幅値上げへ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5301】東海カーボン(東証1部) OP

現在値 1,361円/100株  P/E 24.1  P/B 1.34 12月配当・6月配当 株主優待あり

炭素製品大手。カーボンブラック国内首位。電炉用電極、半導体・太陽光向け素材も。
配当金は年2回・合計30円配当のため、配当利回りは2.20%となります。

東海カーボンは株主優待制度を導入しており、100株を1年以上継続保有する12月末の株主に対して、2,000円分相当のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.40%となります。また3年超の長期保有により進呈額が3,000円相当となるため、その場合の配当優待利回りは約%となります。

業績を確認していきます。 
■2017年12月期 売上高 1,062億円、営業利益 114億円 EPS 55円 

■2018年12月期 売上高 2,313億円、営業利益 752億円 EPS 347円 

■2019年12月期 売上高 2,620億円、営業利益 543億円 EPS 150円

■2020年12月期 売上高 2,015億円、営業利益 78.5億円 EPS 4.7円 

■2021年12月期 売上高 2,509億円、営業利益 236億円 EPS 56.2円ce修正

□2021年6月2Q 売上高 1,178億円、営業利益 109億円 EPS 26.7円
□2021年9月3Q 売上高 1,850億円、営業利益 176億円 EPS 44.8円(11/4)


2021年6月期の売上高は前年同期比28.0%増の1,850億円、営業利益は同2.3倍の176億円となり、対前期・対予算ともに大幅な増収増益となりました。主力の黒鉛電極事業については、中国の粗鋼生産の回復により数量が増加したものの、未だ旧価中心のため黒字確保に留まったものの、カーボンブラック事業については中国の完成車メーカーの急回復や世界のタイヤメーカーの需要回復により、全社業績を大きく押し上げました。また、ファインカーボン事業についても半導体・太陽電池向けが堅調に推移しました。


なお2021年12月期の通期見通しについては中間時点で増額しており、売上高は前期比24.5%増となる2,509億円(期予:2,279億円)、営業利益は同3.0倍の236億円(期予:181億円)と反転増を見込んでいます。主力の黒鉛電極事業については、中国粗鋼生産の回復で顧客側の電極在庫の消化が急速に進んでおり、徐々に新価改定による単価効果が見込まれます。同様にカーボンブラック事業も、油価上昇による価格転嫁が進むほか、ファインカーボン事業も半導体の好況継続が見込まれることから、全セグメントで大きく回復・上伸する見通しです。

 

当社はローリング形式の3年中計を公表しており、従来計画では翌2022年12月期に売上高3,000億円、営業利益540億円を業績目標としていました。然しながら、鉄鋼生産の回復と黒鉛電極相場の戻りが会社側の想定より1年程遅れた一方、カーボンブラックやファインカーボンについては想定よりも立ち直りが早いため、かような実態市況を織り込み直す形で本年5月に新数値を公表しており、最終年度の2023年12月期に売上高を2,015億円→3,200億円に、営業利益を79億円→570億円までそれぞれ引き上げる計画としています。

 

当社は2018年の空前の“黒鉛電極バブル”で得たあぶく銭で矢継ぎ早の買収を進めてきた経緯があります。2017年にドイツSGL社(黒鉛電極)の米国部門に129億円、2018年に韓国法人株式追加取得(+9%)に78億円、米国SRC社(カーボンブラック)に341億円、2019年にカソードで首位級の独コベックス(炭素黒鉛繊維)に1,000億円、2020年に仏サボイ(炭素黒鉛製品)に200億円をそれぞれ投じて業容を急拡大させ、黒鉛電極一本足打法からの脱却を果たしています。

 

これら業容の急拡大により今般の新型肺炎禍の影響を大きく受ける格好となりましたが、世界的な生産活動の回復フェーズ入りにともない、各ドメインで前提を見直しています。黒鉛電極は粗鋼生産回復と原料高を受けて2022年上期から従来より3~4割程度の大幅な値上げを実施するほか、先んじてカーボンブランクはこの4月から、ファインカーボンは8月から10%の値上げを実施しています。投資計画については、3年間累計CFの1,500億円を設備に660億円、負債削減に370億円(調整ネットD/E0.2倍→0.0倍)、残りをMAと還元に回す方針です。

 

財務状況については、半資本認定のハイブリッド調達を推進してきたこともあり、自己資本比率は43%台と依然高い水準をキープしています。配当については前期より年30円まで切り下げていますが、上方修正後でもなお配当性向目安の30%を大きく上回る53%水準であり、今期業績はなお上振れ含みとみられるものの、配当は据え置かれる公算が高そうです。

 

*参考記事① 2020-05-19 889円 OP

【5301】東海カーボン/中計早くも赤信号だが業容拡大は順調、論点は配当維持。

 

*参考記事② 2019-11-02 1,096円 OP

破竹の大型買収続くも、のれん償却が重い・東海カーボン(5301)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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