【5301】東海カーボン/中計早くも赤信号だが業容拡大は順調、論点は配当維持。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5301】東海カーボン(東証1部) OP

現在値 889円/100株 PER11.4 PBR0.95 12月配当・6月配当 株主優待あり

炭素製品大手。カーボンブラック国内首位。電炉用電極、半導体・太陽光向け素材も。
配当金は年2回・合計48円配当のため、配当利回りは5.40%となります。

東海カーボンは株主優待制度を導入しており、100株を1年以上継続保有する12月末の株主に対して、2,000円分相当のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約7.64%となります。また3年超の長期保有により進呈額が3,000円相当となるため、その場合の配当優待利回りは約8.77%となります。

業績を確認していきます。 
■2016年12月期 売上高 885億円、営業利益 11億円 EPS ▲37円 
■2017年12月期 売上高 1,062億円、営業利益 114億円 EPS 55円 

■2018年12月期 売上高 2,313億円、営業利益 752億円 EPS 347円 

■2019年12月期 売上高 2,620億円、営業利益 543億円 EPS 150円

■2020年12月期 売上高 2,512億円、営業利益 282億円 EPS 77.8円 ce

□2020年3月1Q 売上高 527億円、営業利益 67.5億円 EPS 21.5円(5/11)
□2020年6月2Q 売上高 1,201億円、営業利益 105億円 EPS 26.2円 ce

2019年12月期の売上高は前期比13.3%増の2,620億円、営業利益は同25.6%減の25.6億円となり、大幅減益となったほか、中間時の減額予算にも届きませんでした。主力の黒鉛電極事業において、原材料逼迫により単価が伸びたものの、前年需給が極めてタイトだったことに起因する顧客側の在庫積み増しにより需要減となったほか、カーボンブラック事業についてもタイヤメーカー向けが米中貿易摩擦の影響を受け数量減となったほか、原価増でマージンも圧縮されました。一方、ファインカーボン事業については半導体・太陽電池向けが堅調に推移したほか、韓国子会社の通期寄与効果により、当該セグメントのみ大幅な増収増益となりました。


進行期である2020年12月期の通期予算について、売上高は4.1%減となる2,512億円、営業利益は同48.1%減となる282億円と連続での大幅減益を予想しています。主力の黒鉛電極事業については、中国鉄鋼生産の減少や顧客側の電極在庫消化が遅れているほか、カーボンブラック事業についても米国の自動車・タイヤ生産がやや持ち直し気味であるものの、日本・中国その他アジアが低迷していることにくわえ、油価安によるマージン減少が見込まれます。去る5月11日に公表済の1Qは2割超の減収・7割弱の減益で通過しているものの、これは前年同時期に黒鉛電極市況が特に高騰していたことが主要因です。通期予算も期初のものを据え置いていますが、先行き不透明を理由に新型肺炎の影響を織り込んでおらず、7月に同業の仏サボイ社を買収(※後述)によるアップサイドはあるものの、未達公算が極めて高いと判断されます。

 

当社はローリング形式で3年中計を公表しており、直近本決算時点でロールしています。最終年度を2022年12月期へと時期を1年送った上で、欧州経済減速と米中貿易摩擦長期化というマクロ環境の大幅な悪化を反映し、売上高目標を3,800億→3,000億円、営業利益目標を1,130億円→540億円へと其々大幅に減じています。そもそも従来の中計目標は2018年の“黒鉛電極バブル”の追い風を存分に受けた中で策定されたものでしたが、既にこのバブルは弾けて過剰在庫気味になったことから、この在庫解消が2020年下期になる前提で数値を設定し直しています。然しながら、足許の新型肺炎影響で、黒鉛電極ラインの稼働率は3割・カーボンブラックラインは同7割程度にまで更に落ちてしまっていることから、既にロール後の数値でも過大であり、達成は不可とみます。

 

当社は“黒鉛電極バブル”で得た資金を積極的なMAに投じ、業容の拡大と分散を進めてきています。2017年に黒鉛電極の同業であるドイツSGL社の米国部門に129億円を投じて完全子会社化したほか、2018年には78億円を投じて韓国法人の株式を追加取得(+9%)し、さらに同年9月には341億円を投じて、米国カーボンブラックメーカーであるSRC社を矢次早に買収しており、黒鉛電極メーカーとしても、カーボンブラックメーカーとしても、世界大手の地位を築いています。

 

 

2019年7月にはドイツの炭素黒鉛繊維メーカーのコベックス(売上高300億円・営業利益90億円/のれん654億円)に約1,000億円を投じて買収しています。同社はアルミ精錬時の電気分解に使用されるカソードで首位級のシェアを保持しているほか、炭素電極の生産能力も欧州最大規模を誇っておりアルミ市場は銅やニッケル、粗鋼といった他金属よりも市場成長ピッチが速いため、中長期的な成長が期待されます。また、本年7月にはフランスの炭素黒鉛製品メーカーのサボイ(売上高167億円・EBITDA31億円)を、先頃買収した独コベックスとともに約200億円を投じて共同買収することを明らかにしており、当社のアルミ精錬用カソードのシェアは一層引き上がる見通しとなりました。

 

相次ぐ大型買収により財務状況が懸念されますが、2018年までは配当性向10%未満まで株主還元を絞ってきたこともあり、自己資本比率は45%台と依然高い水準をキープしています。一応、昨年10月には半分を資本とみなすハイブリッドファイナンスにより約500億円を調達しているほか、足許でのサボイ買収にともない再度ハイブリッドによる調達を目論んでいる模様です。一応、中計では財務健全指標としてネットD/E0.0倍を目標としていますが、サボイ買収前でも0.3倍ほどなので、なお余裕があると判断され、会社側は配当性向30%を守る意思を示す一方、配当額下限の明示は避けていますが、現時点においては年48円配当をキープする可能性もあり得ると考えています。

 

*参考記事① 2019-11-02 1,096円 OP

破竹の大型買収続くも、のれん償却が重い・東海カーボン(5301)。

 

*参考記事② 2019-05-07 1,279円 OP

実績期は4度の上方修正、いよいよ株主還元強化に焦点・東海カーボン(5301)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。  


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