破竹の大型買収続くも、のれん償却が重い・東海カーボン(5301)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【5301】東海カーボン(東証1部) OP

現在値 1,096円/100株 PER4.7 PBR1.14 12月配当・6月配当 株主優待あり

炭素製品大手。カーボンブラック国内首位。電炉用電極、半導体・太陽光向け素材も。
配当金は年2回・合計48円配当のため、配当利回りは4.38%となります。

東海カーボンは株主優待制度を導入しており、100株を1年以上継続保有する12月末の

株主に対して、2,000円分相当のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回

りは約6.20%となります。また3年超の長期保有により進呈額が3,000円相当となるため、

その場合の配当優待利回りは約7.11%となります。

業績を確認していきます。 
■2015年12月期 売上高 1,048億円、営業利益 40億円 EPS 11円
■2016年12月期 売上高 885億円、営業利益 11億円 EPS ▲37円 
■2017年12月期 売上高 1,062億円、営業利益 114億円 EPS 55円 

■2018年12月期 売上高 2,313億円、営業利益 752億円 EPS 347円 

■2019年12月期 売上高 3,044億円、営業利益 769億円 EPS 231円 ce修正
□2019年6月中間 売上高 1,391億円、営業利益 404億円 EPS 122円(8/6)

2019年6月中間の売上高は前年同期比51.8%増の1,391億円、営業利益は同41.8%増

404億円となり、4割超の増収増益で大増勢となったものの、予算に届きませんでした。

主力の黒鉛電極事業において、中国製鋼業における高炉から電炉へのシフトが追い風と

なっているものの、前年の需給が極めてタイトだったことに起因する顧客側の在庫積み増

しにより需要減となったほか、売上占有3割を占める欧州の景気減速の影響を受けました。

カーボンブラック事業についても、売価転嫁によるマージンの改善があったものの、米中

貿易摩擦の影響により、タイ・中国での販売が想定の水準に届きませんでした。


なお、2019年12月期の通期予算についても減額しており、売上高は前期比31.6%増となる

3,044億円(期初予:3,227億円)、営業利益は同5.2%増となる769億円(期初予:987億円)に

修正しています。主力の黒鉛電極事業については、上述のとおり需給のタイト化に歯止

めがかかりつつあることから、想定よりも数量減となる見通しです。黒鉛電極、カーボン

ブラックともにマージン改善効果を見込んでおり、減額後の修正予算においても、上期

単独よりも下期単独の方が強い数字を置いている点は要注意です。また、本年7月には

ドイツの炭素黒鉛繊維メーカーのコベックスを買収しており(後述)、当該買収による数字

は既に反映がなされていますが、従来事業の修正予算がなお強く、達成は不透明です。

 

今期は新3年中計の初年度となっており、最終年度の2021年12月期に売上高3,800億

円(CAGR18%)、営業利益1,130億円(CAGR14%)を目標としています。旧3年中計実績

は売上高が目標の倍以上、営業利益目標に至っては6倍超という破格の超過達成とな

りました。そのため、新中計期間の業績モメンタムはさすがに鈍化するものの、2017年

に黒鉛電極の同業であるドイツSGL社の米国部門に129億円を投じて完全子会社化し

たほか、2018年には78億円を投じて韓国法人の株式を追加取得(+9%)し、さらに同年

9月には341億円を投じて、米国カーボンブラックメーカーであるSRC社を矢次早に買収

しており、黒鉛電極メーカーとしても、カーボンブラックメーカーとしても、グローバルで

第4位級まで業界順位を上げてきています。

 

また、足許においても7月にドイツの炭素黒鉛繊維メーカーのコベックスに約1,000億円

を投じて買収しております。同社はポーランドに2工場を保有し、アルミ精錬時の電気分

解に使用されるカソードは首位級のシェアを保持しているほか、炭素電極の生産能力も

欧州最大規模を誇っており、特にアルミ市場は銅やニッケル、粗鋼といった他金属よりも

市場成長ピッチが速いため、中長期的な成長が期待されます。ただ、業績寄与的な観点

で言えば、通年のアクチュアルベースでは売上高300億円弱・営業利益90億円弱がオン

される計算となるものの、のれん代が653億円発生しており、これを10年で償却すること

から、巡航ベースの営業利益寄与額はおよそ30億円程に留まるとみられます。そのため、

大型買収が相次ぐものの、今回中計に掲げる目標の数字はなお遠い印象を受けます。

 

気掛かりとなるのは財務状況ですが、前期まで配当性向を僅か7%程に留めていたことも

あり、自己資本比率は60%水準をキープしているような状況です。但し、上記のコベックス

の買収に1,000億円という巨費を投じたことから、10月にはハイブリッド社債とハイブリッド

ローンにより約500億円を調達することを明らかにしており(半分は資本認定される見込)、

大型買収連発もエクイティに頼らず、デットでの調達でこの場を凌ぐものとみられます。

なお株主還元については、中計期間中に配当性向を30%水準(今期予想は15.5%)まで引

き上げる方針としていますが、足許の財務悪化を考慮し、さすがにその辺の配当政策に

ついては見直してくる可能性があるものと考えています。

 

*参考記事① 2019-05-07 1,279円 OP

実績期は4度の上方修正、いよいよ株主還元強化に焦点・東海カーボン(5301)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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