【2914】日本たばこ産業/海外の単価効果本格発現で再増額、たばこ事業はスイス本社へ。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_4571.jpg

【2914】日本たばこ産業(東証1部)  OP

現在値 2,365円/100株 P/E 12.5  P/B 1.48  6月配当 12月配当優待

たばこが事業の中核。M&Aで海外たばこ事業を拡大中。
配当は6月末・12月末の年2回・計140円のため、配当利回りは約5.92%となります。

JTは株主優待制度を導入しており、1年以上単元株を保有する単元株主に対して、2,500円分の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約6.97%となっており、2単元まではこの利回りがほぼ維持されます。

業績を確認していきます。当社はIFRS採用企業となります。   

■2017年12月期売上高 21,396億円 営業利益 5,611億円 EPS 219円

■2018年12月期売上高 22,159億円 営業利益 5,649億円 EPS 215円

■2019年12月期売上高 21,756億円 営業利益 5,023億円 EPS 195円 

■2020年12月期売上高 20,925億円 営業利益 4,690億円 EPS 174円 

■2021年12月期売上高 22,800億円 営業利益 4,780億円 EPS 185円 ce修正(10/29)

◆2021年12月期売上高 22,448億円 営業利益 4,514億円 EPS 175円 cos(11/1)

□2021年6月2Q 売上高 11,445億円 営業利益 3,220億円 EPS 126円

□2021年9月3Q 売上高 17,660億円 営業利益 4,806億円 EPS 190円(10/29)

2021年6月中間期の売上高は前年同期比11.1%増の11,445億円、営業利益は同27.8%増の3,220億円となり、予算比はないものの2桁超の増収増益となりました。国内事業は紙巻たばこ(RMC/Ready-Made Cigarettes)の趨勢減と、相次ぐ値上げによる他社流出及びダウントレードで、シェアは6割を切って数量も同9.5%減となったものの、値上げ効果が大きく発現しました。また注力中のRRP(RRP/Reduced-Risk Products)もシェアが若干拡大したことから、国内事業は増益確保となりました。海外事業については、大幅増税のロシアでシェアが落ちた一方、仏・伊・英・西などの欧州域で軒並み+1%~+3%のシェア増加となったほか、値上げ効果が力強く発現して為替一定ベースで3割弱もの増益(円換算でも2割強の増益)となり、絶好の折り返しとなりました。

 

なお2021年12月期通期の見通しについても10月末に開示済の3Qで再増額しており、売上高が前期比9.0%増の22,800億円(期予:20,800億円)、営業利益は同1.9%増の4,780億円(従予:3,630億円)と期初の減収減益予想から一転して、増収増益を見込んでいます。国内事業のRMCは、需要趨勢減や値上げの影響で数量減前提▲7%のところ▲9%で推移しているものの、単価効果発現と新型RRPの「PloomX」投入によるシェアアップで相殺します。海外については、為替不利影響を織り込んでいたものの、足許の円安傾向により前提を有利変更したほか、値上げ効果を満喫してなおダウントレーディングの好影響を受けて各国でシェアが上昇していることから、これら複次的要素により増益を確保する見通しです。なおリストラ費用▲370億円、昨年の虎ノ門本社ビルの売却益▲413億円の剥落を飲み込んでいるため、見ため以上に力強い数字となっています。

 

RRP「Ploom TECH」は、「iQOS(PM)」「glo(BAT)」らとのシェア差が依然として詰まらないものの、「iQOS」シミラー品の高温加熱式の新製品の「PloomS」、その後継機「PloomS2.0」ともに振るわず、本年7月にデバイス・スティックを刷新し、IoTを実装した新製品「PloomX」を投入しました。同製品は意匠性等が一定程度評価されている模様で、滑り出しは好調であるものの、現状のRRP当社シェアは推定11%程で殆ど変わっておらず、展開予定のロシアでは競合が大きく伸ばしているような状況であるため、現状では過度な期待は出来ない状況です。

 

RRPはそのように足踏み状態であるものの、8月からメビウスの値上げ(+30円/箱)に踏み切るなど収益性の確保に取り組んでいるほか、RRP以外でも国内事業の海外への統合(スイス・ジュネーブ)への統合とそれにともない国内リストラを実施しており、3,000人規模の人員削減や筑紫野市の九州工場廃止等によるリストラ効果により、2023年までに年100億円程度の利益改善を見込んでいます。また、競合のPMがこの8月に「IQOS ILUMA」を投入し、最終的にはRMC完全撤退を視野に入れているのとは対照的に、葉たばこの含有量を抑えた廉価版のメビウスeシリーズを投入し、残存者利益の確保を図る目論見です。

 

最後に最大の投資論点となる株主還元策ですが、資源配分方針を従来の「配当の安定・継続的な成長」から、「事業投資を最優先に、利益成長と株主還元のバランスを重視」に変更した上で、「配当性向75%」で年間配当を154円→130円に24円減じる予想をしていましたが、今次増額修正に沿って年10円分復元して、年140円に修正しています。既に最終利益は3Q時点で通期予想を超過してている一方、期末4Qに一過性特損が追加的に計上される可能性があることから、もう一段の復元配の上積みが期待されるものの、どこまで復元されるかはなんとも言えない状況です。

 

*参考記事① 2021-05-14  2,156円 OP

【2914】日本たばこ産業/減配は案外だが自社株買いに言及、足許モメンタムは好調。

 

*参考記事② 2020-11-19 2,160円 OP

【2914】日本たばこ産業/ダイナミックな値上げ戦略による採算良化で、高配当維持に弾み。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

にほんブログ村 株ブログ 株主優待へ にほんブログ村 株ブログ IPO・新規公開株へ にほんブログ村 株ブログ サラリーマン投資家へ