【8892】日本エスコン/ピカソほか7社を大型買収も、“のれん代”大きく利益寄与は限定的。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8892】日本エスコン (東証1部)   BY

現在値 829円/100株  P/E 11.5  P/B 1.32 6月株主優待 12月配当

京阪神を中心に分譲マンションを展開。09年に事業再生ADRを終結。
配当金は12月末一括の38円の配当で、配当利回りは4.58%となります。

日本エスコンは株主優待制度を導入しており、10単元以上を1年以上保有する6月末株主に対して、1,000円相当のクオカードを進呈しておりますので、配当と合計した配当優待利回りは約4.70 %となります。また2年以上の継続保有で進呈額が3,000円となる長期優遇制度も導入しており、その場合の同利回りは約4.94%となります(※いずれも10単元保有時)。

業績を確認していきます。
■2017年12月期 売上高 447億円、経常利益 59億円 EPS 81.7円 

■2018年12月期 売上高 543億円、経常利益 104億円 EPS 105.9円 

■2019年12月期 売上高 721億円、経常利益 118億円 EPS 119.1円 

■2020年12月期 売上高 773億円、経常利益 111億円 EPS 111.9円 

■2021年12月期 売上高 800億円、経常利益 94億円 EPS 70.2円 ce

□2021年6月2Q 売上高 249億円、経常利益 25億円 EPS 17.0円 

□2021年9月3Q 売上高 436億円、経常利益 48億円 EPS 33.8円(10/26)

 

2021年6月中間期の売上高は前年同期比54.6%減の249億円、経常利益は80.8%減の19.3億円となり、減収減益となったほか計画にも届きませんでした。主力の分譲事業については、大和高田駅(186戸/全205戸)、千里青山台(46戸/全152戸)、西明石(77戸全て)、千里古江台(45戸/全71戸)など445戸を引き渡し概ね前年並みとなりました。他方、分譲事業以外については、前年のREITや中電不動産へのウェアハウジング売却(計200億円)の剥落影響が大きく、今上期は福岡県古賀市土地の売却等に留まったため、全社業績を大きく押し下げています。

 

2021年12月期の通期見通しは期初のものを据え置いており、売上高が前期比3.5%増の800億円、経常利益は15.8%減の94億円を予想しています。分譲事業については、下期に引渡が本格化する千里青山台(残106戸/全152戸)をはじめ、千里古江台(残26戸/全71戸)など通期で1,062戸を引き渡す計画ですが、8月末時点の契約率は86.9%に達しています。一方、分譲事業以外については、8月に傘下の上場REITがPOを実施し、当社からは熊本のシュロアモール長嶺46億円、廿日市のフジグランナタリー39.5億円、ヤマダ電機札幌白石店13億円など計120億円分の物件を拠出したため、3Qに纏まった売却益が計上されています。なお3Q決算は既に開示済であり、期末にかけてウェアハウジング等で調整するものとみられますが、未達可能性もありそうです。


当社は2018年より中部電力(9502)の持分法適用会社でしたが、この4月に同社から三者割当増資で204億円(@769円)の追加出資を受けて、連結子会社(50.3%)に収まっています。この追加出資のタイミングで進行中だった3か年中計もやや減額気味にロールさせており、今期を初年度とする新中計では、3年後の2023年12月期の業績定量目標として、売上高773→1,100億円(CAGR12%)、営業利益122→160億円(CAGR10%)を掲げ直しています。

 

新中計の具体的な取り組みについては、①賃貸利益割合の増加(14%→26%)、②年間1,200戸供給体制の確立③中電との連携強化、④新規事業等の強化が軸となっています。①は中電からの調達資金を向こう3年間で2,200億円(純額1,900億円)を投じていくほか、傘下REITに対しても2月・8月のPO実施想定時期に売却していくものの、ブックで保有する物件を増やしていく方針です。また、②・③はバイイングパワーの増加に加えて、中電遊休地の活用案件や中部エリアの深耕を図ります。④は、物流施設の開発や、麻布の「了聞」という納骨堂事業に加え、この9月にはリノベーション賃貸マンション等を主要クライテリアとする私募ファンド(SPC)を当初7物件で組成しており、後継の私募REITに繋げる予定となっています。

 

また、この10月には大阪を中心に不動産賃貸業を営むピカソ(年商60億円/経常益16億円)、優木産業(年商30億円/経常益4億円)とそのグループ会社6社の全株式を総額300億円弱で取得しています。いわゆる不動産MAであり、ピカソらは関西を中心に賃貸レジやオフィスビル等を数多く所有しているものの、不動産時価評価に基づく株式取得とみられ、240億円近いのれん代の発生が想定されます。そのため、中計①で掲げる賃貸比率増加こそ手っ取り早く期待出来るものの、仮にのれん代を20年で償却したとしても、P/L寄与は殆ど期待出来ず、あくまで中長期的な“種蒔き”という捉え方の方がよさそうです。

 

財務面については、中電子会社入りにともない金利が0.8%水準まで削減出来ており、4月の三者割増資により自己資本比率は31.9%にまで回復しています。他方、今次中計期間ではレバを活用した事業拡大を企図しており、最終的には同23%水準まで借金を膨らます計画とされています。他方、株主還元に関しては「減配しない」累進的配当政策を一度取り下げた後で再度復活させた経緯があるため、向こう3年間は年38円+が維持される公算が高いとみられます。

 

*参考記事① 2021-05-08 759円 BY(コンビクション)

【8892】日本エスコン/4月より中部電力の連結子会社化、累進的配当政策が復活。

 

*参考記事② 2020-11-18 886円 OP

【8892】日本エスコン/今期業績は上振れ圏も、傘下REITの株価低迷が悩みのタネ。

 

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