【8892】日本エスコン/今期業績は上振れ圏も、傘下REITの株価低迷が悩みのタネ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8892】日本エスコン (東証1部)  OP

現在値 886円/100株 PER7.13  PBR1.59 6月株主優待 12月配当

京阪神を中心に分譲マンションを展開。09年に事業再生ADRを終結。
配当金は12月末一括の38円の配当で、配当利回りは4.29%となります。

日本エスコンは株主優待制度を導入しており、10単元以上を1年以上保有する6月末株主に対して、1,000円相当のクオカードを進呈しておりますので、配当と合計した配当優待利回りは約4.40%となります。また2年以上の継続保有で進呈額が3,000円となる長期優遇制度も導入しており、その場合の同利回りは約4.62%となります(※いずれも10単元保有時)。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 343億円、経常利益 35億円 EPS 58.7円
■2017年12月期 売上高 447億円、経常利益 59億円 EPS 81.7円 

■2018年12月期 売上高 543億円、経常利益 104億円 EPS 105.9円 

■2019年12月期 売上高 721億円、経常利益 118億円 EPS 119.1円 

■2020年12月期 売上高 860億円、経常利益 123億円 EPS 124.1円 ce
□2020年6月2Q 売上高 549億円、経常利益 100億円 EPS 102.1円 

□2020年9月3Q 売上高 649億円、経常利益 104億円 EPS 105.8円(10/29)


2020年6月中間期の売上高は前年同期比81.8%増の549億円、経常利益は同62.5%増の100億円となり、期初時点から大幅な増収増益を予想していたものの、それを上回る進捗となりました。主力の分譲事業については、高槻宮野町(88戸/全99戸)、豊田(62戸/全63戸)、甲東園(全49戸/49戸)他を引渡し、通期計画の半分以上となる437戸の売却を完了しました。また、分譲事業以外では、傘下REITが本年1月のPOで約52億円分のエクイティを調達し、当社は大和高田商業(41億円)、美木多商業(35億円)、堺市大仙底地(27億円)と計103億円分の物件拠出を実施したほか、同時にこれら物件の持分を中電不動産にも売却したため、これら延べ200億円分の売却が大きく寄与する格好で上期業績が大きく噴き上がる格好となりました。


なお2020年12月期の通期予算については、期初のものを据え置いており、売上高が前期比19.3%増となる860億円、経常利益は4.1%増の123億円を引き続き予想しています。主力の分譲事業については、上期残の西宮北口(46戸/全94戸)、姫路(26戸/全67戸)など計157戸にくわえ、美しが丘(全90戸)や森ノ宮(全45戸)といった下期竣工物件を加えて、通期で765戸を引き渡す計画です。一方、分譲事業以外については、下期は平塚松風町土地しか名有り案件がなく、今期売却を予定していた博多中州ホテルも新型肺炎の影響で翌期以降に送っています。そのため、10月末に開示済の3Qも高進捗であるものの、既に数字を抑えにかかっているものとみられ、通期上振れ着地でも幅は限定的に留まるものとみられます。


前期は3ヵ年中計の最終年度であり、当初計画で売上高600億円(CAGR20%)、経常利益は72億円(CAGR26%)を目指していたものの、1年前倒達成したため数字を積み増しており、終わってみれば売上高721億円(CAGR28%)、経常利益118億円(CAGR50%)と破竹の高成長を実現しました。そのため、今期を初年度とする新中計では、3年後の2022年12月期の業績定量目標として、売上高721→1,100億円(CAGR15%)、営業利益129→152億円(CAGR5%)を掲げ直しています。

 

中計の具体的な取り組みについては、①事業多角化、②ストック資産の積み上げによる賃貸収入増加③中電との連携強化、④REITの外部成長が事業方針の軸に挙げられています。主力の分譲事業については、本中計期間で年1,200戸程の供給体制の確立を目標としていますが、素地の仕込みについては期初時点において来期分が100%完了、再来期分も50%が完了している状況であり、こちらに関しては順調と言えそうです。

 

一方、傘下REITについては年初に上場後初となる1stPOを成功裏に終えているものの、その公募価格は@124,000円程であり、足許のP/NAV0.93倍前後の株価水準では再度のPOは難しいとみられます。特に今次POのタイミングで中電不動産にほぼ同量の物件をウェアハウジングで受けて貰い、売上を作ってしまった経緯もあるため、来期に2ndPOを実施するためには株価の回復が必須条件となりますが、それを待たずに強行する場合は短期業績が作れる一方でハレーションが避けられないため、その辺の打ち手が目下の最注目事項と言えます。

 

財務面については、中部電力の傘下入りにともない金利が0.9%水準まで削減出来ており、自己資本比率も3割弱まで良化したので、当面の資金繰りには何の問題ないものと考えられます。また、株主還元に関しては「減配しない」累進的配当政策を今般取り下げているものの、今期については配当性向30%をメドに2円増配の年38円配予想を据え置いています。

 

*参考記事① 2020-05-07  731円 OP

【8892】日本エスコン/傘下REITがPO実施で1Q高進捗、通期予算を据置き逃げ切り気配。

 

*参考記事② 2019-04-17 775円 OP

REIT株価堅調で、早くも来期予算に熱視線・日本エスコン(8892)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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