【2914】日本たばこ産業(東証1部) OP
現在値 2,156円/100株 P/E 15.9 P/B 1.46 6月配当 12月配当優待
たばこが事業の中核。M&Aで海外たばこ事業を拡大中。
配当は6月末・12月末の年2回・計130円のため、配当利回りは約6.03%となります。
JTは株主優待制度を導入しており、1年以上単元株を保有する単元株主に対して、2,500円分の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約7.18%となっており、2単元まではこの利回りがほぼ維持されます。
業績を確認していきます。当社はIFRS採用企業となります。
■2017年12月期売上高 21,396億円 営業利益 5,611億円 EPS 219円
■2018年12月期売上高 22,159億円 営業利益 5,649億円 EPS 215円
■2019年12月期売上高 21,756億円 営業利益 5,023億円 EPS 195円
■2020年12月期売上高 20,925億円 営業利益 4,690億円 EPS 174円
■2021年12月期売上高 20,800億円 営業利益 3,630億円 EPS 135円 ce(2/9)
■2021年12月期売上高 21,789億円 営業利益 4,174億円 EPS 156円 cos(5/10)
□2021年3月1Q 売上高 5,473億円 営業利益 1,601億円 EPS 64円(4/30)
□2021年6月2Q 売上高 10,272億円 営業利益 2,570億円 EPS 96円 cos(3/7)
★★★
2020年12月期の売上高は前期比3.8%減の20,925億円、営業利益は同6.6%減の4,690億円となり、直近見通しを上回ったほか、利益もほぼ期初予想水準を奪回して落着しました。国内については、紙巻たばこ(RMC/Ready-Made Cigarettes)が新型肺炎禍による免税需要減少や、趨勢減、シェア下落により同数量が9.0%減となり、2019年の値上げ効果で一部相殺したものの埋めきれなかった格好です。注力中のRRP(RRP/Reduced-Risk Products)については、ややシェアが増加しました。一方、海外はトルコ・ロシアでシェアが落ちたほか、その他新興国で増税やロックダウンを背景に数量減となったものの、フランスやイタリア・UKといった欧州市場のシェア増及び値上げによる単価が力強く発現して為替一定ベースでは16%超の増益となりました。但し、海外については為替が想定超の不利方向に振れたこともあり、財務報告ベースでは横ばい止まりとなりました。
進行期である2021年12月期通期の見通しについては、売上高が前期比0.6%減の20,800億円、営業利益は同22.6%減となる3,630億円と2割の減益を予想しているものの、為替一定ベースでは5.1%増益を予想しています。国内については、RMCは需要趨勢減や値上げ効果により7%の数量減を見込む一方、RRPについては昨年投入した「PloomS2.0」の持続と、下期にかけて新デバイスの投入により数量増が見込まれます。海外については、新型肺炎禍継続による数量減を前提とするほか、為替不利影響を相当程度織り込んでおり、単価増との相殺で微減を見込んでいます。なお、全社でリストラ費用として▲370億円を見込むほか、昨年の虎ノ門本社ビルの売却益▲413億円の剥落があり、こうした一過性要素が主な減益要因となりますが、去る5月10日に開示された1Qによれば大変好調な進捗が確認されるため、上振れ含みとみられます。
注力商品であるRRP「Ploom TECH」は、「iQOS(PM)」「glo(BAT)」ら2強とのシェア差が中々詰まらない状況であり、「iQOS」シミラー品の高温加熱式の新製品の「PloomS」の投入と、後継機である「PloomS2.0」によりシェアは10%強まで一瞬持ち直したものの、足許ベースでは再び1桁のシェアにまで低迷している模様です。今秋にはデバイス・スティックを刷新し、IoTを実装した新製品となる「PloomX」の投入を予定しており、本邦だけでなくロシアへの展開も予定していますが、数量見込みは40億本後半と“控えめ”な想定となっており、RRPは相変わらず成長可視性が低い状況です。
成長を期した次世代品RRPがそのような状況のため、実際は各国の既買収企業の底上げや国内事業のリストラが当面の取組施策になるものとみられ、特に海外は(新型肺炎禍の渡航規制で押し上げられている部分はあるものの、)北欧・中欧やロシアのみならず台湾でも数量増加基調にあるほか、昨年から値上げ効果が高単価品を中心に力強く発現していることから、当面はプライシング施策中心で成長が期待されます。国内については、本年実施の3,000人規模の人員削減によるリストラ効果により、2023年までに年100億円程度の利益改善が見込まれます。
最後にたばこ株で投資論点となる株主還元策ですが、資源配分方針を従来の「配当の安定・継続的な成長」から、「事業投資を最優先に、利益成長と株主還元のバランスを重視」した上で、「配当性向75%」という基準が設けられ、年間配当は154円→130円に24円減じられることとなりました。今年はリストラを実施することもあり、減配はやむない面もありますが、今回新たに自社株取得についての言及があったので、下値では期待したいと思います(目下の業績進捗は順調なので実施されるかは不明)。
*参考記事① 2020-11-19 2,160円 OP
【2914】日本たばこ産業/ダイナミックな値上げ戦略による採算良化で、高配当維持に弾み。
*参考記事② 2020-05-29 2,161円 OP
【2914】日本たばこ産業/足許は仮需で堅調も、新興国の景況感後退が潜在リスク。
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