【2914】日本たばこ産業/足許は仮需で堅調も、新興国の景況感後退が潜在リスク。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2914】日本たばこ産業(東証1部)  OP

現在値 2,161円/100株 PER12.5 PBR1.58 6月配当 12月配当優待

たばこが事業の中核。M&Aで海外たばこ事業を拡大中。
配当は6月末・12月末の年2回・計154円のため、配当利回りは約7.12%となります。

JTは株主優待制度を導入しており、1年以上単元株を保有する単元株主に対して、2,500円分の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約8.28%となっており、2単元まではこの利回りがほぼ維持されます。

業績を確認していきます。当社はIFRS採用企業となります。   

■2016年12月期売上高 21,432億円 営業利益 5,932億円 EPS 235円

■2017年12月期売上高 21,396億円 営業利益 5,611億円 EPS 219円

■2018年12月期売上高 22,159億円 営業利益 5,649億円 EPS 215円

■2019年12月期売上高 21,756億円 営業利益 5,023億円 EPS 195円 

■2020年12月期売上高 21,800億円 営業利益 4,710億円 EPS 171円 ce

■2020年12月期売上高 21,900億円 営業利益 4,783億円 EPS 182円 cos

□2020年3月1Q 売上高 5,196億円 営業利益 1,289億円 EPS 48.6円(4/30)

2019年12月期の売上高は前期比1.8%減の21,756億円、営業利益は同11.1%減の5,023億円となり、期初予想及びコンセンサスを下回って着地しました。国内については、紙巻たばこが趨勢減、シェア減少及び2018年・2019年の増税値上げの仮需剥落による減少影響が大きく、単価上昇効果はあったものの、数量は同7.9%減と大幅減となりました。なお注力中のRRPについてはシェアが微増し10%前後となった模様です。一方、海外についてはバングラディッシュ・ギリシャ・ロシアにおける買収寄与による数量増と値上げで増収したものの、ロシアやイラン及び基軸のドル円も為替不利方向に振れ、それだけで全社営業利益を約850億円押し下げました(為替考慮しない場合は全社で微増益となる)。

 

進行期である2020年12月期通期の予算については、売上高が前期比0.2%増の21,800億円、営業利益は同6.2%減となる4,710億円を予想しています。国内については、値上効果の通期寄与が見込まれるものの、紙巻たばこの趨勢減等を同6%減で見込んでいるほか、RRP「Ploom TECH」の伸びが甘く、デバイス及び周辺アイテムの販売が一巡し、リフィル販売割合増加によるミックス悪化で減収を見込んでいます。海外については、数量減を前提としているものの値上げ効果の通期寄与が大きく、トルコやイランの通貨安と対ドルでの円高という不利方向を一定程度織り込んでなお増益を確保する見通しです。なお、去る4月30日に1Qが開示されており、売上高は前年同期比2.8%増、営業利益は同29.4%減となり、見栄えは悪いものの対予算では想定超で推移しているとみられます。ただこれは新型肺炎による顧客の在庫積み増し影響が大きく、中間まではある程度堅調が続くとみられるものの、3Q以降仮需剥落で急減リスクがあり、未達が濃厚な情勢です。

 

注力中のRRP「Ploom TECH」については依然として「iQOS(PM)」「glo(BAT)」らとの競合が激しく、RRPから再度紙巻に戻る流れの発現など市場自体の伸びの鈍化が懸念材料です。それでもなお当社はPMやBATからシェアを奪うべく、引き続き積極的な販促戦略を展開しているような状況であり、昨年8月より「iQOS」に似た高温加熱式の新製品の「Ploom S」を投入したものの不調であり、年間RRP販売数量は40億本の目標を掲げるものの、2019年は33億本に留まりました(直近の1Qは9億本)。推定シェアも再びやや良化したとみられるものの、足許で9%程度になっているため、紙巻の趨勢減ペースに追いついておらず、紙巻とRRP合算したトータルシェアも落としてしまっている状況であり、画期的な新製品開発・上市でもない限り巻き返すのが難しい状況です。

 

そのため中期的な成長ドライバーとしてはRRPというより、買収した諸外国の成長と、未進出国での更なる買収というグローバル規模拡大戦略が基本となります。ただ相次ぐ海外買収により、新興国の通貨安に苦しめられており、為替レートに大きく振られる構造となってしまっています。また、先進国では拡散が一巡した新型肺炎も、新興国ではこれから本格化する影響も懸念され、罹患者数の増加や所得水準の切り下がりも予想されるため、専らプライシング(値上)効果に頼っている当社としては新たな悩みのタネを抱えることとなりました。他方、翌2021年12月期には本社・虎ノ門JTタワーの売却を予定しているため、推定600億円の譲渡益が営業利益として計上される見通しであり、目先では唯一のポジティブ材料となります。

 

最後にたばこ株で投資論点となる株主還元策ですが、既に当社は配当性向が9割に達していることもあり、配当方針を「安定・継続的な成長」と漠っとしたものとしています。今期の配当予想は増配基調をストップさせて据置の年154円を予想しています。少なくとも据え置いた今期はそのまま配当される可能性が高いとみており、また翌2021年12月期についても既述のとおり本社売却による一過性利益が見込まれるため、減配せずに154円を配当するものと考えています。

 

*参考記事① 2018-11-12 2,848円 OP

ダイベストメント潮流と、配当政策の後退が気掛かり・日本たばこ産業(2914)。

 

*参考記事② 2018-11-12 2,848円 OP

「Ploom TECH」に“全振り”中だが、ESGの潮流が逆風・日本たばこ産業(2914)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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