「Ploom TECH」に“全振り”中だが、ESGの潮流が逆風・日本たばこ産業(2914)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2914】日本たばこ産業(東証1部)  ---

現在値 2,848円/100株 PER13.7 PBR1.92 6月配当優待 12月配当優待

たばこが事業の中核。M&Aで海外たばこ事業を拡大中。
配当は6月末・12月末の年2回・計150円のため、配当利回りは約5.27%となります。

JTは株主優待制度を導入しており、6月末・12月末に単元株を保有する株主に対して、

1,000円分の自社製品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約6.00%となってお

ります。なお、2単元まではこの利回りが維持されます。

業績を確認していきます。当社はIFRS採用となります。   

■2015年12月期売上高 22,528億円 営業利益 5,652億円 EPS 270円 

■2016年12月期売上高 21,432億円 営業利益 5,932億円 EPS 235円

■2017年12月期売上高 21,396億円 営業利益 5,611億円 EPS 219円

■2018年12月期売上高 21,900億円 営業利益 5,320億円 EPS 206円 ce修正

■2018年12月期売上高 21,815億円 営業利益 5,394億円 EPS 213円 Qcos

□2018年6月2Q 売上高 10,752億円 営業利益 3,023億円 EPS 120円
□2018年9月3Q 売上高 16,758億円 営業利益 4,770億円 EPS 185円(10/31)

2018年6月中間期の売上高は前年同期比2.9%増の10,752億円、営業利益は同3.5%減

の3,023億円となり、コンセンサス水準を多少上回って着地しました。国内事業は紙巻

たばこが趨勢減で同13.8%の減少となったものの、会社側の想定よりも緩やかな減少

に留まったことが大きく、シェアについても50bp.伸張し61.5%となりました。注力中の

加熱式たばこ(以下、RRPとする)は市場の伸びが鈍化しているものの、1Q末時点での

シェアは約10%確保しているとみられ、シェアについては会社想定線で進捗しています。

一方の海外事業については、インドネシア・エチオピア・フィリピンにおける買収寄与で

増収したものの、為替が不利方向に振れたため、調整前利益は減益となっています。

 

なお、2018年12月期通期予想については、公表済の3Q時点で修正しており、売上高

が前期比2.4%増の21,900億円、営業利益は同5.2%減の5,320億円へ減額しています。

国内事業については、需要の底堅い紙巻たばこの数量見通しを上方修正したものの、

RRP「Ploom TECH」に関しては期初計画に届かないため、そちらの数量は下方修正

(40億本→28億本)しています。また、海外事業については、プライシング(要は値上げ)

によりトップラインに関しては力強く推移しているものの、新興国を中心に対ドル為替

レートが弱含んでいるため、為替調整前の営業利益ベースでは減額されています。

 

注力中のRRP「Ploom TECH」は、既述のとおりやはり苦戦が続いており、3Q時点での

シェアは2割(出荷ベース)まで伸びたものの、「iQOS(PM)」や「glo(BAT)」との競合が

激しいほか、一旦紙巻からRRPに変えた向きが、再度紙巻に戻る流れの発現などRRP

市場の伸びの鈍化が影を落としています。そこで当社の戦略としては、紙巻きたばこの

趨勢減が想定より遅くなっていることを原資に、そこで確保した超過利益をRRPの拡販

へ“全振り”するという、なりふり構わぬ戦略を採っています。具体的には「Ploom TECH」

のスターターキットを3,000円で買うともう一つついてくるというキャンペーンなどであり、

「glo」がキャンペーン価格で3,000円を僅かに切る水準で販売して、特に「iQOS」に対す

る価格優位性を実現していましたが、当社のこの“オマケでもう1本”キャンペーンにより、

スターターキットに関しては当社の「Ploom TECH」が圧倒的価格優位を保持しています。

 

この他にも他社RRP製品よりも匂いが少ない点を積極的ににアピールしており、飲食店

に対して個別交渉し、全面禁煙店でも当社製品だけは例外的に喫煙可能とする「Ploom

 TECH ONLY」という営業活動を展開しています。既にこの特例飲食店は2,000店強開拓

していることからも、間接販促策にも相当なリソースを割いていることが垣間みられます。

(ビルや商業施設の喫煙スペースの様に、当社が協賛金を拠出しているかもしれません)

 

そして、“たばこ株”で論点となるのが株主還元策ですが、当社は2015年に配当性向を10

%引き上げて50%としているほか、足許の株価下落も相俟って配当利回りは5%強の水準に

達しており、グローバルたばこ株(PMやMO)の配当利回りに遜色ない水準になっています。

が、インカム面はそれで良しとしても、欧州を筆頭格に世界的なESG投資の流れは逆らえ

ないものとなっており、化石燃料関連銘柄や、たばこをはじめとする健康被害のある銘柄

は問答無用で組入れから外す動きが目立ってきており、たばこ株のバリュエーション自体

が世界的にかなり切り下がっているため、外国人持株比率が高い当社は中長期的にその

影響を受けることが確実視されており、「Ploom TECH」が上手くいこうがいくまいが、株価

の上値が想像以上に重くなっていることは留意しなくてはなりません。

 

*参考記事① 2018-04-21 2,892円 ---

グローバル“たばこ株”並みの高還元銘柄へ、日本たばこ産業(2914)。

 

*参考記事② 2017-10-16  3,714円 ---

満を持して「Ploom TECH」の拡販へ、JT(2914)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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