【1518】三井松島ホールディングス(東証一部) NT
現在値 1,366円/100株 P/E 8.88 P/B 0.57 3月配当株主優待
柱は豪州生産、輸入販売など石炭産業。豪以外の権益も拡大。
配当金は3月末一括の年50円配当のため、配当利回りは約3.66%となります。
三井松島産業は株主優待制度を実施しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、6,000円分の自社運営宿泊施設の宿泊割引券と5,000円分のオーダースーツ等お仕立券を進呈しておりますので、宿泊券のみ計算した場合の配当優待利回り(想定)は約8.05%となります。
業績を確認していきます。企業会計基準29号(新収益認識基準)を適用しています。
■2018年3月期 売上高 663億円、営業利益 15.3億円 EPS 98.7円
■2019年3月期 売上高 757億円、営業利益 52.0億円 EPS 116.4円
■2020年3月期 売上高 665億円、営業利益 27.4億円 EPS 172.4円
■2021年3月期 売上高 573億円、営業利益 19.4億円 EPS▲233.4円
■2022年3月期 売上高 399億円、営業利益 30.0億円 EPS 153.7円 ce新収益
□2021年6月1Q 売上高 106億円、営業利益 10.4億円 EPS 65.5円 (8/6)
□2021年9月2Q 売上高 190億円、営業利益 14.0億円 EPS 69.2円 四e
2021年3月期の売上高は前期比13.8%減の573億円、営業利益は同29.0%減の19.4億円となり、大幅な減収減益となったものの、1Q開示の通期見通し比では大きく上振れしました。主力の石炭販売において、新型肺炎禍による経済活動の停滞から石炭の相場の減少基調により一般炭単価が下落(90.9$→71.7$/t)しました。他方、販売数量自体は増加(365万t→380万t)したほか、利益の大半を稼ぐ石炭生産も増産(123万t→130万t)となり、単価減を数量でカバーした格好です。生活関連事業については、なお、非石炭分野である生活関連事業については、花菱の手掛ける衣料品が低調だったものの、昨年4月に買収したケイエムティ、三生電子の上乗せ効果が大きく、全社業績を大きく押し上げています。
進行期である2022年3月期の予算については、売上高が30.5%減の399億円、営業利益は54.1%増の30.0億円と大幅減収・大幅増益を予想していますが、新収益基準移行にともなう減収要素が▲160億円程あるので、実態ベースでは14.8%の増収を見込んでいます。主力の石炭分野については市況価格の上昇を反映し、一般炭単価販売単価の前提を引き上げる(71.7$→85.3$/t)一方、石炭生産は数量減(130万t→127万)と減産予定のため減益の見込みです。他方、生活関連事業については、衣料品の持ち直しのほか、経済活動再開にともなう電子部品の復調により、関連各社で軒並み増収増益を見込んでおり、主力の石炭分野をカバーして全社収益を押し上げます。
進行期は4年中計の2年度目となっており、最終年度である2024年3月期に営業利益55億円を見込んでいます。石炭分野については、8.5億tの埋蔵量が推定される豪州リデル炭鉱において、現行採掘エリアが2024年3月期までに終掘となるため、JVのグレンコア(同社持分が67.5%)とともに新エリアの開発を推進しています。現採掘エリアの2/3程度の採掘量となる見込みではあるものの、既にこの採掘鉱区拡大と採掘期間の延長方針についてグレンコアと大筋合意に至っており、2022年末までの州政府許認可取得、2023年前後からの商業生産開始を予定しています。なお本新鉱区の稼働により、当社持分換算で約130万tを約20年間に渡って確保可能となるため、本件プロジェクトの成否が投資論点のひとつとなりそうです。
但し、石炭事業については目論見通りに生産能力が拡大したとしても、脱炭素の世界的潮流の中で需要が減少し、ひいては石炭価格の長期下落トレンド入りが予想されます。そのため、当社はここ5年程は非石炭分野である生活関連事業でM&Aを連発しており、2020年に高級ペットフード販売のケイエムティ(年商14億円・営業利益3億円)、水晶デバイス用計測器製造販売の三生電子(年商27億円・営業利益1億円)を買収したほか、本年2月には家財向け金具・樹脂製品を手掛けるシステックキョーワ(年商15億円・営業利益4億円)を買収しています。相変わらず確りとした利益体質の会社を集めてはいるものの、既存事業とのシナジーが薄く、純資産も少ない会社をバラバラ買っている傾向は根強く、度重なるMAで積み上げたのれん代は、毎年7億円を償却してなお107億円も残っているような状況であり、潜在的な減損リスクがあります。
なお株主還元については、年50円配当の継続を予想しています。上述のとおりのれん代償却は大きいものの非現金支出であり、予想配当性向は32.5%程度ながら実際は余裕残しとみられます。自己資本比率も40%を超えていることから、足許の堅調な業績や石炭価格を鑑みれば、増配の可能性が高いものと考えています。
*参考記事① 2020-09-05 763円 OP
【1518】三井松島産業/石炭価格下落が痛いが、相次ぐ買収攻勢で損益均衡圏は確保か。
*参考記事② 2018-08-08 1,616円 OP
豪リデル炭鉱の“深耕”が今後の成長を占う、三井松島産業(1518)。
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