【1518】三井松島産業/石炭価格下落が痛いが、相次ぐ買収攻勢で損益均衡圏は確保か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1518】三井松島産業(東証一部) OP

現在値 763円/100株 PER--.- PBR0.31 3月配当株主優待 

柱は豪州生産、輸入販売など石炭産業。豪以外の権益も拡大。 
配当金(実績)は3月末一括の50円配当のため、配当利回りは約6.55%となります。

三井松島産業は株主優待制度を実施しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、6,000円分の自社運営宿泊施設の宿泊割引券と5,000円分のオーダースーツ等お仕立券を進呈しておりますので、宿泊券のみ計算した場合の配当優待利回り(想定)は約14.4%となります。

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 530億円、営業利益 10.2億円 EPS 109.1円

■2018年3月期 売上高 663億円、営業利益 15.3億円 EPS 98.7円

■2019年3月期 売上高 757億円、営業利益 52.0億円 EPS 116.4円 

■2020年3月期 売上高 665億円、営業利益 27.4億円 EPS 172.4円 

■2021年3月期 売上高 545億円、営業利益 2.0億円 EPS 53.8円 ce
□2020年6月1Q 売上高 153億円、営業利益 5.0億円 EPS 108.8円 (8/7)

□2020年9月2Q 売上高 270億円、営業利益 9.0億円 EPS 46.1円 四e

2020年3月期の売上高は前期比12.0%減の665億円、営業利益は同47.3%減の27.4億円となり、期初時点から減収減益を予想していたものの、更に下回る水準で着地しました。石炭販売において、一般炭単価が下落(107.5$→90.9$/t)したほか、数量自体も大幅に減少(427万t→365万t)し、利益の大半を稼ぐ石炭生産についても数量こそ横ばいの123万tを維持したものの、単価下落により利益は前期の6掛け程度に留まりました。生活関連事業については、期初に株式を取得したシュレッダー最大手・明光商会(年商80億円超)が通期で寄与したためセグメントでは大幅増収となったものの、花菱の手掛ける衣料品が低調だったほか、電子部品の受注減少等も響いて減益となりました。


進行期である2021年3月期の予算については、期初時点では非公表でしたが、1Q時点で公表しており、売上高が18.2%減の545億円、営業利益は92.7%減の2.0億円を予想しています。主力の石炭分野については、新型肺炎禍による経済活動の停滞から石炭の相場の減少基調が続く見通しであり、前提となる一般炭単価の販売単価前提を大幅に下方に設定(90.9$→67.4$/t)しています。石炭生産についても、数量自体は123万t→136万tと増産計画であるものの、単価減少の影響を色濃く受けて利益が殆ど残らない見通しです。なお、非石炭分野である生活関連事業については、本年4月に買収したケイエムティ、三生電子(※後述)がフル寄与することもあり微増益を見込んでいるものの、石炭単価大幅安の穴を埋めるには至らず、全社では均衡圏スレスレまで沈む公算です。

 

当社は中長期的な業績の目標値を開示していないものの、主力の石炭分野については、豪州リデル炭鉱の現行採掘エリアが2022年~2023年で終掘となるため、JVのグレンコア(持分67.5%)と新エリアの開発を推進しています。現エリアの2/3程度の採掘量となる見込みではあるものの、年内にも坑内堀りを完了させて商業生産に移行する見通しであり、現行エリアの終掘と新エリアの採掘開始が重なる2年程は生産量が最大1.6倍程度まで大きく伸びる見通しですが、肝心の一般炭単価が暴落しているため、利益貢献はかなり限定的となる公算です。また、当社が30%の権益を有するインドネシアのGDM炭鉱の開発を進めていることからその寄与が期待されますが、採掘に伴う資金調達で持分希薄化が生じるため、当社持分は20%程度までに減少し、そちらの生産持分についても20万tに留まります。


屋台骨の石炭事業がそのような状況のため、生活関連事業においては相変わらずM&Aを連発しており、2020年4月には高級ペットフード販売のケイエムティ(年商14億円・営業利益3億円)、水晶デバイス用計測器製造販売の三生電子(年商27億円・営業利益1億円)を買収し、新規で連結しています。相変わらず安定的な利益が出る会社を選んで買収しているものの、事業シナジーがほぼ無い会社をバラバラ買っている傾向が強く、度重なるMAで積み上げたのれん代は、毎年7億円を償却してなお96億円も残っています。更に前述の2社の分はのれん代未確定のため、100億円超まで膨れ上がる見通しであり、新型肺炎禍で更に減損リスクを膨らませている点が割引要素となります。

 

なお、株主還元については、実績期で50円配当を実施しているものの、今期はなお未定となっています。生活関連事業で積み上がったのれん代と償却はキャッシュアウトしないため、相応の配当余力を残していると思われ、業績が均衡圏でも無配まで転落することは考えずらく、30~40円程度の幅で有配となるものとみています。

 

*参考記事① 2018-08-08  1,616円 OP

豪リデル炭鉱の“深耕”が今後の成長を占う、三井松島産業(1518)。

 

*参考記事② 2018-02-09 1,436円 OP

炭鉱ストで伸び悩むも、非資源強化で“プチ物産化”・三井松島産業(1518)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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