【9375】近鉄エクスプレス/航空貨物運賃の上昇を追い風に、通期で底堅く上振れも。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9375】近鉄エクスプレス(東証一部) OP

現在値 2,179円/100株 PER15.6 PBR1.32 3月配当優待 9月配当優待

国際航空貨物混載大手の一角。国際網充実。15年にシンガポールのAPLLを子会社化。
配当は3月末・9月末の年2回計30円配当のため配当利回りは約1.38%となります。


近鉄エクスプレスは株主優待制度を導入しており、3月末・9月末に単元株以上を保有する株主に対して、500円相当のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約1.83%となります。なお、1年以上保有を継続した場合は1回あたりのクオカードが、4倍の2,000円となりますので、その場合の配当優待利回りは約3.21%までジャンプします。


業績を確認をしていきます。
■2017年3月期 売上高 4,743億円 営業利益 130億円 EPS 62.3円

■2018年3月期 売上高 5,531億円 営業利益 173億円 EPS 97.3円 

■2019年3月期 売上高 5,920億円 営業利益 207億円 EPS 136.9円 

■2020年3月期 売上高 5,445億円 営業利益 197億円 EPS 65.7円

■2021年3月期 売上高 5,160億円 営業利益 190億円 EPS 139円ce修正(8/6)

□2020年6月1Q 売上高 1,404億円 営業利益 79.1億円 EPS 67.9円 (8/6)
□2020年9月2Q 売上高 2,600億円 営業利益 80億円 EPS 55.6円 四e

 

2020年3月月期の売上高は前期比8.0%減の5,445億円、営業利益は同5.2%減の197億円で着地し、減収減益で期初予算には届かなかったものの、中間時点の減額後予算に対しては上回って着地しました。日本の航空輸入はエレキ製品が一服となったほか、輸出も自動車関連が軟調だったため、セグメント利益は2割の減益となりました。また、海外についても軟調となっており、これまで好調だった米州をはじめ欧州やアジア各域・オセアニアなどおしなべてエレキ製品を中心とした取扱数量の減少により、全てのエリアで減収減益となっています。特に南アフリカやベネルクスが不振で大幅減益となったほか、中国では米中貿易摩擦の影響、東南アジアでは数量減による原価上昇が響いて損益が悪化しました。一方、APLL社も同様に数量減となったものの、取引条件改善と人員整理が進み、のれん償却前営業利益率は5%水準にまで更に良化が進みました。


進行期である2021年3月期通期予算については、期初時点では非公表でしたが、1Q時点で公表しており、売上高が5.2%減の5,160億円、営業利益は3.6%減の190億円を予想しています。8月6日の1Qについては、売上高が前年同期比3.6%増の1,404億円、営業利益は同2倍の79.1億円と想定よりかなり高い水準で進捗しています。日本をはじめ、欧州を除いた全域で増益確保となっており、旅客機減便に伴う仕入れ原価上昇を受けたものの、荷主への価格転嫁を進めたことで採算性が一段と良化しました。通期では自動車関連の弱含み継続が予想されるものの、堅調な半導体関連需要による下支え期待や、輸送運賃が1年前から1.5倍~2.0倍に高騰しているとみられる点から、新型肺炎禍からの世界的な荷動き回復傾向により、通期で底堅い数字が見込まれます。

 

今期は3年中計の2年度目となっており、KPIとして取扱数量(航空80万t・海上90万TEU)を掲げるとともに、引き続き事業規模の拡大を最優先に志向し、スケールメリットによる原価低減を狙う戦略となっています。2015年に1400億円にのぼる巨費を投じて買収したAPLLについては、システム統合や取引先との不利な取引条件変更、リストラ等が一巡しており、(足許では南アフリカで大型案件の失注といったマイナス要素はあるものの)、収益貢献の可視性がかなり向上してきている印象です。

 

そのため、長期目標である売上高1兆円までは本体とこのAPLLによるオーガニック成長を軸に到達させる計画であるとみられます。現行中計の業績定量目標値については翌2022年3月期に売上高7,200億円まで伸ばす計画となっているものの、営業総利益率を計画前水準の16.4%で横引きしており、営業利益段階まで試算すると、最終年度で250億円程と試算されます。この利益率は足許で17.6%まで120bps.良化させられているものの、営業利益で250億円という水準はハードルが非常に高く達成は困難と判断されます。(APLLの“のれん償却”が、2036年まで年▲60億円反映されているので留意のこと)。

 

株主還元については、過去数期に渡って配当金が年26円で固定されていましたが、2019年3月期に4円積み増して年30円に増配されました。今期も1Qで年30円の配当予想の据置を公表したものの、長期ビジョンでは“ネット有利子負債ゼロ”という財務改善方針を新たに掲げていることから、もし上振れ着地した場合でも増配についてはほぼ期待出来ないと考えています。

 

*参考記事① 2020-02-22  1,928円 OP

【9375】近鉄エクスプレス/中国変調のわりに底堅いが、財務優先で低還元を志向。

 

*参考記事② 2019-07-23  1,405円 OP

中計は評価可能だが、米中摩擦と低還元がネック・近鉄エクスプレス(9375)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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