【9375】近鉄エクスプレス/中国変調のわりに底堅いが、財務優先で低還元を志向。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9375】近鉄エクスプレス(東証一部) OP

現在値 1,928円/100株 PER19.8 PBR1.15 3月配当優待 9月配当優待

国際航空貨物混載大手の一角。国際網充実。15年にシンガポールのAPLLを子会社化。
配当は3月末・9月末の年2回計30円配当のため配当利回りは約1.56%となります。


近鉄エクスプレスは株主優待制度を導入しており、3月末・9月末に単元株以上を保有する株主に対して、500円相当のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.07%となります。なお、1年以上保有を継続した場合は1回あたりのクオカードが、4倍の2,000円となりますので、その場合の配当優待利回りは約3.63%までジャンプします。


業績を確認をしていきます。
■2016年3月期 売上高 4,205億円 営業利益 153億円 EPS 135円
■2017年3月期 売上高 4,743億円 営業利益 130億円 EPS 62円

■2018年3月期 売上高 5,531億円 営業利益 173億円 EPS 97円 

■2019年3月期 売上高 5,920億円 営業利益 207億円 EPS 136円 

■2020年3月期 売上高 5,450億円 営業利益 185億円 EPS 97円ce修正

□2019年9月2Q 売上高 2,715億円 営業利益 87.5億円 EPS 30円 
□2019年12月3Q 売上高 4,103億円 営業利益 156億円 EPS 92円(2/7)

 

2019年9月中間期の売上高は前年同期比6.8%減の2,715億円、営業利益は同1.1%減の87.5億円となり、減収減益となったもものの、予算水準の2桁減益からは上振れて着地しました。日本の航空輸入はこれまで好調だったエレキ製品が一服したほか、輸出についても半導体製品が軟調だったため、セグメント利益は2桁の減益となりました。また、海外についても軟調となっており、これまで好調だった米州をはじめ欧州やアジア各域・オセアニアなどおしなべてエレキ製品を中心とした取扱数量の減少により、全てのエリアで減収減益となっています。特に南アフリカやベネルクスが不振だったほか、東南アジアでは取扱数量減による直接原価の上昇が響いてスプレッドが潰された形となります。その一方、APLL社はネックとなっていた取引条件の改善や人員整理が一段と進み、のれん償却前営業利益率は5%水準にまで良化が進んだため、全社業績を下支えしました。


なお、2020年3月期通期予算についても減額しており、売上高が7.9%減の5,450億円(期初予:6,200億円)、営業利益は11.0%減の185億円(期初予:220億円)にそれぞれ修正しています。APLLの持分法適用会社であり中国国内の完成車輸送を手掛けるCM-APPLが、中国市場における自動車生産・販売が一段と落ち込みにより低迷しているためその影響を織り込んだほか、その他の全般の影響として米中貿易摩擦及び中国経済の減速等による事業環境の急速な悪化を反映しています。但し、上期中に減額した後で2月7月の3Qで原価率の改善を理由に再増額している経緯があるため、およそ表記数値程度で落着するものと判断されます。

 

今期を初年度とする新中計期間では、KPIとして取扱数量(航空80万t・海上90万TEU)を掲げるとともに、引き続き事業規模の拡大を最優先に志向し、スケールメリットによる原価低減を狙う戦略となっています。2015年に1400億円にのぼる巨費を投じ、“社運を賭けて”APLLを買収しましたが、システム統合や(取引先との不利な)取引条件変更、リストラ等が一巡し、やっと巡航水準にのってきたばかりということもあり、長期目標である売上高1兆円まではひとまずオーガニック成長を軸に到達させる計画であるとみられます。なお、新中計の目標値については3年後の2022年3月期に売上高7,200億円まで伸ばす計画となっているものの、営業総利益率を直近実績水準である16.4%で横引きしており、営業利益段階まで試算すると、最終年度で250億円程と計算されます。

(※APLLの“のれん償却”が、2036年まで年▲60億円反映されているので留意のこと)

 

株主還元については、過去増配基調にあったものの、直近3期に渡って配当金が年26円で固定されていましたが、前期4円積み増して年30円に増配されました。これでも配当性向は20%~21%に過ぎないものの、当社は元より配当性向どころかROEの目標水準すら掲げておらず、それどころか今般開示の長期ビジョンでは“ネット有利子負債ゼロ”を新たに掲げてしまっているため、継続的な増配や自社株買いはほぼ期待出来ないと考えた方が良いと思われます。

 

*参考記事① 2019-07-23  1,405円 OP

中計は評価可能だが、米中摩擦と低還元がネック・近鉄エクスプレス(9375)。

 

*参考記事② 2019-01-08  1,618円 OP

APLL想定超で巻き返す、増配基調の奪回に改めて期待・近鉄エクスプレス(9375)。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

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