【3612】ワールド/相次ぐリストラと永久劣後ローンで“筋肉質化”も、収益改善道のり険しい。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3612】ワールド(東証一部) OP

現在値 1,417円/100株 P/E 13.6  P/B 0.60  3月配当優待 9月配当優待

総合アパレル大手。SCから百貨店まで展開。構造改革進め18年再上場。MA積極化。
配当金は年31円のため、配当利回りは約2.19%となります。

ワールドは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で半年以上保有を継続する単元株主に対して、1,500円分の商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.30%となります(なお3単元保有時は優待が5,000円分となるため、利回りが上昇します)。


業績を確認していきます。IFRS基準となります。

■2018年3月期 売上高 2,458億円、営業利益 132億円 EPS 373円 

■2019年3月期 売上高 2,498億円、営業利益 148億円 EPS 354円 

■2020年3月期 売上高 2,362億円、営業利益 123億円 EPS 241円 

■2021年3月期 売上高 1,803億円、営業利益▲216億円 EPS▲511円

■2022年3月期 売上高 1,964億円、営業利益 63.5億円 EPS 89.0円 ce
□2021年6月1Q 売上高 405億円、営業利益 19.4億円 EPS 38.8円(8/4) 

□2021年9月2Q 売上高 934億円、営業利益 0.9億円 EPS▲10.9円 ce


2021年3月期の売上高は前期比23.7%減の1,803億円、営業利益は同赤転の▲216億円となり、対前期・対予算で壊滅的な減収減益となりました。主力のブランド事業については、百貨店向けML業態(UNTITLED、INDIVI等)、SC向けMU業態(SHOO・LA・RUE、THE SHOP TK等)ともに新型肺炎の影響を強く受け、下期こそ休業店舗が無くなったものの、既存店売上高は通期68.1%(上期56.8%・下期79.1%)と低水準に留まりました。また、EC及びサイト構築・運用を手掛けるデジタル事業についてもシステム投資先行で赤字が拡大したものの、生産・サプライチェーン・販売代行のプラットフォーム(PF)事業については医療用ガウン等の取扱増等により増益を確保しています。

 

進行期である2022年3月期の通期予算については、売上高が8.9%増の1,964億円、営業利益は黒転の63.5億円を予想しています。前提となる既存店売上高は新型肺炎禍前の2020年3月期比82.7%の水準を想定しており、同時に不採算店の撤退を更に進め、展開店舗数も純減374店と実績期を更に67店上回る閉鎖を見込んでいます。他方、EC売上については在庫消化のための値引き乱発の戻りもあり、2021年3月期比で122.3%と2割超の伸びを見込んでいます。然しながら、期初予算策定時点では長期かつ広範な営業停止を見込んでおらず、足許の緊急事態宣言の再発出は想定外であり、8月既開示の1Qこそ数字が仕上がったものの、対通期予算では大幅なビハインドで進捗しているとみられます。

 

当社は昨年8月に大規模リストラを公表しており、200人の希望退職にくわえ、「HusHusH」「3can4on」「aquagirl」「OZOC」「anatelier」の5ブランドの撤退と214店の閉鎖、その他不採算店込みで全社合計358店(総店舗数2,460店の約15%)を閉鎖を明らかにしていました。これにくわえ、本年2月には追加のリストラ策として「JET」「SunaUna」など5ブランドの追加撤退と104店の追加閉鎖、「CORDIER」等の他会社移管を発表したほか、40歳以上グループ社員100人に対する希望退職を募集し、実際に125人が応募しています。なお、これら一連の構造改革関連費用は終わった期に▲76億円を計上済のため、進行期より年49億円の損益改善効果が見込まれます。

 

今後については、アパレルの展開ブランドを売れ筋のみに大幅に絞り込んだことによる採算性向上が見込まれるほか、新生活様式で好調を維持するライフスタイルブランドである「212 KITCHEN STORE(調理器具)」や、「one's terrace(雑貨)」の増床・大型化を図る計画です。また、ゴードンブラザーズと合弁のオフプライスショップ「&Bridge」の展開による効率的な在庫削減や、「ラクサス」によるシェアリングビジネスの開始など、従来型の製造・販売業以外の取組に注力し、グループチェーン全体としての採算性向上を図っています。

 

他方、財務については、2018年の再上場時に公募と売出で約400億円(@2,900円)を調達していたことが奏功しています。この400億円については、利払いの重いDBJのA種優先株式の償還に60億円消化したものの、残り分をEC等システム投資に100億円を振り向けるとともに、同業種および異業種のMAと投資に200億円を突っ込む計画でしたが、全て使い終わる前に新型肺炎禍が本格化したため、ある程度の手許現金を残すことが出来ているとみられます。また、3月にはメガ3行に対して150億円の永久劣後ローンによる調達を実施しており、金利が割高ではあるものの全額資本認定されることから、自己資本比率は32.0%、D/Eレシオ1.00倍と健全な水準をキープしています。

 

かような財務的背景もあり、相次ぐリストラを実施した2021年3月期こそ無配に転落したものの、進行期については配当性向30%基準で年31円の復配を予想しているような状況ですが、上述のとおり業績動向が不透明なことから、再度無配といったこともあり得るかと思います。

 

*参考記事① 2020-08-29  1,622円 OP

【3612】ワールド/再上場からの大リストラ敢行も、株主還元コミットは強い。

 

*参考記事① 2020-02-07 2,691円 OP

【3612】ワールド/暖冬で重衣料鈍いが、アパレル他社より健闘。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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