【3612】ワールド/再上場からの大リストラ敢行も、株主還元コミットは強い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3612】ワールド(東証一部) OP

現在値 1,622円/100株 PER--.- PBR0.69 3月配当優待 9月配当優待

総合アパレル大手。SCから百貨店まで展開。構造改革進め18年再上場。MA積極化。
配当金は年2回・合計59円のため、配当利回りは約3.64%となります。

ワールドは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で半年以上保有を継続する単元株主に対して、1,500円分の商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.48%となります(なお3単元保有時は優待が5,000円分となるため、利回りが上昇します)。


業績を確認していきます。IFRS基準となります。

■2018年3月期 売上高 2,458億円、営業利益 132億円 EPS 373円 

■2019年3月期 売上高 2,498億円、営業利益 148億円 EPS 354円 

■2020年3月期 売上高 2,362億円、営業利益 123億円 EPS 241円 

■2021年3月期 売上高 1,992億円、営業利益▲67億円 EPS▲181円 ce修正(8/5)
□2020年6月1Q 売上高 329億円、営業利益▲31億円 EPS▲72.2円(8/5) 

□2020年9月2Q 売上高 679億円、営業利益▲177億円 EPS▲408円 ce修正(8/5)


2020年3月期の売上高は前期比5.4%増の2,362億円、営業利益は同16.9%減の123億円となり、中間時点で一度増額したものの、最終的には期初予算をも下回って着地しました。主力のブランド事業については、百貨店向け(UNTITLED、INDIVI等)、SC向け(SHOO・LA・RUE、THE SHOP TK等)ともに上期こそ堅調に推移していたものの、下期の暖冬による冬物セール不発や期末にかけての新型肺炎の影響もあり急失速となりました。また、EC及びサイト構築・運用を手掛けるデジタル事業についてもOriginal買収とシステム投資により赤転したものの、生産・サプライチェーン・販売代行を受託するプラットフォーム(PF)事業については経費削減で増益を確保しています。なお全社利益面については、期中で買収した靴製造の神戸レザークロスの負ののれん特益(24億円)により大きく底上げがなされています。

 

進行期である2021年3月期の通期予算について、期初時点から開示しており、売上高が15.8%減の1,990億円(1Qで1,992億円に修正)、営業利益は赤転の▲71.9億円(1Qで▲67.8億円に修正)を予想しています。既存店売上高の予算前提は2Q期間におよそ70%~80%の水準への戻りを想定するほか、3Qからの下期以降にかけては概ね100%を超え、(新型肺炎禍で前年ハードルが低い)期末にかけて尻上がりとなる想定を置いています。コスト削減策として、4月・5月に社員の一時帰休と役員報酬の減額、新卒採用を凍結したほか、在庫の30%圧縮を掲げています。去る8月5日に公表済の1Qについては、売上高が前年同期比45.0%減の329億円、営業利益は赤転の▲31.8億円で進捗しており、これに伴い中間予算・通期予算も微修正していますが、現時点においては概ね期初の見立ての範囲内で推移しているものと判断されます。

 

去る8月5日に大規模なリストラを公表しており、9月中に200人の希望退職を募集するほか、「HusHusH」「3can4on」「aquagirl」「OZOC」「anatelier」の5ブランドの撤退と214店舗の閉鎖、その他不採算店舗等も含めると合計358店(総店舗数2,460店の約15%)を閉鎖を明らかにしています。このほかマネジメントの更なる給与カットや6割の社員がテレワーク化している現状も踏まえ、事務所床も返す計画であり、通年ベースで36億円程度のコスト削減による収益改善を見込んでいます。なおこの2021年3月期については、構造改革一時費用として57億円の費用増を予想しているものの、此方は直近の修正予算に織り込み済みとなっています。

 

当社は2005年にMBOで非上場化していましたが、一昨年9月に実に13年振りの再上場を果たし、公募と売出で約400億円(@2,900円)を調達しています。IPOで調達した約400億円は、利払いの重いDBJのA種優先株式の償還で60億円分消化したものの、残り分をEC等システム投資に100億円を振り向けるとともに、同業種および異業種のMAと投資に200億円を突っ込む計画でした。実際のところ期初には神戸の高級婦人向けレザー製品(バッグ・靴)を取り扱うヒロフをDBJとのファンドを通じて投資実行したほか、同業種の神戸レザークロス(推定年商80億円・利益は均衡圏)を6億円強で買収するとともに、昨年11月には「ローラ アシュレイ」のサブライセンスを伊藤忠商事から取得するなどMAを積極化させていたものの、まだこの上場時の調達資金が相当程度余っているとみられ、幸いにも高値の公募・売出により新型肺炎禍の財務余力を維持出来た格好となります。

 

かような背景もあり、アパレル各社が軒並み無配転落する中にあって、足許ベースの自己資本比率が3割程度と比較的財務体質が良好な当社は年59円もの配当予想を維持しています。当初20%ほどであった配当性向基準を、上場後3年間で段階的に30%まで引き上げる計画でしたので、その実現については難しいかと考えられますが、会社側の株主還元に対するコミットメントは強く、今期業績がどのような形で落着しても、年59円配が守られる蓋然性が高いものと考えています。

 

*参考記事① 2020-02-07 2,691円 OP

【3612】ワールド/暖冬で重衣料鈍いが、アパレル他社より健闘。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。

 

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