【3612】ワールド/暖冬で重衣料鈍いが、アパレル他社より健闘。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3612】ワールド(東証一部) OP

現在値 2,691円/100株 PER7.3 PBR1.05 3月配当優待 9月配当優待

総合アパレル大手。SCから百貨店まで展開。構造改革進め18年再上場。MA積極化。
配当金は年2回・合計72円のため、配当利回りは約2.68%となります。

ワールドは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末時点で半年以上保有を継続する単元株主に対して、1,500円分の商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.79%となります(なお3単元保有時は優待が5,000円分となるため、利回りが上昇します)。


業績を確認していきます。IFRS基準となります。
■2017年3月期 売上高 2,499億円、営業利益 120億円 EPS 451円 

■2018年3月期 売上高 2,458億円、営業利益 132億円 EPS 373円 

■2019年3月期 売上高 2,498億円、営業利益 148億円 EPS 354円 

■2020年3月期 売上高 2,509億円、営業利益 182億円 EPS 367円 ce修正
□2019年9月2Q 売上高 1,176億円、営業利益 80.1億円 EPS 179円 

□2019年12月3Q 売上高 1,825億円、営業利益 169億円 EPS 356円(2/3) 


2019年9月中間期の売上高は前年同期比0.4%増の1,176億円、営業利益は同34.8%増の80.1億円となり、期初予算を上回って大幅増益での着地しました。主力のブランド事業については、百貨店向け(UNTITLED、INDIVI等)の既存店売上高が99.7%、SC向け(SHOO・LA・RUE、THE SHOP TK等)が同98.0%、その他ライフスタイル雑貨が同99.3%で着地し、期初予算前提の98.4%との比較では堅調に推移しました。一方、EC及びサイト構築・運用を手掛けるデジタル事業、生産・サプライチェーン・販売代行を受託するプラットフォーム(PF)事業については概ね前期並みとなりました。利益面については、IT活用による在庫管理やプライシング精度の向上で利益率が一段と回復し、期中で買収した靴製造の神戸レザークロスの負ののれん特益により大幅増になっています。

 

なお2020年3月期の通期予算についても増額しており、売上高が前期比微増の2,509億円(従予:2,500億円)、営業利益は同23.1%増の182億円(従予:166億円)に修正しています。既存店売上高の予算前提は98.4%に対して、既に開示されている1月月次まで取り込んだ10カ月累計では95.6%に落ち込んでおり、今冬の気温が高かったことで重衣料が伸びず、冬物セールが不発に終わったことが尾を引いているものとみられます。しかしながら、業績修正には上期の上振れ分しか取り込んでおらず、EC売上高成長率も予算セット値9.4%に対して7.6%とまずまずの水準で推移していることや、期中のMAによる上乗せ等もあるため、2/3に開示済の3Qの進捗率も考慮すると修正後予算についても達成可能圏にあると判断しています。

 

当社は2005年にMBOで非上場化していましたが、一昨年9月に実に13年振りの再上場を果たし、公募と売出で約400億円(@2,900円)を調達しています。ただ、当初の想定価格3,360円から、仮条件段階で2,900円~3,200円と下振れた挙句に下限で値決めとなり、初値もその公開価格を5%下回る2,755円に沈みました。更に上場後も株価は直滑降で滑り続け、OA調達見込分の40億円強も取り逃しました。しかしながら、苦戦するアパレル同業他社を尻目に上場後の業績はかなり健闘しており、足許の株価は初値水準をほぼ維持しつつあるほか、昨年高値で@2,920円をマークしたため、公開価格も一時奪回するなど株価は順調に戻り歩調となっています。

 

IPOで調達した約400億円は、利払いの重いDBJのA種優先株式の償還で60億円分消化したものの、残り分をEC等システム投資に100億円を振り向けるとともに、同業種および異業種のMAと投資に200億円を突っ込む計画です。期初には神戸の高級婦人向けレザー製品(バッグ・靴)を取り扱うヒロフをDBJとのファンドを通じて投資実行したほか、同業種の神戸レザークロス(推定年商80億円・利益は均衡圏)を6億円強で買収するとともに、昨年11月にはかつてイオンが展開していながらもライセンス終了により本邦撤退状態となっていた「ローラ アシュレイ」の本邦展開に関するサブライセンスを伊藤忠商事から取得するなどしており、上場後はかなりの勢いでMAや投資による業容拡大が進んでいます。なお、現時点では中長期的な業績の定量目標の開示をしていません。

 

なお株主還元については、利払いが重い優先株がハケたこともあり、20%ほどであった配当性向基準を向こう3年間で段階的に30%まで引き上げる計画であり、今期は調整後で24.0%水準の年69円配当(19円の増配)を見込んでいましたが、足許の好調な業績動向を鑑み年72円へ更に3円増額(22円の増配)していますが、場合によっては再増配の可能性も十分あるものと考えています。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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