【8253】クレディセゾン/UCカード提携解消も、大和証券Gの後ろ盾に期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8253】クレディセゾン (東証一部) NT

 

現在値 1,745円/100株 PER9.4 PBR0.56 3月配当 株主優待なし

流通系カード首位。セゾンカード軸に髙島屋などと提携。みずほ銀と提携解消。


配当は3月末一括の年45円配当のため、配当利回りは約2.58%となります。
クレディセゾンは株主優待制度を実施しておりません(※かつては実施していた)。

業績を確認していきます。 当社は2018年3月期よりIFRSに移行しています。
■2017年3月期 営収益  2,789億円 経常利益 530億円 EPS 258円  参考

■2018年3月期 営収益  2,923億円 事業利益 573億円 EPS 235円 IFRS

■2019年3月期 営収益  3,718億円 事業利益 522億円 EPS 186円 IFRS

■2020年3月期 営収益  3,155億円 事業利益 425億円 EPS 190円 ce修正 IFRS
□2019年9月中 営収益 1,592億円 事業利益 312億円 EPS 115円(11/12)

2019年9月中間期の営業収益は前年同期比5.3%増の1,592億円、事業利益は同15.4%増の312億円となり、期初予想を大きく上回りました。主力のペイメント(所謂カード)事業については、ショッピング取扱高の増加によりトップラインが伸びたほか、原価面でも2017年から稼働しているシステムの償却費平準化や、ICカード更新の前倒し費・人件費・カード募集費といった各種費用の抑制が想定超となりました。また、アトリウムを中心とする不動産事業についても大型売却により事業利益で20億円強の上積みがあったとみられ、全社ベースでは実に100億円を超える上ブレとなりました。なおボトムラインで、キュービタスのシステム減損約63億円を撃ち込んでおり、UCカード株売却にともなう譲渡益みなし配当26億円という浮上要素はあるものの、EPSベースは前年同期比横ばいに留まっています。


なお2020年3月期通期の予算については中間時点(及びその後でも微)修正しており、営業収益は前期比3.5%増の3,155億円(従予:3,222億円)、事業利益は同18.6%増の425億円(従予:UNCH)に修正しています。主力のペイメント事業については、消費増税対策の一環である個店5%・チェーン店2%のポイント還元政策で事業環境としては追い風となる見通しであり、下期にシステム投資費用等の追加計上を予定しているものの、別途上期に上振れした分の貯金があるため事実上据置した会社計画はコンサバと考えられます。なお、10月1日に業務提携をしていたみずほ銀行と長年の提携を解消しており(後述する)、下期からUCカードと子会社の一部事業譲渡により業績が一部剥落するほか、営業外でも保有するパルコ株(7.6%)がJフロントによる完全子会社化にかかったため、持分を全て売却して単体で100億円の売却益を計上見込みですが、パルコ株売却に関してはIFRS連結ではその他包括利益として取り込まれるため、P/Lインパクトは発生しないこととなります。

 

今期は2022年3月期を最終年度とする3年中計の初年度となっており、3年で事業利益522億円→600億円(CAGR4.8%)を目指す計画です。今期単独の業績目標が425億円なので、初年度からいきなり凹んで後から持ち直す計画ですが、これはシステム投資やICカード前倒し更新費用が嵩むことや、前2019年3月期の一過性利益剥落による理由です。推定するに本業のカード事業の成長で年30億円程度をオーガニックに伸ばす計画とみられますが、キャッシュレス潮流の進展に伴ってショッピング取扱高自体こそ増加しているものの、カード業界における当社のシェアは漸減傾向となっているほか、カード競合他社やQRコード決済等との競争が更に激化していくことが容易に予想されるため、比較的保守的に見える表記目標もビジビリティは微妙だと思われます。

 

また、昨年10月には長年包括業務提携関係にあったみずほFGとの提携を解消し、従ってみずほ系のUCカード株(31%)をみずほに譲渡したほか、共同で運営していたプロセッシング子会社のキュービタスの一部事業も分割の上で譲渡しています。そのため、業容スケール自体も縮小してしまっているため、これを成長分野であるアジア事業やノンバンク/不動産ファイナンスだけで埋めるのは客観的にも難しいとみられます。ただこのみずほとの提携解消の後で、大和証券グループ本社との資本業務提携を締結しており、同社は当社株の5.01%を取得し、事業会社としては当社の筆頭株主に躍り出ています。これにより以前より先鞭を付けていた資産運用分野の深化を図るほか、富裕層顧客の取り込みや、ひいては同社の注力分野である不動産分野(REIT、サムティ)での協業が期待出来るため、これについては素直に好材料として捉えて良いと考えています。

 

株主還元については今期も前期据え置きとなる年45円配当を予定しています。ただこの配当予想については、期初の減益予想を前提として開示されたものであり、上振れ圏にある足許の業績動向を鑑みれば年50円配までの上積みは十分にありえると思います。また、今期は上限100億円(6.7%)に及ぶ自社株買いを実行中であるほか、上述のUCカード株式売却やパルコ株式売却により、数百億円単位のキャッシュが追加で手に入ったため、大きな株主還元余資が創出されており、翌期も連続して相当規模の自社株買いを実行しうる可能性があるのは見逃せません。

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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