【7192】日本モーゲージサービス/木材価格高騰や競合激化もあり、中計達成時期を1年先送り。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7192】日本モーゲージサービス(東証1部) OP


現在値 1,002円/100株  P/E 13.7  P/B 2.47 3月配当 株主優待あり 

固定金利住宅ローン「フラット35」貸付が主力。子会社で住宅瑕疵保険、経営支援も。
配当金は3月一括の20円配当のため、配当利回りは2.00%となります。

日本モーゲージサービスは株主優待制度を導入しており、3単元を保有する3月末株主(1年継続保有)に対して、3,000円分のクオカードと4,5000円のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.49%となります。また、3年以上の保有で9,000円分のカタログギフトを追加進呈しているほか、5年以上の保有で9,000円分のカタログギフトと更に1,000円分のクオカードを追加進呈しているため、この場合の配当優待利回りはそれぞれ約5.98%、約6.32%となります(全て3単元保有時の利回りを記載)。

業績を確認していきます。 

■2018年3月期 売上高 62.9億円、営業利益 8.6億円 EPS 41.5円 

■2019年3月期 売上高 62.6億円、営業利益 11.5億円 EPS 57.5円 

■2020年3月期 売上高 71.1億円、営業利益 14.8億円 EPS 72.1円 

■2021年3月期 売上高 71.2億円、営業利益 14.2億円 EPS 65.8円

■2022年3月期 売上高 73.0億円、営業利益 15.0億円 EPS 73.8円 ce
□2021年9月2Q 売上高 36.0億円、営業利益 7.6億円 EPS 37.2円 ce

2021年3月期の売上高は前期比0.2%増の71.2億円、営業利益は同3.9%減の14.2億円となり、減益となったものの期初予算水準を確保しました。主力の住宅金融事業については、新型肺炎禍による「広さ・安さ」を求めるニーズが増加し、当社が苦手とする都市部マンションではなく、得意とする郊外・地方戸建て選好が強まったため、当該セグは同12.8%増収と好伸しました。他方、全国の新築着工件数の多寡が大きく影響する住宅瑕疵保険事業については、消費増税や新型肺炎禍による着工減の影響を色濃く受ける形で、当該セグは同9.2%の減収となりました。なお、出店については代理店を中心に、計画10店に対して8店を出店(7店を閉鎖)しています。


進行期である2022年3月期の予算については、売上高が2.4%増の73.0億円、営業利益は8.5%増の15.0億円を見込んでいます。住宅金融事業については、新型肺炎禍による戸建て選好の継続がやや追い風となるものの、米国の新築着工の急増に端を発した“ウッド・ショック”による木材価格高騰により仕入れ力に乏しい得意先の中小ビルダーが影響を受けるとみられるほか、フラット35の競合激化による代理店への支払手数料増加も重しとなります。他方、住宅瑕疵保険事業については、新築マンションや中古住宅の特有の受注先行から数字の可視性が高く、反転増が見込まれています。なお、会社側はガイダンスは「難易度低め」としているため、ある程度保守的に組まれている模様です。

 

当社は3年中計をローリング形式で公表しており、最終年度の2024年3月期に売上高90億円(CAGR8%)、営業利益20億円(CAGR12%)を目標に据えています。1年前の前回公表時との比較では3年後の目標をそのまま据え置いていることから、事実上の見通し下方修正となっています。成長ドライバーとしては、総額22兆円ともされる住宅ローン市場のうち、「フラット35」を中心としたモーゲージ市場はうち2.3兆円に過ぎず、うち当社シェアは4~5%に留まっているため、これを伸ばすことが第一であるものの、新築着工数自体は漸減しており、構造的には苦しい状況です。

 

また実際のところ、住宅金融事業における展開店舗数は39店とここ3年は横ばいで増えておらず、直近で152店を展開する最大手のアルヒ(7198;旧SBIモーゲージ)に大きく水を開けられて、差が詰まっていないような状況です。そのため、ただでさえ業界後発の当社は、日本で5社のみ認定されている新築住宅瑕疵保険(事業者加盟義務あり)をフック商品に、「フラット35」や住設機器メンテナンス・保証のアカデメイア事業の組み合わせによりクロスセルの強みを生かすのが基本戦略となります。

 

差別化の鍵が工務店向けのクラウドシステムであり、このシステム拡充を主目的に昨年秋にMSワラントによる資金調達20億円分(最大希薄化11.2%、下限@885円)を公表しています。ただ行使期間が2年間と長く、システム拡充以外の使途も曖昧なことから、会社側では高株価を活かして財務良化させ、“泳ぎ幅”を作っておきたかったものと考えられます。なお、目下ではこのMSワラントの行使が4分の1程度進捗しているとみられ、約5億円(@1,070円)の調達を済ませています。


他方株主還元に関しては、据置となる年20円(配当性向27.1%)を予定しています。目下MSワラントで調達を進めている手前もあるため、還元水準感としては妥当かと思われます。

 

*参考記事① 2020-09-07 1,281円*分割修正済 OP

【7192】日本モーゲージサービス/増配公表後のMSワラント発行は消化難、「とりあえず」増資か。

 

*参考記事② 2019-08-22 541円*分割修正済 OP

優待利回り抜群も、成長力は未知数・日本モーゲージサービス(7192)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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