【8697】日本取引所グループ/障害再発防止にリソース割かれるが、総還元性向100%超は評価。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8697】日本取引所グループ (東証1部)  OP

現在値 2,475円/100株 P/E 29.1 P/B 4.12  3月配当株主優待 9月配当

現物は東証、デリバティブは大阪に集約。商品先物取引吸収が課題。
配当金は3月末・9月末の合計52円配当のため、配当利回りは2.10%となります。

日本取引所グループは株主優待制度を実施しており、3月末に100株以上を保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.50%となります。なお、3年間の長期保有により、段階的に4,000円分まで増額されますので、配当優待利回りは最大で約3.71%となります。

業績を確認していきます、当社はIFRS採用となっています。  

■2018年3月期 営業収益 1,207億円、純利益 504億円、EPS 94.2円 

■2019年3月期 営業収益 1,211億円、純利益 490億円、EPS 91.6円 

■2020年3月期 営業収益 1,236億円、純利益 476億円、EPS 88.9円 

■2021年3月期 営業収益 1,333億円、純利益 520億円、EPS 96.0円 

■2022年3月期 営業収益 1,300億円、純利益 660億円、EPS 85.0円 ce
□2021年9月2Q 営業収益 640億円、純利益 240億円、EPS 44.9円 四e

2021年3月期の営業収益は前期比7.8%増の1,333億円、純利益は同7.7%増の520億円となり対前・対予算でも増収減益となりました。主力の取引関連収益は新型肺炎禍からの急速な相場持ち直しにより、1日当たり現物売買代金が3.0兆円→3.5兆円に増加した一方、デリバティブ市場の取引高はTOPIX先物・日経225ラージ等の主要商品が軒並み2桁減となりました。また上場関連収益については、IPO数自体は93社→94社と微増を確保したほか、既上場企業やREITのPOも堅調に推移しました。他方、利益については前期の東京商品取引所(TOCOM)の統合にかかる一過性費用が剥落したほか、イベント実施見送りによる経費減が寄与しています。

進行期である2022年3月期の予算については、営業収益が2.5%減の1,300億円、純利益は11.6%減の460億円を計画しています。予算前提となる各種KPIは、現物売買代金を概ね実績期並みの3.4兆円、デリバティブの取引高(TPX先、225先)を合計約321千単位でそれぞれ置いており、トップラインとしては微減を前提としています。既に開示されている日報・月報等によれば7月時点では概ね見込通りに推移していると解されます。利益面については、期後半に一部手数料の値下げを織り込むほか、システム費用と減価償却費の増加、イベント費用の復活等により続落する見通しです。

 

今期は3年中計の最終年度となっており、本来であればこの期に営業収益1,300億円(CAGR2%)、純利益500億円(UNCH)を目指していましたが、今回公表された予算に即せばトップラインは達成見通しも、利益はそもそも横ばい前提にも拘わらず未達見通しとなります(※会社側では1年前倒しで達成という形で整理している)。そもそも今次中計は定性的な取組が多く、所謂“Today+2”の決済早期化対応や、ETF/Nの普及、アローヘッド改良、コーポレートガバナンスの推進と市場環境整備など直接的な収益増に繋がりにくい内容が多い一方で、システム費用の増加と償却費がのしかかっているほか、特に2020年10月月に発生した取引終日停止の再発防止対応とその徹底が第一優先となりリソースが割かれます。

 

また、ボーダレス化が進む取引市場に対応すべくグローバル戦略の一環として2019年10月には東京商品取引所買収に総額55億円を投じ、完全子会社化しています。主要商品先物である、貴金属・ゴム・農産物先物を傘下の大証へと移し、株式デリバ・商品の総合取引所へ変更することで、大証を総合取引所として育てていく方針です。今後は祝日取引の導入による取引時間の拡大や、証券・商品の税制一本化を睨み業容の拡大拡大が期待されます。また、メインの東証の方でもarrownetグローバルコネクトによる海外投資家のアクセス向上や、海外取引所とのETF相互連携を進め、海外マネーの取り込みを図り中長期の成長ドライバーとする方針です。


株主還元については、従前通りの配当性向60%基準を維持しており、今期は記念配当の10円の剥落と減益予想による普通減配6円により、年52円配当を見込んでいます。他方、10月まで200億円(3.7%)規模の自社株買い枠を設定しており、これは2016年の125億円、2017年の75億円を大きく上回る相応の買い入れ量であることから、株主還元については十分満足のいく水準であると判断しています(※計算上の総還元性向予想は105%程度)。

 

*参考記事① 2020-07-15 2,593円 OP

【8697】日本取引所グループ/今月にも大証を総合取引所化するも、収益貢献まだ先。 

 

*参考記事② 2019-08-08 1,951円 NT

東京商品取引所のTOB効果発現は遠い先、日本取引所グループ(8697)。

 

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