【8697】日本取引所グループ/今月にも大証を総合取引所化するも、収益貢献まだ先。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8697】日本取引所グループ (東証1部)  OP

現在値 2,593円/100株 PER32.6 PBR4.66  3月配当株主優待 9月配当

現物は東証、デリバティブは大阪に集約。商品先物取引吸収が課題。
配当金は3月末・9月末の合計48円配当のため、配当利回りは1.85%となります。

日本取引所グループは株主優待制度を実施しており、3月末に100株以上を保有する株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.23%となります。なお、3年間の長期保有により、段階的に4,000円分まで増額されますので、配当優待利回りは最大で約3.39%となります。

業績を確認していきます、当社はIFRS採用となっています。  
■2017年3月期 営業収益 1,078億円、純利益 421億円、EPS 77.0円 

■2018年3月期 営業収益 1,207億円、純利益 504億円、EPS 94.2円 

■2019年3月期 営業収益 1,211億円、純利益 490億円、EPS 91.6円 

■2020年3月期 営業収益 1,236億円、純利益 476億円、EPS 88.9円 

■2021年3月期 営業収益 1,215億円、純利益 425億円、EPS 79.4円 ce
□2020年9月2Q 営業収益 580億円、純利益 320億円、EPS 40.3円 四e

2020年3月期の営業収益は前期比2.1%増の1,236億円、純利益は同2.4%増の483億円となり、増収減益となったものの、期初予算比では増収増益となりました。主力の取引関連収益は、1日当たり現物売買代金が新興市場の取引低迷の影響もあり、3.3兆円→3.0兆円に減少したことにより続落となりました。一方、デリバティブ市場の取引高は、年明けからの新型肺炎影響による相場変動で取引高が顕著に増加し、TOPIX先物・日経225mini等の主要商品が軒並み2桁増となりました。また上場関連収益については、IPO数自体は103社→94社に減少したものの、年間上場料の増加でカバーしました。なお、利益については東京商品取引所(TOCOM)の統合にかかる一過性費用の計上等があったため、減益となっています。

進行期である2021年3月期の予算については、営業収益が1.8%減の1,215億円、純利益は10.1%減の621億円を計画しています。予算前提となる各種KPIは、現物売買代金を実績期並みの3.0兆円、デリバティブの取引高を約4.0億単位でそれぞれ置いており、トップラインとしては概ね横ばい前提としていますが、既に開示されている日報・月報等によれば7月時点では概ね見込通りに推移していると考えられます。一方、利益面については、昨年10月に統合したTOCOMの費用が通年でマイナス寄与するほか、本年7月より商品デリバティブを大阪取引所に移管することによるシステム費用の増加が主因で続落となる見通しです。

 

今期は3年中計の2年度目となっており、翌2022年3月期に営業収益1,300億円(CAGR2%)、純利益500億円(UNCH)を目指しています。前回3年中計は純利益目標値を無事にクリアしましたが、今次3年中計は業績目標をほぼ横引き水準で置いているため、数値的な見所は全くない内容となっています。定性内容の取組がメインとなっており、(T+2)に代表される決済早期化対応や、ETF(N)の普及、アローヘッド改良、コーポレートガバナンスの推進と市場環境整備など直接的な収益増に繋がりにくい内容が多く、システム費用ばかりが重くのしかかる見通しです。

 

昨年10月には東京商品取引所(TOCOM)のTOBに総額55億円を投じ、完全子会社化しています。貴金属先物、ゴム先物、農産物先物を大証へと移管し、この7月末にも大証を株式・商品の総合取引所に変貌させる計画となっています。TOCOMは赤字経営が続いていましたが、今般の主要商品先物の大証統合により、デリバティブ市場としての大証の厚みが増すほか、今後は祝日取引等を導入し、世界の他取引市場に対抗していく方針です。当面はシステム費用と償却が先行するため利益貢献は僅少とみられますが、取引時間の拡大や証券・商品の税制一本化が進めば中長期的なアップサイドがあろうかと考えています。


株主還元については、従前通りの配当性向60%基準を維持しており、今期は4円減配となる年48円配当を見込んでいます。なお、新型肺炎で苦しむ上場他企業に配慮したのか、今期は例年行われている特別配当や自社株買いの公表は見送られているため、表記配当だけの株主還元に留まる可能性も高そうです。

 

*参考記事① 2019-08-08 1,951円 NT

東京商品取引所のTOB効果発現は遠い先、日本取引所グループ(8697)。

 

*参考記事② 2017-06-23  1,991円 NT

すべてが市況次第も、100%還元水準に到達・日本取引所グループ(8697)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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