東京商品取引所のTOB効果発現は遠い先、日本取引所グループ(8697)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8697】日本取引所グループ (東証1部)  OP

現在値 1,951円/100株 PER18.5 PBR3.12  3月配当株主優待 9月配当

現物は東証、デリバティブは大阪に集約。商品先物取引吸収が課題。
配当金は3月末・9月末の合計52円配当のため、配当利回りは3.27%となります。

日本取引所グループは株主優待制度を実施しており、3月末に100株以上を保有する株

主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.17%

となります。なお、3年間の長期保有により、段階的に4,000円分まで増額されますので、

配当優待利回りは最大で約4.71%となります。

業績を確認していきます、当社はIFRS採用となっています。  
■2016年3月期 営業収益 1,114億円、純利益 448億円、EPS 81.7円 
■2017年3月期 営業収益 1,078億円、純利益 421億円、EPS 77.0円 

■2018年3月期 営業収益 1,207億円、純利益 504億円、EPS 94.2円 

■2019年3月期 営業収益 1,211億円、純利益 490億円、EPS 91.6円 

■2020年3月期 営業収益 1,220億円、純利益 464億円、EPS 85.8円 ce

□2019年6月1Q 営業収益 290億円、純利益 107億円、EPS 20.0円(7/30)
□2019年9月2Q 営業収益 600億円、純利益 239億円、EPS 44.6円 四e

2019年3月期の営業収益は前期比0.4%減の1,211億円、純利益は同2.8%減の490億円と

なり、営業収益は予算比下振れ、利益は同上振れとなりました。主力の取引関連収益は

立会外を含めた全市場1日当たり現物売買代金が、新興市場の取引低迷の影響もあり、

3.4→3.3兆円に減少したことにより反落となりました。また、デリバティブ市場の取引高は

まずまずであったものの、日経225miniの構成比が増えたため、現物市場同様に収益が

伸び悩みました。上場関連収益についても、IPO数自体は83→103社に増加したものの、

新株発行が少なかったほか、全社費用として新精算システムや、国債決済短縮化(T+1)

のためのシステム費用が嵩んだため、全社では予算通りの減益着地となっています。

進行期である2020年3月期の予算については、営業収益が0.7%増の1,220億円、純利益

は6.2%減の460億円を計画しています。この予算の前提となる各種KPIは、現物売買代金

を実績期並みの3.3兆円、デリバティブの取引高を3.1→3.2億単位でそれぞれ置いており、

トップラインとしては概ね横ばいを想定しています。この一方、利益面については、株式等

の決済短縮化(T+2)を7月に予定していることもあり、そのシステム投資と償却費が高水準

で留まるため、連続で減益となる見通しです。なお、去る7月30日に1Q決算が開示されて

いますが、株式市場の売買代金の低迷にともない、進捗はさえない状況となっています。

 

今期は新3年中計の初年度となっており、2022年3月期に営業収益1,300億円(CAGR2%)、

純利益500億円(UNCH)を目指しています。前回3年中計は純利益目標値を無事にクリア

しましたが、今回の新3年中計は業績目標をほぼ現状横引きの水準で置いているため、

数値的な見所が全くない内容となっています。基本的に、新中計期間は定性内容重視の

取り組みがメインとなっており、既述の(T+2)に代表される決済早期化対応や、ETF(N)の

普及、アローヘッドの改良、コーポレートガバナンスの推進と市場環境整備など直接的

な収益増に繋がりにくい内容が多く、システム費用ばかりがのしかかる見通しです。

 

ただそういった中でも、7月30日に、東京商品取引所(TOCOM)のTOBを公表しており、

総額55億円を投じ、10月にも完全子会社化する予定となっています。早ければ2021年

3月期にもJPXを株式・商品の総合取引所に変貌させる計画ですが、このTOCOM自体

は商品市場のシュリンクと先物取引会社の減少により、営業収益で約30億円、純利益

ベースでは赤字基調が定着しているような状況であるため、単純な数字の上乗せすら

期待できない案件となっており、中長期的な成長原資としてみるのは難しい状況です。


なお、株主還元については、従前通りの配当性向60%基準を継続しており、今期は18円

減配となる年52円配当を見込んでいます。一応、今回の中計でもROE15%を目標として

掲げてはいるものの、既に足許水準で17%に達しているほか、2017年3月期及び2018年

3月期で200億円も自社株買いをしてしまっているので、今後もシステムへの投資資金が

要ることを踏まえると、これ以上の還元は望み薄かと思われます。

 

*参考記事① 2017-06-23  1,991円 NT

すべてが市況次第も、100%還元水準に到達・日本取引所グループ(8697)。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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