【7192】日本モーゲージサービス/増配公表後のMSワラント発行は消化難、「とりあえず」増資か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7192】日本モーゲージサービス(東証1部) OP


現在値 1,281円/100株 PER19.7 PBR3.83 3月配当 株主優待あり 

固定金利住宅ローン「フラット35」貸付が主力。子会社で住宅瑕疵保険、経営支援も。
配当金は3月一括の20円配当のため、配当利回りは1.56%となります。

日本モーゲージサービスは株主優待制度を導入しており、3単元株を保有する3月末株主(1年継続保有)に対して、3,000円分のクオカードと4,5000円のカタログギフトを進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.51%となります。また、3年以上の保有で9,000円分のカタログギフトを追加進呈しているほか、5年以上の保有で9,000円分のカタログギフトと更に1,000円分のクオカードを追加進呈しているため、この場合の配当優待利回りはそれぞれ約4.68%、約4.94%となります(全て3単元保有時の利回りを記載)。

業績を確認していきます。 

■2017年3月期 売上高 58.6億円、営業利益 8.0億円 EPS 43.7円 

■2018年3月期 売上高 62.9億円、営業利益 8.6億円 EPS 41.5円 

■2019年3月期 売上高 62.6億円、営業利益 11.5億円 EPS 57.5円 

■2020年3月期 売上高 71.7億円、営業利益 14.8億円 EPS 72.1円 

■2021年3月期 売上高 70.2億円、営業利益 14.1億円 EPS 64.6円 ce

□2020年6月1Q 売上高 17.0億円、営業利益 3.2億円 EPS 30.6円 (8/7)
□2020年9月2Q 売上高 33.4億円、営業利益 6.6億円 EPS 33.0円 ce

2020年3月期の売上高は前期比13.6%増の71.7億円、営業利益は同27.9%増の14.8億円となり、期初予算を大幅に上回って2桁の増収増益で着地しました。主力の住宅金融事業については、住宅新規者の堅調増にくわえ、取得新設支店の開業(計画10店に対して実績は9店)による実行高の増加や、フラット併用型プロパー向け新商品等の取扱開始が本格寄与し、順調に業容が拡大しました。また前期伸び悩んだ住宅瑕疵保険事業についても、住宅地盤保証との抱き合わせ販売が堅調に推移し、当該セグも増収増益を確保しました。一方、構成比は小さいものの、住宅関連ソリューションの住宅アカデメイア事業については、売上純額表示への変更を主な理由に減収となっています。


進行期である2021年3月期の予算については、期初時点から予想を公表しており、売上高が1.3%減の70.2億円、営業利益は同4.9%減の14.0億円を見込んでいます。住宅金融事業については、新設支店の開業を実績期並みの10店前後を計画しており、規模の拡大による実行高の増加を見込みます。新型肺炎による住宅需要の鈍化や、建築コストの増加については主に上半期で見込んでおり、下半期には回復する想定を置いていますが、住宅は申込から売上計上までのリードタイムが長く、市況鈍化影響に遅効性がある点は留意する必要がありそうです。なお、去る8月7日に1Q決算が開示されており、売上高は前年同期比10.5%増の17.0億円、営業利益は同15.7%増の3.2億円と好進捗を示しているほか、同時に増配予想を公表しているため、会社側は業績についてはある程度自信があるものと考えています。

 

当社は3年中計をローリング形式で公表しており、最終年度の2023年3月期に売上高90億円(CAGR8%)、営業利益20億円(CAGR11%)を目標に据えています。前回公表時との比較が可能な2022年3月期の業績予想照らせば、トップラインは下方修正しているものの、利益は予想通り進捗していることが確認されます。成長ドライバーとしては、総額20兆円ともされる住宅ローン市場のうち、「フラット35」を中心としたモーゲージ市場はこのうち2~3兆円に過ぎず、更にその内数である当社シェアは4~5%に留まっているため、モーゲージ市場の構成比増加に乗じてシェアを奪いっていくオーガニックな戦略が基本となります。

 

基本的には期初時点で全国48店(直営6店・代理店42店/推定)ある店舗数を、期当たり10店舗ほど増やしていく計画であり、最大手のアルヒ(7198;旧SBIモーゲージ)に大きく水を開けられている首都圏エリアの深耕を図る方針です。後発である当社の差別化の鍵が工務店向けのクラウドシステムであり、このシステムの機能性拡充等を図る目的で9月4日には資金調達も公表しています。内容はみずほ証券を相手先としたMSワラント20億円分(最大希薄化11.2%)であり、市場取引値の92%で転換により調達が進められる見込みです。下限行使価格は@885円であり、行使停止要請可能、かつ、足掛け2年間に渡る調達となるため、想定より時間がかかる可能性もあることから、会社側ではとりあえず株価の高いうちにファイナンスして財務良化させておきたかったところかもしれません(実際のところシステム開発以外の資金使途は、準備金や運転資金などやや曖昧になっています)。


株主還元に関しては、株式分割の絡みもあり2.5円増配して年20円を予定しています。業種柄、自己資本比率が低くなりがちですが、足許では25%台をキープしているほか、このMSワラントの行使進捗にともない次第に良化していくものとみられます。増配公表からの、高コストなMSワラントによる資金調達で資本政策がちぐはぐになっていますが、増配については株主優待縮小のための言い訳作りの側面があったものと考えています。

 

*参考記事① 2019-08-22 541円*分割修正済 OP

優待利回り抜群も、成長力は未知数・日本モーゲージサービス(7192)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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