【7545】西松屋チェーン/新型肺炎禍の“かりそめの好業績”を維持するハードルは高い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7545】西松屋チェーン(東証1部)  NT

現在値 1,505円/100株  P/E 10.2  P/B 1.38 2月配当優待 8月配当優待

ベビー・子供衣料と生活雑貨のロードサイド大型店を全国展開。配当金は2月末・8月末の年2回計23円で、配当利回りは1.53%となります。

西松屋チェーンは株主優待を実施しており、100株を保有する2月末・8月末現在の株主に対して、年2回・1,000円分の株主優待カードを発行しておりますので、配当優待利回りは約2.85%となります。別途、3年以上保有を継続する株主への長期優遇制度があります。

業績を確認していきます。
■2018年2月20日期 売上高 1,373億円、経常利益 71億円 EPS 74.0円

■2019年2月20日期 売上高 1,381億円、経常利益 39億円 EPS 34.1円  

■2020年2月20日期 売上高 1,429億円、経常利益 23億円 EPS 17.3円

■2021年2月20日期 売上高 1,594億円、経常利益 123億円 EPS 133.2円  

■2022年2月20日期 売上高 1,700億円、経常利益 140億円 EPS 147.3円 ce(3/30) 
□2021年8月20日2Q 売上高 850億円、経常利益 70億円 EPS 73.2円 ce


2021年2月期の売上高は前年同期比11.5%増の1,594億円、経常利益は同5.2倍の123億円となり、期中2度の増額修正予算を更に上回る水準で着地しました。緊急事態宣言下の4月・5月は既存店の客数微減となったものの、以降6月からは軒並み客数・単価のみ増加に転じ、通年の既存店売上高(SSS/Same Store Sales)は111.8 %と大増勢となりました。新型肺炎禍であっても乳幼児を連れ出せる“ガラガラ店内”が受け入れられ、紙おむつや粉ミルク、手口ふきといった必需品購入層の獲得に成功したほか、ついで買いによる客単価増が寄与しました。なお出退店に関しては、通年出店計画50~60店(純増20店)に対して36店を出店した一方、S&B推進により退店数も33店まで膨らんだため、純増は3店留まりとなりました。


2022年2月期の通期見通しについては、売上高が6.6%増の1,700億円、経常利益は13.1%増の140億円と2桁増益の継続を見込んでいます。去る5月21日に開示された1Q3ヵ月累計月次SSSは102.3%と現時点では概ね横ばいとなっているものの、直近の5月SSSが94.6%のため、予算ビハインドとみられます。なお出退店については、純増ベースで30~40店を計画しているものの、当社は元より出退店計画については“爪を伸ばす”傾向にあり、大量出店で数字を作る可能性は低いことから注意が必要です。尤も、実績期にかなりの滞留在庫がハケて回転したとみられるため、例年より楽な部分もありそうです。

 

当社は中期的な業績目標値として、4年後の2025年2月期に売上高2,000億円(CAGR7%)、経常利益200億円(CAGR55%)をセットしなおしています。終わった期の業績が経常利益120億円超の水準まで一気にブーストしているものの、これは新型肺炎禍が継続する中で当社店舗の広々とした作り込みがたまたま支持されたという一過性要因が強く、実力ベースの経常利益はなお100億円にも届かないものとみられ、足許の業績伸長モメンタムはかなり割引く必要がありそうです。

 

基本戦略としては、新規出店による外部成長と、PB商品自社開発による利幅確保の二本柱となります。実際に毎期30店程の出店を実行しているものの、多分に“拡張移転”的な色合いを含んでおり、同量の退店も行うため、総店舗数が中々伸びない状況となっています。そのため、トップライン成長は専ら既存店に頼る格好となりますが、今後はワクチン進展により新型肺炎禍が沈静化するとみられるため、自社アプリによる(来店)ポイント制度を導入するなど繋ぎ止め施策の実行を急いでいる状況です。

 

PB商品に関しては、販売店が増えないのでレンジを広げて小学校高学年向け商品の開発を進めています。また、競合のユニクロが子供向けのTシャツ(100~160サイズ)を790~990円で販売しているのに対し、当社はその半額程度となっており、引き続きこの高い価格訴求力の維持を念頭に目下のPB構成比を20%から中長期的に50%水準にまで引き上げていく目論見です。一方、出店立地については、従来のロードサイド型から人口集積度の高い都心型にも振ってきており、錦糸町パルコやヨドバシ錦糸町など従来考えられなかったような立地で大箱展開するなど、そういう点では“ユニクロ化”している面もありそうです。


財務に関しては相変わらずの無借金経営をキープしており、550億円の現金を抱えるチタン級の好財務を誇っているほか、現金とは別で有価証券を80億円弱保有しています。それでも配当については配当性向15.6%の年23円配と物足りない水準となっています。このほか散発的に実施している自社株買いもやはり5億円程度と小規模に留まっているため、この辺の株主還元についてはより一層の拡充が望まれるところではあります。

 

*参考記事① 2020-12-25 1,506円 NT

【7545】西松屋チェーン/12月月次も好調持続で、3度目の増額修正も視野に。

 

*参考記事② 2020-06-13 925円 NT

【7545】西松屋チェーン/新型肺炎による売上耐性高く、予想外の上振れも視野。

 

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