【3708】特種東海製紙/リニア硬直も、保有株売却高水準で株主還元強化に期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3708】特種東海製紙 (東証1部) OP

 

現在値 4,595円/100株 P/E 9.13  P/B 0.88  3月配当優待 9月配当優待

 

特種製紙と東海パルプが統合、特殊紙に強み・独立系。日本製紙と提携。

配当は3月末・9月末の年2回・合計50円配当のため、配当利回りは1.09%となります。

 

特種東海製紙は株主優待制度を導入しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、1,000円分の図書カードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約1.30%となります。なお、3年以上保有する株主に対しては、長期優遇で3,000円相当の自社商品を進呈しておりますので、その場合の配当優待利回りは約1.74%となります。

 

業績を確認していきます。
■2017年3月期 売上高 777億円、営業利益 47.0億円、EPS 258円 

■2018年3月期 売上高 790億円、営業利益 39.3億円、EPS 153円

■2019年3月期 売上高 817億円、営業利益 30.7億円、EPS 303円 

■2020年3月期 売上高 806億円、営業利益 28.7億円、EPS 266円 

■2021年3月期 売上高 760億円、営業利益 18.0億円、EPS 504円 ce修正(11/12) 

□2020年9月中 売上高 366億円、営業利益 8.6億円、EPS 226円

 

2020年9月中間期の売上高は前年同期比8.0%減の366億円、営業利益は同5.2%増の8.6億円となり、期初予想との比較はないものの減収増益となりました。段ボール原紙・クラフト紙等の産業資材部門は日本製紙(3863)との合弁会社への出荷が低調に推移したほか、好採算の特殊素材部門が新型肺炎禍の影響をダイレクトに受け、商業印刷・出版・パッケージ向けの売上が大幅に減少しました。一方、利益面については、原料製紙用古紙や光熱費・燃料の値下がりといった製造原価の減少が効いたほか、ハケ切らなかった在庫に高原価品が残るなどした在庫効果も少なからず寄与し、見かけの増益を確保しました。このほか、水力発電売電事業も順調に推移し、利益を下支えしています。

 

進行期である2021年3月期通期の見通しについては、中間時点で修正しており、売上高が前期比5.7%減の760億円(期予:810億円)、営業利益は同37.3%減の18.0億円(期予:20.0億円)を予想しており、費用前提のドル円為替前提については110円/$、原油前提も65$/B、で見込んでいます。下期も引き続き新型肺炎禍の影響を受ける見通しであり、特に特殊素材部門の主力商品であるファンシーペーパーの低迷が見込まれるほか、衛生意識向上からペーパータオルが絶好調だった生活商品事業についても、ラミネート品等が減少に転じるなどまちまちとなっています。なお、日本製紙との合弁持分が取り込まれる経常利益段階では、同33.2%減の36.0億円と営業利益とおおむね同水準の減益を見込んでいます。

 

中計の状況については、前2020年3月期が3年間の4次中計の最終年度となっており、当初計画では売上高850億円、営業利益55億円を計画していましたが大幅未達となりました。また本来であれば今期から新5次中計が始まる予定でしたが、新型肺炎禍で合理的な算定が出来ないことから公表を延期しています。終わった第4次中計については、主にコスト改善策により旗艦3事業(産業資材、特殊素材、生活商品)の収益性改善が改善したものの、パルプ価格上昇等の原価上昇による影響を大きく受けたほか、本来オーガニックの伸ばすべき部分の新製品分野も想定以下で推移したことが未達の要因であり、多くの課題が残る結果となりました。

 

取組事項としては、“NaSFA”と呼ぶナノテク、偽造防止技術、技術融合、新技術の重点4分野に引き続き注力する方針であり、第4次中計中に完成するも本格上市に至らなかった機能性シート類である非セルロース性シート状物(向こう3年で年商8億円目標)や、合成繊維混抄紙(向こう3年で年商3億円目標)の量産化技術確立と拡販を目指します。また、昨年1月には産廃収集・処分業の駿河サービスを18億円で買収しており、島田工場のボイラで発生した焼却灰活用といった周辺の環境関連領域も伸長させる計画です。


そして当社の隠し玉である、静岡県の北部・日本標高3位の間ノ岳にかかる“井川社有林”(7,400百万坪・山手線内面積の4倍、1895年に購入した簿価は6.3億円)の地下を横断するリニア計画により、上部用地利用の賃料や工事関係者の宿泊料収入等で、約10年に渡って経常利益が年6億円程度押し上げられる見通しです。然しながら営業外収益であるほか、依然として静岡県知事とJR東海の協議が平行線を辿っているような状況から中計には織り込んでおらず、現状では井川蒸留所のネームでご当地ウイスキーの仕込みを始めた程度の取組みに留まっています。

 

なお、財務状況については、手許現金の160億円と保有有価証券140億円で有利子負債300億円をネットしている好財務となっています。そのわりに配当性向は通常25~30%強程度であり、業績悪化が見込まれる今期は25円減配の年50円の配当を見込んでいます。ただ今期も政策保有株式の売却を進めており、直近4.5年間で61億円の売却を実行したほか、今下期に追加で53億円を売却する計画であるため、これらが追加で株主還元に回る公算が高いと考えます。特に自社株買いを含めた総還元性向はこの5年で53%水準に達していることから、少なくとも年75円の据置・復元配はなされるものと考えています。

 

*参考記事① 2018-08-01  4,320円 OP

リニアの賃料は未計上、好財務活かした還元充実に期待・特種東海製紙(3708)。

 

*参考記事② 2017-08-01 4,150円 OP

7,400百万坪の井川社有林は「打ち出の小槌」か、特種東海製紙(3708)。

 

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