【6240】ヤマシンフィルタ/中国市場の出直り急だが、MSワラントの“おかわり”は謎。 | なちゅの市川綜合研究所

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【6240】ヤマシンフィルタ(東証1部) NT

現在値 991円/100株  P/E50.7  P/B3.8 3月配当優待 9月配当優待

建設機械の油圧回路に用いるフィルターで世界首位。産業機器フィルターも。
配当は3月末・9月末の2回・合計6円のため、配当利回りは0.61%となります。

 

ヤマシンフィルタは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末の単元株主に対して、500円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約1.61%となります。

業績は下記の通りとなっております。
■2017年3月期 売上高 100億円、営業利益 9.5億円 EPS 10.3円 

■2018年3月期 売上高 131億円、営業利益 19.1億円 EPS 19.7円 
■2019年3月期 売上高 138億円、営業利益 19.6億円 EPS 20.4円 

■2020年3月期 売上高 126億円、営業利益 7.7億円 EPS 8.8円 

■2021年3月期 売上高 160億円、営業利益 13.0億円 EPS 17.1円 ce修正

□2020年9月中 売上高 65.6億円、営業利益▲0.1億円 EPS▲2.2円

2020年9月中間期の売上高は前年同期比12.9%増の65.6億円、営業利益は同赤転の▲0.1億円となり、予算比は無いものの想定をやや上回る水準で着地したとみられます。主力の建機用フィルタ事業については、国内・北米・アジアともに新型肺炎禍の経済活動の停滞から軒並み低調に推移した一方、注力中の中国に関しては現地建機メーカーに対してリターンフィルタ、燃料用、トランスミッション用フィルタの出荷が好調に推移しました。なお、トップラインが1割程度伸長しているのは、2019年9月に子会社化したアクシーの業績寄与に由るものです。利益面では、フィリピンの主力のセブ工場がロックダウンの影響を受け、急遽調達先を変更したことにより平時の6~7倍の航空運賃コストが発生したこと等を理由に、僅かながら赤字に転落しています。

進行期である2021年3月期の見通しについては、期初予想を再増額しており、売上高は26.2%増の160億円(期予:130億円)、営業利益は同67.2%増の13.0億円(期予:5.9億円)に其々修正しています。主力の建機用フィルタ事業については、特に中国において政府主導での積極的な公共事業投資が継続しており、新型肺炎前の水準を大幅に上回って推移しているような状況です。また、日本・米国・欧州についても、日系建機メーカーのシェア減少基調継続といった別の苦戦背景があるものの、各エリア共に復調傾向がみられます。また、ヘルスケア事業については、日本製の高分子系ナノファイバーの高性能マスクの引き合いが増加しており、既に6,000店超となっている販売店の上積みが更に期待出来ることから、下期の売上予想を更に10億円積み増しています。


当社は2019年3月期を最終年度とする直前中計で売上高94億円、営業利益率6.5%を見込んでいましたが、表記目標は大幅に超過達成しています。新型肺炎禍の現状では、中長期的な業績の目標値の設定はしていないものの、「MAVY’s」「PAC20」 といった計画名を付けてKPI改善のための取組を推進しています。具体的にはフィルタの多品種化やフィルタ周辺ドメインへの進出、また収益性の改善を企図したサプライチェーンの強化といった取り組みを進めており、翌3月にもYRP野比で約30億円を投じたR&Dセンター(合成高分子系ナノファイバー)が竣工させる予定となっています。これ以外にも、新素材開発と既存品量産化に30億円、MAを含む資本・業務提携に40億円を投じていく計画であり、向こう3年で延べ100億円を戦略投資へ回します。

 

MA案件としては、昨年9月末には粗塵及び中高性能フィルターの製造及び販売で国内有数のシェアを握るアクシー社(年商約27億円・営業利益約2億円)を22.5億円で買収し、エアフィルター分野への本格進出を果たしています。ただ実際のところ、こうしたR&Dセンターや、アクシー社の新規連結効果よりも、中国市場の成長の方がファクターとして効く見通しであり、建機ライン品+補給品の売上合計額を足許の3億円超から、向こう3年で83億円まで飛躍的に引き上げる目論見です。中国内の中国系メーカーに限った市場占有率でいえば、半年前の9%から足許では42%まで爆発的に伸長していているため、かなり意欲的ながらもある程度の成長蓋然性があると判断しています。


一方、財務の状況については、2017年末に野村證券を相手先とするMSワラントの発行により約91億円(希薄化11%)を調達したこともあり、自己資本比率は8割水準を確保し、極めて良好を維持しています。然しながら、昨年9月にはまたも野村相手に約116億円(左記は上限、希薄化13%)のMSワラントを“おかわり”しており、現状ほぼ無借金にもかかわらず、新規借入でなくわざわざエクイティで調達するといった不可解な点が残ります。また配当については、年6円配当を維持する方針であり、これは還元ポリシーであるDOE2.2%基準に則したものとみられますが、会社側はこのタイミングで増配を匂わすなどしており、この辺の資本政策については色々と腑に落ちないところがあります。

 

*参考記事① 2020-07-23 1,050円 NT 

【6240】ヤマシンフィルタ/公共事業旺盛な中国の回復早く、会社予想は保守的か。

 

*参考記事② 2020-01-29 764円 NT

【6240】ヤマシンフィルタ/中国建機メーカー向けが出遅れ、早急な資金活用策が望まれる。

 

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