【6240】ヤマシンフィルタ/公共事業旺盛な中国の回復早く、会社予想は保守的か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【6240】ヤマシンフィルタ(東証1部) NT

現在値 1,050円/100株 PER215.5 PBR4.02 3月配当優待 9月配当優待

建設機械の油圧回路に用いるフィルターで世界首位。産業機器フィルターも。
配当は3月末・9月末の2回・合計6円のため、配当利回りは0.57%となります。

 

ヤマシンフィルタは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末の単元株主に対して、500円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約1.52%となります。

業績は下記の通りとなっております。
■2017年3月期 売上高 100億円、営業利益 9.5億円 EPS 10.3円 

■2018年3月期 売上高 131億円、営業利益 19.1億円 EPS 19.7円 
■2019年3月期 売上高 138億円、営業利益 19.6億円 EPS 20.4円 

■2020年3月期 売上高 126億円、営業利益 7.7億円 EPS 8.8円 

■2021年3月期 売上高 130億円、営業利益 5.9億円 EPS 4.9円 ce

□2020年9月中 売上高 70.0億円、営業利益 4.3億円 EPS 3.6円 四e

2020年3月期の売上高は前期比8.2%減の126億円、営業利益は同60.4%減の7.7億円となり、期初予算並びに中間時点の減額修正予算をも大きく下回って着地しました。主力の建機用フィルタ事業の国内市場については、昨年秋口の台風影響により顧客である日系建機メーカーへの部品供給が停滞し、減産基調となったため、当社製品の販売も進まずシェアを大幅に落とす格好となりました。また、目下注力中の中国市場についても、上期に米中貿易摩擦長期化の影響を受けたほか、下期には新型肺炎影響により生産・物流が停滞し、書入れ時である春節需要を取り逃す格好となりました。また、フィリピンにある主力のセブ工場もロックダウンの影響を受け、佐賀工場や蘇州工場に急遽移管したため、この一過性費用も全社収益を押し下げています。


進行期である2021年3月期の予算については期初から開示しており、売上高は2.6%増の130億円、営業利益は同24.1%減の5.9億円を予想しています。主力の建機用フィルタ事業については、日系建機メーカーのシェアが減少基調にあることや、中国をはじめとするアジア市場での新型肺炎による生産・販売への影響を織り込んでいます。それでも国内・北米と異なり、中国については政府主導での積極的な公共事業投資が継続していることや、Tier4環境規制対応新機種開発の進展により、中国最大手の国営建機メーカーからの受注拡大が期待出来ることから、主要展開国では唯一増収を見込んでいます。この中国の復活(春節需要後ろ倒し)が想定より早いとみられることから、大幅減益を予想する会社計画は保守的であり、予算比では強含んで推移していくものと考えられます。


当社は2019年3月期を最終年度とする直前中計で売上高94億円、営業利益率6.5%を見込んでいましたが、表記目標は大幅に超過達成しています。現状では中長期的な新しい業績目標の数値設定はしていないものの、「PAC18」、「ING19」と称する定性的な取り組みを中心とした計画を進めており、フィルタの多品種化やフィルタ周辺ドメインへの進出、また収益性の改善を企図したサプライチェーンの強化といった取り組みを進めています。来年2月にはYRP野比で30億円を投じたR&Dセンター(合成高分子系ナノファイバー)を竣工予定であるほか、新素材開発と既存品量産化に30億円、MAを含む資本・業務提携に40億円を投じていく計画であり、向こう3年で延べ100億円を戦略投資に回します。

 

なお、この100億円については2017年末に野村證券を相手先とするMSワラント発行により約91億円分(希薄化11%)の手当てを既に済ませている状況であり、次なる戦略投資の“矢”として、昨年9月末には粗塵及び中高性能フィルターの製造及び販売で国内有数のシェアを握るアクシー社(年商約27億円・営業利益約2億円)を22.5億円で買収し、エアフィルター分野への本格進出を果たしています。ただこれらR&Dセンターの貢献や、アクシー社の業績オンよりも、中国市場の市場成長の方が成長ファクターとして非常に大きく効く見通しであり、建機ライン品+補給品の売上合計額を足許の3億円超から、向こう3年で83億円まで飛躍的に引き上げる目論見です。

配当金については通期6円配当を維持する予定となっています。当社の財務状況は極めて良好であり、有利子負債7億円に対し、現金85億円を丸抱えしているような状況となっていますが、先のMSワラントにより自己資本を充実させたこともあり、必要以上の増配は期待薄とみられます。また今期の総還元性向についても、計算上は134%までハネ上がってしまうものの、DOE2.2%基準(実績2.3%)の方を採用して配当額を設定したものと考えられます。

 

*参考記事① 2020-01-29 764円 NT

【6240】ヤマシンフィルタ/中国建機メーカー向けが出遅れ、早急な資金活用策が望まれる。

 

*参考記事② 2016-09-20 102円*分割修正済 OP

中国建機需要復調で会社計画は過小か、ヤマシンフィルタ(6240)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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