【6240】ヤマシンフィルタ/中国建機メーカー向けが出遅れ、早急な資金活用策が望まれる。 | なちゅの市川綜合研究所

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【6240】ヤマシンフィルタ(東証1部) NT

現在値 764円/100株 PER66.0 PBR2.94 3月配当優待 9月配当優待

建設機械の油圧回路に用いるフィルターで世界首位。産業機器フィルターも。
配当は3月末・9月末の2回・合計6円のため、配当利回りは0.79%となります。

 

ヤマシンフィルタは株主優待制度を実施しており、3月末・9月末の単元株主に対して、500円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.09%となります。

業績は下記の通りとなっております。
■2016年3月期 売上高 94.5億円、営業利益 4.0億円 EPS 3.0円 
■2017年3月期 売上高 100億円、営業利益 9.5億円 EPS 10.3円 

■2018年3月期 売上高 131億円、営業利益 19.1億円 EPS 19.7円 
■2019年3月期 売上高 138億円、営業利益 19.6億円 EPS 20.4円 

■2020年3月期 売上高 134億円、営業利益 12.5億円 EPS 11.5円 ce修正

□2019年9月中 売上高 58.1億円、営業利益 3.8億円 EPS 2.7円(11/6)

2019年9月期の売上高は前年同期比18.5%減の58.1億円、営業利益は同64.2%減の3.8億円となり、期初予算との比較は無いものの大幅な減収減益となりました。主力の建機用フィルタ事業において、国内は公共事業や設備投資が底堅く推移したため前年並みを確保したほか、北米及び欧州についても堅調に推移しました。また、中国についても米中貿易摩擦長期化が懸念されるものの、政府主導による公共事業投資により建機需要が下支えされている状況でしたが、価格競争力に勝る中華系建機メーカーの市場シェアが顕著に拡大しており、日系建機メーカーを販売先とする当社はこのあおりを受ける格好で市場シェアを大きく落としました。また、インドネシア・タイ・フィリピンといったアジア諸国も国政選挙による公共投資抑制により、中国同様に低迷しました。

なお2020年3月期の通期の予算については、本中間時点で減額しており、売上高は前期比3.0%減の134億円(従予:130億円)、営業利益は同36.3%減の12.5億円(従予:16.5億円)に其々修正しています。上期同様に中国における日系建機メーカーのシェア減少基調は大きく変わらないとみられる一方、第4次環境規制対応新機種開発の進展により中国国営の最大手建機メーカーは当社の純正のクリーンフィルターを採用する(ことがある程度)見込まれます。然しながら、日系メーカーからこうした中華系メーカーへの営業シフトにはおよそ半年程のタイムラグが生じるため、今期はキャッチアップすることが難しく、期初予算に届かない見通しです。なお、利益の減額修正にも拘わらず、トップラインが伸びるのは9月末に買収したアクシー(後述)の半期寄与が効いた格好です。


当社は前2019年3月期を最終年度とする3年中計で売上高94億円、営業利益率6.5%(計画直前実績4.0億円、営業利益CAGR15%)を見込んでいましたが、表記の業績目標については大幅に超過して達成しています。現状では中長期的な新しい業績目標の数値設定はしていないものの、「PAC18」、「ING19」と称する定性的な取り組みを中心とした計画を進めており、フィルタの多品種化やフィルタ周辺ドメインへの進出、また収益性の改善を企図したサプライチェーンの強化といった取り組みを進めています。

 

2017年末には野村證券を相手先に101億円分のMSワラントを発行しており、11%の希薄化をともなう増資ではあったものの、実額では約91億円の資金調達を済ませています。当該資金の活用により、昨年2月にはYRP野比で1万坪強の敷地を取得し、総額30億円の巨費を投じて合成高分子系ナノファイバーの事業化に向けたR&Dセンターを着工しています。またフィルタ多品種化の取り組みとして、本年9月末には粗塵及び中高性能フィルターの製造及び販売で国内有数のシェアを握るアクシー(年商約27億円・営業利益約2億円)を22.5億円で買収しており、エアフィルター分野への本格進出を果たしており、資金調達をテコに非常に積極的なMAや設備投資による業容拡大がみられます。ただ既述のとおり、肝心の本業部分が凹んでいることから、当面はそちらの底入れを確認するのが先になろうかと思います。

配当金については通期6円配当を維持する予定となっています。当社は財務状況も極めて良好であり、有利子負債3億円に対して、97億円もの現金を丸抱えしているような状況です。ただ既述のとおり、MSワラントを発行して多額の資金調達をした経緯もあるため、当面これが株主還元に回ってくることは期待出来ませんが、R&Dセンターに30億円投じる以外は設備投資とMAに60~70億円充当する使途目論見となっているため、早急に具体的かつ有効な資金活用策が望まれるところであります。

 

*参考記事① 2016-09-20 102円*分割修正済 OP

中国建機需要復調で会社計画は過小か、ヤマシンフィルタ(6240)。

*参考記事② 2016-02-10 82円*分割修正済 OP
中国大ブレーキで二度目の減額、ヤマシンフィルタ(6240)。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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