7,400百万坪の井川社有林は「打ち出の小槌」か、特種東海製紙(3708)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3708】特種東海製紙 (東証1部) ---

 

現在値 4,150円/100株 PER26.7  PBR0.91  3月配当優待 9月配当優待

 

特種製紙と東海パルプが統合、特殊紙に強み・独立系。日本製紙と提携。

配当は3月9月の年2回・50円配当のため、配当利回りは1.21%となります。

 

特種東海製紙は株主優待制度を導入しており、3月末に100株以上を保有

する株主に対して、3,000円分の自社製品を進呈しておりますので、配当

優待利回りは1.92%となります(別途9月末株主にカレンダー進呈あり)。

 

業績を確認していきます。

■2014年3月期 売上高 781億円、営業利益 31.8億円、EPS 149円 

■2015年3月期 売上高 788億円、営業利益 24.7億円、EPS 13.9円 

■2016年3月期 売上高 784億円、営業利益 37.5億円、EPS 168円
■2017年3月期 売上高 777億円、営業利益 47.0億円、EPS 258円 

■2018年3月期 売上高 784億円、営業利益 33.0億円、EPS 157円 ce

□2017年9月中 売上高 380億円、営業利益 15.0億円、EPS 67.1円 ce 

 

2017年3月期通期の売上高は前期比0.9%減の777億円、営業利益は同25

.5%増の47.0億円となり、期初計画を上回って着地しました。段ボール原紙

等の産業資材、特殊素材ともに需要の減少により減収となったものの、

日本製紙との協業による新体制の構築、ならびに島田工場のバイオマス

ボイラーの新規稼働効果による原価低減により大幅増益を確保しました。

なお大王製紙にOEM供給する生活商品については増収増益となりました。

 

進行期である2018年3月期の売上高は0.9%増の784億円、営業利益は同

29.9%減の33.0億円と反落を予想しています。構造的な電子媒体へのシフ

トにより依然として厳しい需要状況が続く見通しであり、費用の要因となる

為替前提についても110~115$/円、原油前提も57~60$/B、で見込ん

でいます。これにくわえ、高機能な合成繊維シートの開発や紙幣(?)や五輪

を控えて偽造防止用のチケット(透かし技術)等の開発のための研究費用

が向こう数期の間は定常的に発生するため、利益を押し下げます。

 

また今期は新3年中計の初年度となっており、最終年度の2020年3月期に

売上高850億円、営業利益55億円を計画しています。前の3年中計が島田

工場に電力を供給する赤松水力発電所が更新工事を終え、FIT適用によ

る売電を開始したことで、これだけで実に経常利益を13億円も押し上げた

ため無事に超過達成となっていますが、今回の3年中計では既述の高機

能シートの開発や、海外展開などに300億円を突っ込む計画のため、やや

保守的な見立てをしているような印象を受けます。

 

そして今回の中計から経常利益ではなく、営業利益を目標とするよう変更

したと思しき理由が、静岡県の北部・日本標高3位の間ノ岳にかかる井川

社有林(7,400百万坪・山手線内面積の4倍)の地下を横断するリニア計画

です。本格的な寄与は来期からとみられるものの、事前の観測によれば、

上部用地利用の賃料等で、向こう10年は経常利益ベースで最低5~6億円

程度押し上げられるものと見られています。JR東海と交渉中の部分もある

ため、最低限のレベルでしか数字に見込んでいない印象であり、この分が

営業外で大きく変動するため、営業利益で計画したものと推察されます。

 

ただ足許の株価は既に製紙業のバリュエーションを超えて評価されており

このリニア効果は殆ど織り込まれているとみられますが、この材料以外に

も世界で7割のシェアを握るガラス合紙や、リチウムイオン電池のセパレー

タの開発成功など、かなりの業容拡大材料を内包しています。有利子負債

(330億円)もそれなりにありますが、110億円の現金と190億円の有価証券

でほぼネットしており、財務面での投資余力も潤沢ですので、リニアという

“打ち出の小槌”を原資に一段の成長余地が見えてきたような印象です。

 

 

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