【9414】日本BS放送/再放送割合増加で採算良化も、親会社の低関与姿勢が気掛かり。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9414】日本BS放送 (東証一部)  NT

現在値 1,074円/100株 PER18.3 PBR1.02 8月配当優待 2月優待

ビックカメラが親会社のBS放送会社。競馬中継など自社製作が5割。
配当金は8月末一括の20円配当のため、配当利回りは1.86%となります。

日本BS放送は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末に単元株を保有する株主に対して、1,000円分のビックカメラ商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは3.72%となります。なお1年以上保有を継続した場合には、8月末に1,000円分の商品券を追加進呈していますので、その場合の利回りは約4.65%となります。

業績を確認していきます。
■2017年8月期単 売上高 115億円、経常利益 22.3億円 EPS 85円 

■2018年8月期連 売上高 124億円、経常利益 24.2億円 EPS 93円

■2019年8月期連 売上高 126億円、経常利益 16.9億円 EPS 65円 

■2020年8月期連 売上高 113億円、経常利益 21.9億円 EPS 83円 

■2021年8月期連 売上高 114億円、経常利益 16.0億円 EPS 58円 ce

□2020年2月2Q連 売上高 55.0億円、経常利益 8.3億円 EPS 31円 ce

 

2020年8月期の売上高は前期比9.6%減の114億円、経常利益は同29.2%増の21.9億円で着地し、売上高こそ2桁近い減収となったものの、利益は中間時点の減額予算を大きく超過して、一転して3割近い増益で着地しました。新型肺炎影響や五輪延期による広告主の出稿マインドの低下にくわえ、前期失注の大型通販会社の受注復元が進ます、テレビ通販のネットシフトの影響を受けました。一方、新型肺炎で新規番組製作を軒並み見送り、再放送割合を増加させることで採算性が大幅に良化したほか、当社自体の広告宣伝費を削減したため、利益は高水準となりました。

 

進行期である2021年8月期の予算については、売上高は前期比0.1%減の114億円、経常利益は同27.1%減の16.0億円を予想しています。新型肺炎影響による広告主の出稿マインドの低下にくわえ、引き続きテレビ通販のネットシフトが進む見通しです。また、実績期で見送った番組制作も平常化するため費用増が見込まれるほか、放送設備の更新にともなう減価償却費の増が2億円ほど重しとなります。新型肺炎全般の業績影響については、期を通して受ける前提で予算組みをしており、平常化については翌2022年8月期上期という想定をしている模様です。なお、当社予算は通例トップラインを強めに見る一方で、利益については保守的に見積もる傾向があります。


当社は衛星メディア業界自体が成長していた2018年頃までは毎年年率2桁のトップライン成長を遂げ、中期目標である(単体)売上高150億円が射程に入る水準まで一度は到達したものの、業界自体が縮小に転じてからはジリ貧歩調となっています。会社側も放送事業単体に頼った成長には見切りをつけ、2018年に児童書出版の理論社と国土社の2社を買収し、グループ連結経営に移行した上で年5~6億円の売上高をカサ増ししていますが、それでも(連結)売上高は110億円を割り込むような勢いでマイナス成長しています。


設備投資に数十億円を要する4K/8K放送の導入については、目下の低調な業績からこのまま凍結される公算が高く、豊富な現預金の活用がポイントとなります。翌2022年8月期を最終年度とする現中計は、新型肺炎禍を理由に見直し予定とみられるものの、定性取組事項として「情報番組開発」、「アニメ強化」、「他社コラボ」、「新事業開発」、「特番強化」の5本の柱を重点施策に挙げています。従来より特に強みを持つアニメ分野については、既存番組の「Anison Days」や「アニゲー☆イレブン!」に加え、虹のコンキスタドールの冠番組を所属のキングレコードと共同制作するなど更なる番組拡充を進めるほか、キッズ向け放送枠も新設し、より一層の深耕を図ります。一方、親会社であるビックカメラとの協業は、同社の生放送通販番組を放映するなど限定的なものに留まっており、ジリ貧業績の当社に対して特にサポーティブな姿勢がないことは割引要素となります。

 

なお好財務は相変わらずであり、ほぼ無借金で100億円超の現預金を保有しているため、自己資本比率は異例の90%に迫る水準をキープしています。自己資本の積み上がりが早い一方で、配当金については年20円に過ぎず、これはビックカメラ側に特段の資金ニーズがないことに起因するとと考えられるため、増配志向は薄いと考えられます(その一方で親会社の売上に寄与すべく、同社の“商品券”という形で歪な還元を実施している)。

 

*参考記事① 2020-07-06  1,025円 OP

【9414】日本BS放送/自主製作見送りで採算急改善も、地力低下が気掛かり。

 

*参考記事② 2020-01-11 1,164円 OP

【9414】日本BS放送/BS市場シュリンクで、東京五輪も逆風。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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