【9414】日本BS放送/自主製作見送りで採算急改善も、地力低下が気掛かり。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9414】日本BS放送 (東証一部)  NT

現在値 1,025円/100株 PER17.8 PBR1.01 8月配当優待 2月優待

ビックカメラが親会社のBS放送会社。競馬中継など自社製作が5割。
配当金は8月末一括の20円配当のため、配当利回りは1.95%となります。

日本BS放送は株主優待制度を実施しており、2月末・8月末に単元株を保有する株主に対して、1,000円分のビックカメラ商品券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約3.90%となります。なお1年以上保有を継続した場合には、8月末に1,000円分の商品券を追加進呈していますので、その場合の利回りは約4.87%となります。

業績を確認していきます。
■2016年8月期単 売上高 102億円、経常利益 21.3億円 EPS 82円
■2017年8月期単 売上高 115億円、経常利益 22.3億円 EPS 85円 

■2018年8月期連 売上高 124億円、経常利益 24.2億円 EPS 93円

■2019年8月期連 売上高 126億円、経常利益 16.9億円 EPS 65円 

■2020年8月期連 売上高 114億円、経常利益 15.1億円 EPS 57円 ce修正

□2020年2月2Q連 売上高 56.9億円、経常利益 10.1億円 EPS 38円 
□2020年11月3Q連 売上高 85.2億円、経常利益 16.7億円 EPS 64円(7/3) 

2020年2月中間期の売上高は前年同期比6.3%減の56.9億円、経常利益は同6.6%増の10.1億円となり、昨対・対予算ともに減収増益となりました。売上高については、衛星メディア業界自体の拡大が縮小フェーズに転じた趨勢減にくわえ、主要顧客である通販会社等によるネット広告へのシフトによりタイム収入、スポット収入ともに計画を下回りました。一方利益面については、トップライン減少にともなう減益要素があったものの、新規製作番組の手控えや広告効率化によるコスト削減により、予算水準を確保しました。


なお2020年8月期の通期予算については、中間段階で修正しており、売上高は前期比9.5%減の115億円(従予:130億円)、経常利益は同11.1%減の15.1億円(従予:20.1億円)にそれぞれ減額しています。新型肺炎影響や五輪延期による広告主の出稿マインドの低下にくわえ、前期に失注してしまった大型通販会社の受注復元が進んでおらず、引き続きテレビ通販のネットシフトの影響を色濃く受ける見通しです。然しながら、去る7月3日に開示された3Q決算によれば、新型肺炎で新規番組製作を軒並み見送ったことで製作費が顕著に削減(再放送番組が増加)されており、採算性の大幅な改善が確認されます。3Q時点での経常利益は16.7億円と既に減額後の通期予算を超過しており、少なくとも利益面に関しては期初予算の奪回が視野に入る水準に持ち直しています。


当社は衛星メディア業界自体が成長していた2018年頃までは毎年年率2桁のトップライン成長を遂げており、中期目標である(単体)売上高150億円が射程に入る水準まで一度は到達したものの、業界全体のシュリンクには逆らえず、本目標の達成時期をズルズル後ろ倒しています。会社側もかような状況に危機感を抱いたのか、放送事業単体に頼った成長には見切りをつけ、足許では周辺事業のMAによる外部成長策を採っています。実際に2018年に児童書出版の理論社と国土社の2社を買収し、連結経営に移行した上で年5~6億円の売上高をカサ増ししています。


なお、投資論点のひとつである4K/8K放送の導入については、設備投資に数十億円を要することからこのまま凍結する公算が高いと思われます。そのため、プールしていた豊富な現預金の活用がポイントとなりますが、現時点で走っている中計では「他社連携」「自主番組強化」「アニメ強化」「周辺事業強化」を重点施策に挙げています。既述のとおり、自主番組は新型肺炎下で制作が難しいため、得意のアニメ分野にくわえて“ディスカバリーチャンネル”や“アニマルプラネット”等のネームの強い海外番組の購入を増やして手っ取り早く視聴率を稼ぐ方針とみられますが、Netflix等に代表される動画配信サービスのコンテンツと競合する恐れがあります。目先はともかく、中長期的には自主番組を強化しない限り差別化とならず、地力低下によりジリ貧となるリスクを孕んでいるような状況です。

 

なお好財務は相変わらずであり、ほぼ無借金で100億円超の現預金を保有しているため、自己資本比率は異例の90%に迫る水準をキープしています。既に成長株のメッキは剥がれているため、株主還元の強化が期待されますが、当社は自社株買いをせず配当で還元するスタンスであるほか、親のビックカメラに特段の資金需要がなければ配当政策の大きな変更も見込みずらいため、今期配当も年20円の据置か、“牛歩増配”基調を維持した1円増配が関の山とみられます。

 

*参考記事① 2020-01-11 1,164円 OP

【9414】日本BS放送/BS市場シュリンクで、東京五輪も逆風。

 

*参考記事② 2019-06-11 1,067円 OP

業界自体の成長はストップ、今後の資本政策に注目・日本BS放送(9414)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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