【3478】森トラスト・ホテルリート投資法人/売上高連動歩合の“シャングリ・ラ”の低調が痛い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3478】森トラスト・ホテルリート投資法人(東証REIT) OP

現在値 113,900円/1株  PER--.-  P/NAV0.83  2月分配 8月分配

ホテル特化型、スポンサーは森トラストと森トラストホテル&リゾーツ。
予想分配金(実績)は年2回の合計3,522円配で、分配金利回リ(実績*2)は約3.09%です。

業績を確認していきます。

■2019年2月期_第6期 営業収益 23.2億円、経常利益 15.4億円 DPU 3,089円

■2019年8月期_第7期 営業収益 23.9億円、経常利益 16.1億円 DPU 3,219円

■2020年2月期_第8期 営業収益 26.3億円、経常利益 17.8億円 DPU 3,562円 

■2020年8月期_第9期 営業収益 17.7億円、経常利益 8.8億円 DPU 1,761円

■2021年2月期_第10期 営業収益(未定)億円、経常利益(未定)億円 DPU(未定)円 ce
 

2020年8月期_第9期については、比較可能な前年同期である2019年7月期_第7期との比較において、営業収益は628百万円減の17.7億円、経常利益は729百万円減の8.8億円となり、5月末に開示した着地の見通しよりは若干上振れたものの、対前年同期比では大幅な減収減益となりました。分配金についても、同1,458円減となる1,761円で着地しています。全物件で新型肺炎による影響を受けており、旗艦物件のシャングリ・ラ(感応度:RevPAR1,000円≒DPU18円)については4月までが賃料計算期間となっており、宿泊部門は休業しなかったもののRevPARは低調に推移したほか、料飲の営業自粛もあり大幅減収となりました。直営のコートヤード・マリオット(CY)2物件もシャングリ・ラ同様に主力顧客層である外国人の入国制限が響き、新大阪は最低賃料ヒットとなりました。なお、サンルート新宿については予定通りの固定賃料を収受しています。

 

進行中の2021年2月期_第10期の予算については、依然として新型肺炎の影響が不透明なことから期初より未定としています。本来的は旗艦物件であるシャングリ・ラは4ヵ月前、CY2物件は同3ヶ月前の宿泊実績をベースに歩合賃料を算出するため、実績+オンハンドで粗々の数字は見えている部分が多い筈であるものの、トップライン連動賃料であるシャングリ・ラの非開示部分が大きく算出出来ない模様です。シャングリ・ラ(Asia本体)が別途公表する資料によれば、4月に稼働率が底打ち、6月までは1桁台、9月までは宿泊の回復もかなり緩やかとのことですので、期末の「go to」寄与があっても低調な落着とみられます。CY東京・CY新大阪についてもインバウンドが多いため収益毀損が甚大であるものの、最低賃料が下支えとなります。このほか小田原の固都税費用化がフルで発生するといった要因もあり、最終的な分配金は第9期並みの1,600円~1,800円程度が想定されます。

 

当法人は昨年9月に初めての物件取得となるヒルトン小田原リゾート&スパを65億円、鑑定NOI6.2%で取得しています。当該物件はADR3~4万円の“アッパーアップスケール”ホテルであり、シャングリ・ラとCYの間くらいの価格帯のため、当法人のクライテリアとしては分散が効いた格好となるほか、隣地でヒルトン・グランドバケーションズ(HGV)が新たなタイムシェアリゾートの建設を予定しているため、将来的にそのHGV客による施設利用料を収受出来ることがアップサイド余地となります。ネックとなるのは築年数が20年超経過していることによる修繕費の増加や、大改装した大磯プリンスホテルとの競合激化であり、鑑定理論値のNOI6.2%が維持出来るか微妙とみられました。

 

然しながら、昨今の新型肺炎禍により「マイクロツーリズム」潮流が生まれたことや、「go to トラベル」による後押しもあり、東京圏の人口後背地にある小田原は急速に需要が回復していることから、振り返ってみれば良い取得という評価が出来そうです。8月時点のRevPARは前年同期比84%まで戻っているほか、9月の4連休は稼働率100%近傍という状況であり、10月の「go toトラベル」以降は高い部屋から決まっているという復調具合なので、翌第11期からホテル基準利益の95%という完全歩合賃料の恩恵を大きく受ける見通しです。当法人は歩合賃料なかりせば、2期通算の年あたり分配金下限を2,300円(1,150円/期)としていますが、高水準の歩合発生が期待出来る小田原が下支えするため、そのような水準感までは減配しない可能性が高そうです。

 

なお財務状況については、上限LTVを60%まで許容しているものの、ヒルトン小田原をレバレッジで取得したことにより、足許のLTVは49.1%を超える水準まで切り上がっています。そのため、40%台前半で並んでいるJHR(8985)や、いちごホテル(3463)、大江戸温泉(3472)といった他ホテルREITよりも断然レバレッジがかかっているため、現時点での追加取得は難しいとみられます。スポンサーの森トラスト側にはパイプライン物件が相当程度溜まっているものの、まずは新型肺炎の沈静化により株価が回復しない限り身動きが取れない状況と考えられます。

 

*参考記事① 2020-01-17 152,600円 NT

【3478】森トラスト・ホテルリート投資法人/ヒルトン小田原取得でついに5物件に。

 

*参考記事② 2019-06-25  138,900円 NT

手詰感強いが、AM会社統合で動きも。森トラスト・ホテルリート投資法人(3478)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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