【3003】 ヒューリック/引渡4Q期間に集中だが、増配開示で予算達成の蓋然性が高い。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3003】 ヒューリック (東証1部) BY

現在値 1,054円/100株 PER11.3 PBR1.56 6月配当 12月配当株主優待あり

旧富士銀行の銀行店舗ビル管理から出発。好物件所有、物件多角化。
配当金は6月末・12月末の合計35.0円配当のため、配当利回りは約3.32%となります。

ヒューリックは株主優待制度を導入しており、12月末に3単元超を保有する株主に対して、3,000円相当のグルメカタログを進呈していますので、配当と合計した配当優待利回りは、約4.26%となります(※3単元保有時)。また、3年以上の長期保有により優待進呈額が倍となりますので、その場合の利回りは約5.21%となります(※3単元保有時)。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 2,157億円、経常利益 514億円 EPS 53.0円 
■2017年12月期 売上高 2,896億円、経常利益 618億円 EPS 64.3円 

■2018年12月期 売上高 2,875億円、経常利益 725億円 EPS 75.1円

■2019年12月期 売上高 3,572億円、経常利益 846億円 EPS 88.9円 

■2020年12月期 売上高 3,200億円、経常利益 920億円 EPS 92.7円 ce

□2020年6月2Q 売上高 1,602億円、経常利益 452億円 EPS 41.2円
□2020年9月3Q 売上高 1,863億円、経常利益 501億円 EPS 42.9円(10/27)

 

2020年6月中間期については、売上高が前年同期比6.3%減の1,602億円、経常利益は同23.0%増の452億円となり、会社側予算との比較はないものの順調に進捗しました。傘下REITが3月に新株発行登録160億円分を済ませたことにより、当社は総額236億円分(両国ビル、浅草橋ビル、目白商業、築地ホテル)の物件売却を1Qに予定通り実行出来たことが大きく寄与しました。賃貸事業についても、住吉の日本HP本社ビルや銀座天國ビルの取得を済ませていますが、2Qでは一旦仕入れペースを鈍化させたものとみられます。新型肺炎の影響を受けたのは日本ビューホテルを中心とした直営ホテルと、賃貸ホテルの歩合賃料部分であり、合わせて▲30億円程度の下押し要素となったものの、当社についてはホテルと商業は賃貸事業の1割強しか構成比が無いので、不動産売却益で十分賄えたような格好となります。

 

なお2020年12月期の通期予算については、10月末の3Q時点で非開示だった売上高予想を前期比10.4%減の3,200億円として新たに示したほか、経常利益については期初予想据置となる同8.6%増の920億円を改めて据え置いています。上述とおり新株発行登録を済ませた傘下REITは結局そのスキームで資金調達をしなかったものの、この10月に新たに81億円(中野ビル、八王子ビル)の2棟を追加で売却しています。一方、賃貸事業における仕入れについては、10月に総額800億円規模(ティファニー銀座本店、南青山M-SQUAREなど)の取得を済ませており、4Qに集中する物件売却に備えて棚卸資産を積み上げています。3Qの開示で予算を据え置いたほか、同時に増配開示も実施しているため、会社予想は問題なく守られるものと考えていますが、高価格帯を除くホテルが依然として厳しい状況であるほか、商業施設のリテナントにも苦戦しているため、やや力押しで数字を仕上げるような格好となります。

 

当社は中計の相次ぐ前倒し達成により度々ローリングを実施しており、洗い替えたばかりの2020年12月期の業績目標である経常利益850億円(CAGR11%)を前期でほぼ前倒しで達成してしまったため、長計の方でターゲットとしていた2023年12月の目標額(経常利益850億円)の方も4年前倒しでほぼ達成となりました。そのため、今期からは再び数字を洗い替えた新長計・新中計を策定しており、10年後に経常利益1,800億円、3年後に同1,100億円を新たな業績目標額としています。


基本的には安定収益源である賃貸事業を伸ばす計画であり、賃貸事業と開発/売却利益を7:3の比率まで引き上げる目論見であるものの、当初3年ポートフォリオ入替のため50%程は売却益に依存する格好となります。当初中計3年における投資純額は4,500億円長計は10年で同1兆円)と高水準を計画しており、銀座・新宿東口・渋谷・青山・浅草といったプライムエリアでの積極的な取得と売却で数字を作ること柱に、①下駄履みずほ店舗ビル等の建替と容積消化、②7&iや日本郵政ら提携先との協業、③その他(シニア・ESG/太陽光・MAを挙げています。この他にも共働き世帯の増加による負担力増加をアテにした子供や教育関連施設の強化や、KPGの“ふふ”に代表される高級旅館等の観光分野への取組が挙げられます。気掛かりなのは傘下REITの投資口価格の伸び悩みであり、今回増資が思うように実行出来なかったことで取得余力が枯渇してしまったことから、翌2021年12月期については成長がやや鈍化することが想定されます。

 

財務面については、2015年のPO株価@1,274円を下回っているため、POが難しい状況が続いているものの、2018年に半エクイティ性を持つ劣後債と劣後ローンのハイブリッドファイナンスで1,500億円を調達したほか、本年7月にも同じスキームで2,000億円を調達しています。本中計・長計期間においては、現状2.0倍ほどのネットD/Eレシオを3.0倍まで許容することとしていますが、今次7月の調達である程度低減出来ているものとみられ、実際は3.0倍近傍までレバレッジを効かせることなく十分な取得が出来る財務水準にあるものと考えています。

 

なお、株主還元については、本中計期間から配当性向40%基準を目標設定しており、今期は期初時点では3円増配の34.5円(配当性向37.1%)を予想していましたが、3Q時点でこれを50銭増額し35.0円(同37.7%)としています。

 

*参考記事① 2020-05-13 1,039円 OP

【3003】 ヒューリック/10年長計は4年前倒しでフィニッシュも、更なるハイレバ経営を志向か。

 

*参考記事② 2019-04-05 1,054円 OP

年率2桁の利益成長続くが、中計目標は過信禁物・ヒューリック(3003)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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