【2501】サッポロホールディングス/外食向け多く雌伏続く、恵比寿三越の閉店も痛手。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2501】サッポロホールディングス(東証1部)  NT

現在値 1,904円/100株 PER--.- PBR0.91 12月配当 株主優待あり

ビール類国内シェア4位。海外は北米が柱、不動産事業が強い。外食・飲料も展開。
配当金は12月一括の年42円の配当のため、配当利回りは2.21%となります。

サッポロホールディングスは株主優待制度を導入しており、12月末現在の単元保有の株主に対して、1,000円相当のビールまたは食品・飲料詰め合わせを進呈しておりますので、配当金と合計した配当優待利回りは約2.73%となります。なお、3年以上長期保有した場合は優待品が倍額となりますので、その場合の同利回りは約3.25%となります。

業績を確認していきます。2018→2019年度は非継続事業分を減じて遡及修正しています(*)。
■2017年12月期 売上高 5,365億円、営業利益 128億円 EPS 92.3円 IFRS切替 

■2018年12月期 売上高 4,939億円、営業利益 115億円 EPS 109.4円*

■2019年12月期 売上高 4,981億円、営業利益 122億円 EPS 55.9円*(2/13) 

■2020年12月期 売上高 4,445億円、営業利益 ▲79億円 EPS▲83.4円

★2020年12月期 売上高 4,525億円、営業利益 ▲3.8億円 EPS▲8.1円 CONS.(8/6) 
□2020年6月2Q 売上高 2,000億円、営業利益▲93億円 EPS▲82.5円

□2020年9月3Q 売上高 3,153億円、営業利益▲20億円 EPS▲11.8円(11/6)

2020年6月中間期の売上高は前年同期比12.4%減の2,000億円、営業利益は同95億円の損益悪化となる▲93億円と前年の黒字確保から一転して大赤字となりました。国内酒類事業については、GOLD STARや麦とホップを中心とする発泡酒類(缶)が“巣ごもり”需要により前年比135%の水準に大きく伸長したほか、ビール(缶)についても黒ラベルが同105%、高単価品のエビスも一服したものの同102%と底堅く推移しました。一方、これまで好調だったRTDの99.99が息切れとなり同88%に留まったほか、特に業務用のビール(瓶・樽)が同56%と壊滅的な水準となり、直営外食事業であるサッポロライオンは同41%、カフェドクリエを展開するポッカクリエイトも同72%となりました。また、海外事業についても新型肺炎によるレストラン閉鎖の影響を受けて、卸を中心に大幅減となりました。


2020年12月期の通期予算については中間時点で減額しており、売上高は前期比9.6%減の4,445億円(従予:5,044億円)、営業利益は同赤転の▲79億円(従予:85億円)にそれぞれ修正しています。国内酒類(缶)については、引き続きGOLD STARや、麦とホップといった新ジャンル品が節約志向や酒税改定前の仮需も相俟って伸長する見通しであるほか、本来的にはビール比率の高い当社については、この酒税改正がどちらかというと今後も追い風になるものと考えられます。然しながら一方で同業他社に比べ、当社グループは外食部門(サッポロライオン)をはじめ外食向けの卸比率が高いため新型肺炎の影響を色濃く受けることから、この外食関連が大きく足を引っ張る形で、酒類トータルのみならず全社で大赤字圏に沈む公算です。なお、不動産事業については、恵比寿三越が2月閉店であるものの、年末までは大よそ稼働率100%水準が続くとみられます。

 

今期は当初、4年中計の最終年度という位置付けであり、業績の目標値として売上高6,400億円(CAGR4%)、営業利益340億円(CAGR14%)を掲げて、「酒類」「食品」「飲料」の3つ軸でのブランド育成と海外進出で成長していく目論見でした。しかしながら、中計の序盤で麦とホップやポッカ缶コーヒーといった当社収益の屋台骨を支える主力商品において、他社新ジャンル品(本麒麟、ザ・リッチ、金麦など)の台頭や、品質向上著しいコンビニコーヒーに大きくシェアを食われる格好となり、結局はビールに回帰し、黒ラベル再ブランディングによる若年層強化や高単価なエビスの拡販によるミックス良化で収益改善を目指しましたが、これらの穴を埋めるには至りませんでした。

 

そのため、本年2月に新5年中計としてロールし、最終年度である2024年12月期に事業利益ベースで実績期の約2倍となる300億円を計画しています。計画骨子としては、①ビールへの集中、②海外再編によるブランド一貫化戦略、③植物性素材の活用等となります。また同時に本体社員のリストラによる収益改善策を公表しており、7月締めの一次応募では51名の社員の退職応募が明らかとなっています。ただ①・②・③ともに即効性のある施策ではなく、リストラ効果も限定的とみられるほか、外食事業・卸売事業の見通しについては終わりの見えない新型肺炎禍を織り込んでいないため、表記目標額の300億円は既に画餅的水準になったと考えられます。

 

それでも不動産含み益1,700億円を税金考慮で7掛で評価した現状の修正P/NAV(実質PBR)は、0.5倍強と計算されるため、恵比寿三越退去により後継テナントが決まらない場合は評価減のリスクがあるものの、依然として当社株価バリュエーションの下支えとして機能しています。また、株主還元に関しては、これまで配当性向30%水準をメドとしていたものの、新中計より安定配当方針に切り替えており、今期も42円配当の継続を予定しています。会社側は財務指標としてD/Eレシオを重視しており、現状1.2倍と本来の目標感よりやや高めであるものの、現時点では不動産売却益等を駆使して42円配当を維持していく考えと思われます。

 

*参考記事① 2020-04-21 1,957円 OP

【2501】サッポロホールディングス/外食向け比率高く今期は大苦戦、無制限のリストラも。

 

*参考記事② 2019-10-26 2,760円 OP

黒ラベル好調も、豊富な不動産含み益の顕在化に期待・サッポロHD(2501)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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