【3003】 ヒューリック/10年長計は4年前倒しでフィニッシュも、更なるハイレバ経営を志向か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3003】 ヒューリック (東証1部) OP

現在値 1,039円/100株 PER11.2 PBR1.57 6月配当 12月配当株主優待あり

旧富士銀行の銀行店舗ビル管理から出発。好物件所有、物件多角化。
配当金は6月末・12月末の合計34.5円配当のため、配当利回りは約3.32%となります。

ヒューリックは株主優待制度を導入しており、12月末に3単元超を保有する株主に対して、3,000円相当のグルメカタログを進呈していますので、配当と合計した配当優待利回りは、約4.28%となります(※3単元保有時)。また、3年以上の長期保有により優待進呈額が倍となりますので、その場合の利回りは約5.24%となります(※3単元保有時)。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 2,157億円、経常利益 514億円 EPS 53.0円 
■2017年12月期 売上高 2,896億円、経常利益 618億円 EPS 64.3円 

■2018年12月期 売上高 2,875億円、経常利益 725億円 EPS 75.1円

■2019年12月期 売上高 3,572億円、経常利益 846億円 EPS 88.9円 

■2020年12月期 売上高 未定、経常利益 920億円 EPS 92.7円 ce

□2020年6月1Q 売上高 780億円、経常利益 198億円 EPS 19.7円(4/28)
□2020年6月2Q 売上高 1,840億円、経常利益 400億円 EPS 40.4円 四e

2019年12月期の売上高は前期比24.2%増の3,572億円、経常利益は同16.7%増の846億円となり、売上は予算開示が無いため比較は無いものの、利益は上振れて着地しました。主力の賃貸事業については、お台場のグランドニッコーの建物を追加取得をして一体所有としたほか、築浅の神宮前タワービルディングを約900億円で取得して順調に賃収を積み上げました。販売事業については、傘下のREITに銀座7丁目ビルの共有持分を追加売却したほか、浅草橋・恵比寿のビルや戸山・石神井公園のシニア住宅を売却しました。外部売却については、豊洲プライムスクエア・心斎橋ビルを芙蓉総合に売却したほか、旧昭栄物件である大崎CNビルも売却しています。


進行期である2020年12月期の予算に関しては、売上予算については相変わらず会社側非開示としているものの、経常利益については8.6%増となる920億円を予想しています。傘下REITについては、この3月24日に新株発行登録160億円分を済ませており、当社から総額236億円分(両国ビル、浅草橋ビル、目白商業、築地ホテル)を既に取得しているため、当社における1Qでは売却益が積み上がっているような状況です。また賃貸事業についても、足許で住吉の日本HP本社ビルや銀座天國ビルの取得を済ませており、こちらも順調と言えそうです。懸念要素としては、ホテルや商業の賃貸事業の1割強しか構成比が無いので、昨今の新型肺炎の影響は限定的とみられるものの、キャップレート目線感の変化が販売に与えるインパクトが大きいと考えられます。そのため1Qでは順調な業績が確認され、期初予算を据え置いているものの、未達リスクを孕んでいるものと考えられます。

 

当社は中計の相次ぐ前倒し達成により度々ローリングを実施しており、洗い替えたばかりの2020年12月期の業績目標・経常利益850億円(CAGR11%)についても実績期でほぼ前倒し達成しているため、中計ではなく長計の方で当初ターゲットとしていた2023年12月の目標額(経常利益850億円)の方も4年前倒しでほぼ達成したことになりました。そして今次策定した新長計・新中計の業績目標額については、10年後に経常利益1,800億円、3年後に同1,100億円をそれぞれ予想しています。


従来中計同様に安定収益源である賃貸事業を中心に伸ばす計画にはなっており、賃貸事業と開発/売却利益を7:3の比率まで引き上げる目論見であるものの、当初3年についてはポートの入替を積極的に実施するという理由で、50%程は売却益に依存する格好となります。当初3年におけるネット新規投資額については4,500億円(※長計上は10年で1兆円)と高水準で計画しており、銀座・新宿東口・渋谷・青山・浅草といったかねてより当社が注力するプライムエリアでの積極取得を実施します。その他の中計施策としては、①下駄履みずほ店舗ビル等の建替と容積消化、②イトーヨーカ堂や日本郵政ら提携先との協業バリューアップ、③その他(シニア・観光・ESG/太陽光・MAを挙げています。

 

財務面については、2015年の直近PO価格@1,274円を下回った株価推移となっているため、公募増資が難しい状況が続いているものの、2018年に半エクイティ性を持つ劣後債と劣後ローンのハイブリッドファイナンスで1,500億円を調達したほか、2020年中にもまた同様の半エクイティ・スキームで再調達を実行することを明らかにしています。ただ本中計・長計期間においては、現状2.0倍ほどのネットD/Eレシオを3.0倍まで許容することとなっているため、財務良化どころ更にレバレッジをかけていく戦略となっている点には留意が必要です。

 

なお、株主還元については、本中計期間から配当性向40%基準を目標設定しており、今期はとなる3円増配の34.5円(配当性向37.1%)を予想しています。今後財務レバレッジが高くなっていくことを想定すると、やや株主還元に回し過ぎのような印象も受けます。

 

*参考記事① 2019-04-05 1,054円 OP

年率2桁の利益成長続くが、中計目標は過信禁物・ヒューリック(3003)。

 

*参考記事② 2018-11-06 997円 OP

今期は期初予算並の仕上がり、成長鈍化で還元強化も?ヒューリック(3003)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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