今期は期初予算並の仕上がり、成長鈍化で還元強化も?ヒューリック(3003)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3003】 ヒューリック (東証1部) ---

現在値 997円/100株 PER13.6 PBR1.68 6月配当 12月配当株主優待あり

旧富士銀行の銀行店舗ビル管理から出発。好物件所有、物件多角化。
配当金は年2回合計25.0円配当のため、配当利回りは約2.51%となります。

ヒューリックは株主優待制度を導入しており、12月末に3単元超を保有する株主に対して、

3,000円相当のグルメカタログを進呈していますので、配当と合計した配当優待利回りは、

約3.51%となります(3単元保有時)。また、3年以上の長期保有により優待進呈額が倍となり

ますので、その場合の利回りは約4.51%となります(3単元保有時)。

業績を確認していきます。
■2015年12月期 売上高 1,699億円、経常利益 425億円 EPS 52.8円
■2016年12月期 売上高 2,157億円、経常利益 514億円 EPS 53.0円 
■2017年12月期 売上高 2,896億円、経常利益 618億円 EPS 64.3円 

■2018年12月期 売上高 2,900億円、経常利益 710億円 EPS 72.8円 修正ce
■2018年12月期 売上高 2,727億円、経常利益 698億円 EPS 71.9円 QCe
□2018年6月2Q 売上高 1,145億円、経常利益 343億円 EPS 35.8円

□2018年9月3Q 売上高 1,701億円、経常利益 486億円 EPS 50.7円(10/30)

2018年6月期中間期の売上高は前年同期比18.1%増の1,145億円、経常利益は同11.2%増

の343億円となり、期初予算との比較はないものの、概ねコンセンサス水準での仕上がり

となりました。主力の賃貸事業では、昨年末に渋谷公園通り竣工したことによる通期稼働

効果や、本年2月竣工の板橋本町の銀行建替店舗の新規稼働が寄与しました。売買事業

については、傘下のREITに銀座7丁目や志村坂上を期中取得させたほか、昨年取得した

心斎橋プラザビル(4棟)持分を大丸松坂屋百貨店にシェアアウトしたことが寄与しました。


なお2018年12月期の通期予算については、売上予想については非開示としていたものの
去る10月30日開示の3Q時点で修正開示しており、売上高はほぼ前期並となる2,900億円、

経常利益は前期比14.7%増の710億円(従予:685億円)を予想しています。これは傘下REIT

が10月に200億円規模のPOを実施し、神谷町(の残り50%)や日本橋一丁目や番町を売却

出来ることがほぼ確実になったことによる修正とみられます。結局今期は概ね会社側期初

予算並みで収まる公算が強く、対コンセンサスを多少上回る程度の落着となる見通しです。


当社はそもそも今期を最終年度とする旧中計を1年前倒しで達成したため、進行中の新3

年中計へとローリングしており、翌々期の2020年12月期に経常利益850億円(CAGR11%)を

目指しています。安定収益源である賃貸事業を中心に伸ばす計画で、賃貸事業と開発/

売却利益を2:1の比率まで持っていく目論見であり、本中計期間で6,600億円の新規投資

(純増額)を行う計画です。ただ足許では、不動産市況高騰を背景に売却による利益顕在

化を優先している印象が強く、本年上期で銀座6丁目や葛西BEC、新宿武蔵野を取得した

ほか、3QでもWeWork新橋やヨーカ堂川崎店、北陸随一の高層ビルであるポルテ金沢を

取得したものの、売却ペースが早いため、ネット投資残高の積上がりが遅行しています。

足許でも開発/売買への依存度は根強く、不動産市況の影響を受けやすいため、賃貸事

業へのシフトが不十分なようであれば、本中計の達成可否は“市況次第”となりそうです。

 

一方、財務面については、2015年4月のPOで800億円(@1,274円)を調達しているものの、

今年になって劣後債と劣後ローンのハイブリッドファイナンスで1,500億円をデットで調達

しているため、自己資本比率は更に低下し26.0%になっています(会社側は32.0%と主張)。

平均調達金利も0.57→0.65%へとついに上昇に転じてきているため、財務面へのストレス

が意識される状況であり、無論、物件売却が進んで仕入が鈍化すれば良化する話では

あるものの、現株価水準での追加POが難しい以上、財務面は要注視と言えそうです。


なお株主還元については、今期からの中計期間から配当性向1/3(33%)の基準を設定し、

期初は前期比2円50銭増配の23.5円配当を予想していましたが、今回の業績予想修正

のタイミングで、同4円増配の年25.0円へと修正しています。足許のような業績モメンタム

が継続されるなら、財務維持のためにここまで還元する必要はないのですが、会社側が

実は“潮目”を感じていて、成長よりも株主還元策に目線をズラそうとしている気もします。

 

*参考記事① 2018-03-25 1,119円 ---

新3年中計でも年率11%成長を志向、超イケイケ経営続く・ヒューリック(3003)。

*参考記事② 2017-03-20  1,053円 ---

7期連続の経常益2割成長を実現、ヒューリック(3003)。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

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