【6458】新晃工業/工事見合わせで今期引渡し低調も、好財務で安定還元継続へ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【6458】新晃工業(東証1部) OP

現在値 1,390円/100株 PER9.72 PBR0.81 3月配当優待 9月配当

セントラル空調機器シェア4割。業務用空調機の中堅。中国やタイ進出。
配当は3月末・9月末の年2回合計45円のため、配当利回は3.24%となります。

 

新晃工業は株主優待を導入しており、3月末に単元株を保有する株主に対して、3,000円分のカタログギフトを進呈していますので、配当優待利回りは5.39%となります(※1年以上継続保有の場合。なお、保有1年未満の場合は1,000円分の図書カードとなるため注意)

業績を確認していきます。

■2017年3月期 売上高 385億円、営業利益 55.0億円 EPS 150.1円 

■2018年3月期 売上高 404億円、営業利益 54.8億円 EPS 149.1円 

■2019年3月期 売上高 409億円、営業利益 53.7億円 EPS 159.5円 

■2020年3月期 売上高 442億円、営業利益 90.0億円 EPS 230.0円 

■2021年3月期 売上高 383億円、営業利益 49.5億円 EPS 143.3円 ce
□2020年6月1Q 売上高 72.1億円、営業利益 6.6億円 EPS 29.9円(8/6)

□2020年9月2Q 売上高 159億円、営業利益 16.0億円 EPS 58.1円 ce

2020年3月期の売上高は前期比8.0%増の442億円、営業利益は同64.9%増の90.0億円となり、対前期・対予算で大幅な増益を確保しました。国内向けは期初時点での受注残高が前年より26%も多い120億円弱を確保し、事実上フル操業状態に突入していたほか、首都圏を中心とした大型再開発案件の増加といった事業環境に恵まれ、好採算案件を中心とした選別受注が進んだことにより、当該セグは5.7%の増収・45.0%の増益を果たし全社利益のほぼ全てを稼ぎ出しました。
一方、海外向けについては、中国において米中貿易摩擦の長期化により不透明な事業環境が継続しているため、こちらも採算重視で選別受注を進めたものの、競合との価格競争激化により損益は均衡圏止まり(前期は赤字のため良化)となりました。

 

進行期である2021年3月期の通期予算については、期初時点では未定としていたものの、1Q時点で開示しており、売上高が13.5%減の383億円、営業利益は同45.1%減の49.5億円を見込んでいます。国内向けの期初時点における受注残高は、1年前と比べて27.5%減の87.3億円に減少しており、五輪開催のため持ち越しとなっていた案件や、高層ビルの建替時期到来による需要が想定されるものの、新型肺炎による建設計画の見直し(延期・中止)により、絶好調だった実績期から一転して一服となる見通しです。なお、海外については期初の受注残高が同6割減となっており、国内より苦戦することが予想されます。なお、去る8月7日に既に1Qが開示されていますが、売上高が前年同期比22.7%減、営業利益は同54.6%減と苦戦傾向が見て取れますが、これには緊急事態宣言による現場閉所による案件(要は単なる引渡し遅延)も含まれているため、見た目程深刻ではないものと考えられます。

 

当社は中長期の経営計画を開示していないものの、MAや資本業務提携による業容拡大策を採っており、2013年にビル管理会社の千代田ビル管財(売上高50億円・営業利益4億円)に77億円もの巨費を投じて買収しています。本買収はのれん付きでしたが、年1.5億円ほど償却していっているため、2023年度を目処にこの償却分が営業益の改善要素となります。既に本業の空調設備製造の生産能力はフル操業水準に達していることから、この7月に神奈川工場・岡山工場に次ぐ第3の拠点として秦野(神奈川工場の隣接地)に15千坪の土地を購入し、AI・IoTを活かした新世代型工場を新設し、生産能力の向上と高機能化を進める方針です。

 

2017年に資本業務提携し、当社2位株主(4.7%)となった空調最大手のダイキン工業とは一部の製品開発で協業しているものの、同社が非常に強い中国事業におけるサポートは受けられていない印象であり、当社の上海子会社(持分50%)も現地での競争激化で赤字~均衡圏止まりで伸び悩みの状況が続いています。今後の中国事業は高機能商品に特化していく模様ですが、いかんせん好調の続いていた国内がフル操業で頭打ちのため、目先の成長活路がこの中国しかないため、この辺の進展に期待したいところではあります。

 

株主還元については、配当に断続的に増配【18→23→33→36→36→40→43→58円】、してきましたが、さすがに今期については配当性向25~30%を適用して減配予想となっており、45円を予想しています。そもそも当社はネットキャッシュ150億円にくわえ、80億円もの有価証券(高砂熱学工業や三機工業など)を抱える超優良財務を誇っているため依然として余裕残しであり、実際に新型肺炎禍の今期も期初から3.5億円(1%弱)の自社株買いを実施しているため、業績によらずこの辺の還元姿勢には大きな変化は無いものと考えています。

 

*参考記事① 2019-09-02  1,711円 OP

受注高水準で気配絶好も、株主還元もの足りぬ・新晃工業(6458)

 

*参考記事② 2018-08-25   1,650円 OP

受注残自体は豊富で、期末までに巻き返し期待・新晃工業(6458)

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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