【4819】デジタルガレージ(東証一部) NT
現在値 3,505円/100株 PER--.- PBR3.11 3月配当 株主優待なし
決済事業、広告、ベンチャー投資など多角展開。持分にカカクコム。
配当金(実績)は3月一括配当の38円配当で、配当利回りは約1.08%となります。デジタルガレージは株主優待制度を実施しておりません。
業績を確認していきます。2019年3月期よりIFRSに変更しています。
■2018年3月期 収益 255億円、税前利益 83.7億円 EPS 135.9円
■2019年3月期 収益 356億円、税前利益 134億円 EPS 210.2円
■2020年3月期 収益 369億円、税前利益 100億円 EPS 161.3円
■2021年3月期 収益(未定)億円、税前利益(未定)億円 EPS(未定)円 ce
◆2021年3月期 収益 359億円、税前利益 58.6億円 EPS 71.7円 cos.
□2020年6月1Q 収益 69.4億円、税前利益 4.0億円 EPS 4.8円(8/14)
□2020年9月2Q 収益 180億円、税前利益 46.0億円 EPS 56.5円 四e
2020年3期の収益は前期比3.5%増の369億円、税前利益は同25.4減の100億円となり、開示されている予算との比較は無いものの増収減益となり、市場予想水準を下回って着地しました。マーケティング(MT)事業において、フィナンシャル(FT)事業との協業による決済アプリ開発やモール事業が好調に推移したほか、持分法のサイバー・バズ(7069)のインフルエンサー分野も伸長しました。また、フィナンシャル(FT)についても、決済取扱高が前期比24%増の2.58兆円、取扱件数も同24%増の4.8億件となり、これら主要2事業は2割を超えるセグメント増益を果たしました。一方、インキュベーション(IT)事業における保有株式の公正価値評価益はアジア圏投資先を中心に伸長したものの、円高と前期計上の大型案件剥落によりセグメント利益は前期の半分となりました。また、全社合計では渋谷パルコへの本社移転費用等が10億円超発生して利益を押し下げています。
進行期である2021年3月期の通期予算に関しては、例年通りの予算非開示となっているものの、コンセンサス予想では収益は2.8%減の359億円、税前利益は同41.4%減の58.6億円が観測されています。8月14日に1Qを開示しており、MT事業は各種パフォーマンスアドが堅調に推移したものの、新型肺炎の影響で不動産業向けが低調に推移したほか、FT事業もキャッシュレス化進展により決済取扱高は2割程成長したものの、システム増強や高額な旅行関連・インバウンドの決済が低迷したため、両セグとも減益となりました。IT事業については、グッドパッチ上場による評価益計上は2Qのため横ばい、LTI事業については傘下のカカクコムが新型肺炎の影響をモロに受け、一気に均衡圏にまで沈んでいます。そのため、通期ではMT事業・FT事業を中心にある程度持ち直しが期待出来るものの、持分20%とはいえカカクコムの取込利益減少が全社業績に痛打となる見通しであり、利益半減も避けられない状況とみています。
実績期(2020年3月期)は3年中計の最終年度となっており、3年間におけるMT・FT両事業の売上高CAGR15%、ROE20%、配当性向20%などの定量目標を設定していましたが、結果的にはMT・FT両事業ならしでの売上高CAGRは16%となったほか、ROEは15%、配当性向は24%となり、細かく見れば凹凸はあるものの概ね達成といえるような仕上がりとなりました。
そして今般、新型肺炎禍であるにも拘らず新5年中計を開示しており、業績目標としてMT事業・FT両事業のCAGRを20%、LTI事業を同15%とした上で、収益性指標としてROE20%を定めています。FT事業については、国策や新型肺炎により急速なキャッシュレス化の潮流に乗り、傘下の決済大手2社(ベリトランス、eコンテクスト)の“地すべり”的な成長が期待され、向こう5年で取扱高を2.6兆円→10兆円に引き上げる計画であるほか、MT事業もFT事業の加速度的な成長による恩恵を受けつつ、電通やCCI、ADKと合弁による傘下データサイエンス会社(BI.Garage)の活用による収益強化と顧客基盤拡大を図る方針です。
IT事業については、日本・アジア・米国でおおむね3分の1ずつとなる365億円の投資残高を確保しているものの、今後はシード、アーリーステージ、レーターステージを重点投資先とし、キャッシュレス等の次世代領域での残高積上げを図る方針です(中計上のハードルレートはROI2.5倍)。そして問題はLTI事業であり、“食べログ”を擁するカカクコムが従来のよりストック貢献する見通しが薄らいだものの、注力中のブロックチェーンやバイオヘルスの収益貢献は遠い先とみられるため、IT/LTI事業については株式市況好転で評価益が膨らむ(Exit出来る)かどうかに依存する格好となりそうです。
株主還元に関しては、従来中計では配当性向20%基準を定めていましたが、今次中計では「税引前事業CFに対する」配当性向を20%を新たに定めています。税引前のため一見すると還元強化にも見えますが、減価償却費こそ戻るものの、支払家賃相当額のリース権償却費や、評価益が勝手に顕在化されてしまう投資先の含み益、持分法利益(要はカカクコム等)の利益などは全て控除された上での20%なので、例えばIT事業における投資先のIPOといった現金化をともなう大型Exitでもない限り、実際の配当額がハネる可能性は期待薄と言えます。
*参考記事① 2020-03-03 3,520円 NT
【4819】デジタルガレージ/決済事業は順調成長も、投資案件のExit物足りぬ。
*参考記事② 2018-01-08 3,080円 NT
本業順調も投資先のIPOが待たれる、デジタルガレージ(4819)。
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