【8237】松屋/国内客への再シフトは道半ば、催事見送りなら集客厳しい。 | なちゅの市川綜合研究所

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【8237】松屋(東証1部)  NT


現在値 667円/100株 PER--.- PBR1.70 2月優待配当 8月配当

呉服店発祥の名門百貨店。銀座本店と浅草店の2店体制。独立路線。
配当基準日は2月末・8月末の年2回ですが、配当予想は未定となっています。

松屋は株主優待制度を実施しており、100株以上を保有する2月末・3月末株主に対して、利用上限のない10%割引買物カードを進呈しております。また、有料の催事が2人分まで無料になりますので、入場料1,000円の催事に2人で年2回行った場合の配当優待利回りを算出すると、およそ約5.99%となります。

業績を確認していきます。  
■2017年2月期 売上高 863億円、経常利益 12.6億円、EPS 14.6円 

■2018年2月期 売上高 905億円、経常利益 20.4億円、EPS 23.7円

■2019年2月期 売上高 925億円、経常利益 18.2億円、EPS 25.9円 

■2020年2月期 売上高 898億円、経常利益 9.9億円、EPS 16.1円(4/14)

■2021年2月期 売上高 (未定)億円、経常利益(未定)億円、EPS(未定)円 ce
□2020年8月中 売上高 380億円、経常利益▲3.0億円、EPS 5.7円 四e

2020年2月期の売上高は前期比2.9%減の898億円、経常利益は同45.5%減の9.9億円となり、2桁近い増益を予想していた期初予算から一転して、トップラインから反落となりました。昨年11月に松屋創業150周年企画でイベントを実施するなどしたものの、人民元安の影響による中国人インバウンドの減少や、秋口の台風19号、消費増税といった押し下げ要因が多かった、期末にかけて
新型肺炎によるマインド低下影響を受けました。その結果、銀座店の売上高は前期比▲2.5%、浅草店は同▲3.4%となり、2店舗通算では▲2.6%で着地しました。なお、主力の銀座店は期初11ヵ月累計売上高は同+0.3%で推移していたものの、最後の2020年2月単月が▲32.4%となり前年割れとなりました。

進行期である2021年2月期の予算については、新型肺炎による影響により合理的な算出が出来ないことから未定としています。月次の既存店売上高については、期初からの3ヶ月が経過していますが、3月は前年同期比約60%、4月は月初5日のみの営業となったため開示なし、5月については5月上中旬が休業、5月下旬に食品フロアのみ営業で同8%となっています。6月1日からは全店・全フロアで営業を再開しているものの、1Q(3月-5月)期間は色濃く新型肺炎影響を受けるほか、
フルで再開する2Q以降についても、元よりインバウンド構成比の高かった中国で第2波懸念が燻っているような状況であるため、他百貨店よりも戻りは特に鈍いとみられ、通期で赤字に転落する可能性が高いと考えられます。

 

今期は当社は創業150周年(2020年2月期)をまたぐ3年中計の中間年度の位置付けであり、最終年度である翌2022年2月期に売上高950億円、営業利益24億円を目指しています。具体的取組として、「デザインの松屋」をスローガンに掲げ、服飾助言販売による客単価底上げを推進するとともに、得意顧客であるハウスカード所有者と外商客の取り込みを強化し、高いインバウンド依存比率を徐々に引き下げていく方針です。そのため、従来中計よりも構造改革的な色彩が強く、数値目標自体も十分達成が視野に入る保守的なものでしたが、今次新型肺炎ショックで一気に暗転した格好となります。

 

特に今年は本邦入国許可に関する当局判断に左右されるとみられ、インバウンドの戻りがかなり鈍いと考えられるものの、本中計の注力取組事項である国内客再シフトへの動きはまだ道半ばであることから、中計に掲げる数値目標の達成は不可能とみられ、翌期に損益均衡圏が精々と考えられます。また、得意とする銀座本店での催事実施見送りによる集客(シャワー効果)の剥落も無視出来ないことから、国内客を繋ぎ止めるだけでも大変かと思われます。

 

なお株主還元については、実績期に創業150周年の記念配当の2円を加えた年8円を配当したものの、現状では未定となっています。当社は2017年に文房具販売の伊東屋から銀座店借地権建物の取得に伴って有利子負債を激増させたほか、本年5月にも主力3行に対して120億円のコミラインを引いているような状況であり、(借りずに済むかもしれないものの)、当面は財務温存を優先するとみられ、年2~4円までの大幅減配は避けられないもと考えています。

 

*参考記事① 2019-07-10  875円 NT

インバウンド依存体質脱却のため、構造改革期間へ移行・松屋(8237)。

 

*参考記事② 2018-06-15  1,662円 NT

業績V字回復も、まずは巨額の新規借入の返済優先か・松屋(8237)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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