【1928】積水ハウス/向こう3年は低成長見通しで、投資論点は株主還元へ移行か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1928】積水ハウス(東証1部) NT

現在値 2,159円/100株 PER10.7 PBR1.19 1月配当株主優待 7月配当

鉄骨主力の住宅首位。リフォームや保育園など非住宅事業も展開。海外育成中。
配当は1月末・7月末の年2回合計86円配当のため、配当利回りは約3.98%となります。

積水ハウスは株主優待制度を実施しており、1,000株以上を保有する1月の株主に対して、魚沼産コシヒカリ5㎏を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.12%となります。(※同利回りは1,000株保有時。5㎏=3,000円、と仮定した場合における想定の利回り)

業績を確認していきます。

■2017年1月期 売上高 20,269億円、営業利益 1,841億円 EPS 175円

■2018年1月期 売上高 21,850億円、営業利益 1,955億円 EPS 193円 

■2019年1月期 売上高 21,603億円、営業利益 1,892億円 EPS 186円

■2020年1月期 売上高 24,151億円、営業利益 2,052億円 EPS 205円 

■2021年1月期 売上高 25,850億円、営業利益 2,060億円 EPS 202円 ce
□2020年4月1Q 売上高 5,980億円、営業利益 508億円 EPS 44.8円(6/4) 

□2020年7月2Q 売上高 12,000億円、営業利益 1,100億円 EPS 106.1円 四e

 

2020年1月期については、売上高が前期比11.8%増の24,151億円、営業利益は同9.6%増の2,052億円となり期初予算をクリアして着地しました。主力の請負型における戸建事業についてはZEH等に代表される高付加価値住宅の販売推進や、政府による消費増税対策である住宅取得支援策もあって都市部で順調に推移し、賃貸事業が大型化による工期遅れでやや弱含んだものの、それを飲み込んでセグメント増益を果たしました。また、国際事業についても米国賃貸住宅6棟を中国系の投資家に売却したほか、再開発事業についても昨年6月に傘下REITが400億円級のPOを実行し、当社は赤坂ガーデンシティ(の一部)287億円や、本町南ガーデンシティ(の一部)を209億円で拠出しました。


進行期である2021年1月期の予算については、売上高が前期比7.0%増の25,850億円、営業利益は同0.4%増の2,060億円を予想しています。請負型の戸建・賃貸事業が消費増税の駆け込み反動受注残の消化が進み反動減を想定しているものの、昨年10月に中堅ゼネコンである鴻池組を連結子会社化したことにより、建築・土木事業において営業利益が通期で150億円程の上乗せされ、これが全社収益を大きく底上げします。なお去る6月4日に1Qを開示済みであり、売上高は前年同期比25.3%増/営業利益は同48.8%増と実態以上に数字が強含んでいますが、これは国際事業については米国での投資家分譲や、再開発事業における傘下REITへの物件拠出の計上があったことに由ります。新型肺炎影響の影響については、主力の請負型の戸建事業で6ヵ月分、賃貸事業で13ヶ月分の在庫を抱えていることから、一旦は期初予算を据え置いていますが、内外共に(特にアメリカ)市況不透明感は根強く、1Qの“貯金”はあれど減額リスクを孕んでいる状況です。


実績期は第4次中計(3ヵ年)の最終年度であり、売上高23,830億円(CAGR5%)・営業利益2,300億円(CAGR8%)を目標としていたものの、戸建や注文住宅の伸び悩みや、業容拡大中の海外販売の遅延等が響き、売上高こそ達成したものの利益は未達に終わりました。そして今期からは新たな第5次中計(3ヵ年)を公表しており、最終年度の2023年1月期に売上高27,000億円(CAGR4%)・営業利益2,200億円(CAGR2%)を目標数値に洗い替えています。新中計では従来型ビジネスである戸建住宅や賃貸住宅で微増を見込む一方、推定約8,000億円弱のエクスポージャーを有する海外事業を横ばい、傘下REITへの販売が主となる再開発事業の投資家分譲益を弱く見ており、中計全体としてはかなりの低成長を予想としています。

 

会社側の向こう3年間の見立てとしては上述であるものの、新型肺炎前に練られた(であろう)計画ということもあり、かなりの“入れ繰り”が発生するものとみております。例えば戸建や分譲住宅事業については増益前提であるものの、足許の受注動向を鑑みると新型肺炎影響もあり弱含みが顕著なことから、注力中のデジタル営業が余程うまくいかないと増益は難しいとみます。その一方、2018年5月に傘下のREIT2法人を合併させて、資産規模5,000億円超の総合型REITへの纏め上げを済ませており、資本市場が不透明なことを理由にREITへの売却をさほど見込んでいないとみられるものの、REIT指数がやや持ち直してきていることから、POによる物件拠出期待は根強い状況です。また2019年10月には中堅ゼネコンの鴻池組を連結子会社化しているものの、劇的な成長は期待出来ないため、比較的マシな賃貸住宅事業と国内以上に不透明な海外事業の出来・不出来が今次中計の成否を占うものと考えています。

 

なお、財務面については引き続き余裕のある状況であり、自己資本比率は48%(D/Eレシオは0.46 )水準をキープしています。会社側は中期的な配当性向40%を公約として掲げており、今期も記念配込で5円増の86円配当を予想しているほか、ROE基準として10%(実績11.5%)を設定しています。かような資本政策意向もあって、本決算発表時には150億円の自社株買い(1.02%)を公表しており、足許でも実際に買い進めていますが、少量であるため、中間決算時に追加枠の設定が望まれるところではあります。

 

*参考記事① 2019-12-19 2,390円 OP

懸案の海外は復調気配、追加の自社株買いに期待・積水ハウス(1928)。

 

*参考記事② 2019-06-07 1,758円 OP

傘下REITが無事にPOローンチ、鴻池組も連結化へ・積水ハウス(1928)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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